日産セレナに追加されたe-POWERは、1.2リッターエンジンで発電、最高出力100kW・最大トルク320Nmのモーターで前輪を駆動するシリーズハイブリッドのミニバンです。ハイブリッドとしてみると2モータータイプという分類もでき、ヴォクシー/ノア/エスクァイアのトヨタハイブリッドシステムやステップワゴンのスポーツハイブリッドi-MMDと同じ土俵で勝負するパワートレインといえます。
とはいえ、トヨタハイブリッドシステムが1.8リッターエンジン、ホンダのi-MMDが2.0リッターエンジンを搭載しているのと比べると、セレナの1.2リッターエンジンというのは、心もとないと感じるかもしれません。しかし、シリーズハイブリッドにおいてエンジンというのは発電機ですから、バッテリーの余裕があれば動力性能への影響は少ないのです。実際、セレナe-POWERの市街地走行では、まったく不満を感じないものでした。
こうしたパフォーマンスの満足度につながっているのは、走行用バッテリーの総電力量(1.8kWh)がウェルバランスだということが挙げられます。単純に考えるとバッテリーを積めば積むほど動力性能に余裕が生まれると思うかもしれませんが、バッテリーを積みすぎると車両は重くなりますし、バッテリーによってキャビンが狭くなるなどの悪影響が出てきます。
セレナe-POWERでは1列目シートの下に、走行用のリチウムイオンバッテリーを積むことで、マルチセンターシートこそ失ってしまいました(そのためe-POWERは7人乗りしか設定されていません)が、2列目から後ろへの影響は最小限にとどまっています。
そのポイントは起動時に使う補機用12Vバッテリーの位置にあります。
ノートe-POWERでは補機用の鉛バッテリーはラゲッジルームの床下に置かれていました。もし、セレナe-POWERでも同じ配置にしてしまうと、セレナの特徴である大きなラゲッジアンダースペースを失ってしまうことになります。ラゲッジボードを立てれば、ゴルフバッグが縦積みできるというユーティリティを犠牲にしてしまうのは、いくらe-POWERだからといって許されません。
そこでセレナe-POWERでは、鉛バッテリーをエンジンルームに置くことにトライ、見事に成功しました。フロントのエンジンフードを開けてみると、エンジンとインバーター・モーターがぎっしりと詰まっている中で、インバーターの前方に鉛バッテリーの置き場所を確保しているのが確認できます。
ちなみに、向かって左側には冷却水のリザーブタンクが2つ見えますが、ひとつはエンジン冷却用、もうひとつがインバーター冷却用となっています。とはいえ、ラジエターのレイアウトにはそれほど問題はなく、それよりも鉛バッテリーの配置に工夫を凝らしたといいます。まさに、セレナというミニバンにおいてe-POWERを実現するために、妥協できないポイントのひとつが鉛バッテリーの配置だったというわけです。
■日産 セレナe-POWER ハイウェイスターV 主要スペック
車両型式:DAA-HFC27
全長:4770mm
全幅:1740mm
全高:1865mm
ホイールベース:2860mm
車両重量:1760kg
乗車定員:7名
エンジン型式:HD12DE
エンジン形式:直列3気筒DOHC
総排気量:1198cc
最高出力:62kW(84PS)/6000rpm
最大トルク:103Nm(10.5kg-m)/3200-5200rpm
駆動モーター型式:EM57
駆動モーター形式:交流同期電動機
モーター最高出力:100kW(136PS)
モーター最大トルク:320Nm(32.6kg-m)
駆動バッテリー種類:リチウムイオン
駆動バッテリー総電力量:1.8kWh
最終減速比:7.388
燃料消費率:26.2km/L (JC08モード)
タイヤサイズ:195/65R15
メーカー希望小売価格(税込):3,404,160円
(写真:小林和久/門真 俊 文:山本晋也)
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