※2018年1月末にクローズしたcarview!個人というサービスにおいて、過去に寄稿した記事を再掲載いたします。原文ママなので掲載時とは多少異なる箇所もありますので、ご留意いただきますようお願い申し上げます。
ホンダから燃料電池車「クラリティ フューエルセル」が登場した。あらためて燃料電池車の意義について考えてみたい。
グローバルに見ると、ちょっと前までは電気モーターを駆動させて走る『電動車』というのは、メインストリームではない、あくまでも選択肢のひとつ的なイメージもあった。しかし、いまやエミッションが最優先事項となり、電動車なしでの商品計画というのはあり得ない譲許になっている。
その電動車には、いわゆるハイブリッドカーから、外部充電機能を持つプラグインハイブリッド、電気だけで走行するEV(電気自動車)、そしてFCVとも呼ばれる燃料電池車がある。
トヨタの燃料電池車「MIRAI」にしろ、ホンダの「クラリティ フューエルセル」にしろ、圧縮水素を充填し、それをFCスタック内で大気中の酸素と反応させて電気を得ることで走行するという基本は共通だ。その水素は現時点では70MPa、近い将来には82MPaへと高圧化される予定で、新規格水素ステーションでクラリティ フューエルセルを満充填すると800kmの航続可能距離になると公式発表されている。
とはいえ、水素を水の電気分解で生み出すとなると、段階が増えるため、当然ながら電気のまま利用するよりも効率よくなるはずはない。そのためにエネルギー効率からすると電動車の本命はEVであるという意見もある。現時点でFCVがEVに対するアドバンテージとして、EVの充電時間(急速でも30分で200km足らずの充電しかできない)に対して水素の充填は3分程度で終了するという部分が強調されるのは、効率面での不利な点をカバーする方便という指摘もあるようだ。
しかし、充電よりも”充填”が速いというのは、それこそが水素をエネルギーストレージとして使うメリットのひとつ。FCVが燃料という言葉を使っているので水素の位置づけをガソリンなどと同じように感じてしまうが、電気分解で得られる水素についていえば、燃料というよりは電気を貯めておくための手段のひとつと考えたほうが理解しやすいと思う。
とくに太陽光や風力といった再生可能エネルギーによる発電は、供給力の性格から需給バランスが取りづらい。単純化すると、太陽光発電で電気を起こせるのは昼間だが、照明を使いたい夜には発電できないといったことになる。そのため電気を貯めておく必要が生まれるが、バッテリーを使った蓄電は、コストや容量に問題を抱えている。結局は、比較的フレキシブルに発電できる火力発電所によって需給バランスを取ることになる。基本的に電気というのは生み出したと同時に使う二次エネルギーなのだ。
つまり、このまま再生可能エネルギーによる発電が拡大してくると、電気を貯めておく必要に迫られるのは必至。その際の貯蔵方法として水素を選ぶというのが水素社会におけるロードマップのひとつ。たとえば風力発電が生み出した電気をそのまま充電したEVと、保存方法として変換した水素を充填するFCVはエネルギーの出自としては、ほとんど同じとなる。さらに、この小さな輪の中でいえば、EVなどが使い切れなかった電力を水素として保存しておくことになり、EVとFCVは相互補完的なペアとして切っても切れない関係とも考えられるのだ。
次世代のクリーンビークルの本命は「EVだ」、「FCVだ」とそれぞれのステークホルダーは、かまびすしいかもしれないが…。
※2016年3月執筆
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精進します。
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Source: クルマのミライ