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Mercedes-AMG GT 4Door Coupe
REPORT/島下泰久(Yasuhisa SHIMASHITA)
最大のライバルは、ポルシェ・パナメーラ!
メルセデスAMG GTのイメージを継承しつつも、オールアルミ製ではなくスチール主体の、まったく別の設計とされたテールゲート付きの4ドアクーペボディに、「63S」、「63のV型8気筒4.0リッターツインターボと「53」、「43」の直列6気筒3.0リッターターボ+電動スーパーチャージャーISGという大きくふたつのエンジン、そしてAMGパフォーマンス4MATICと呼ばれる電子制御式AWDシステムを組み合わせるのが「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」である。
車名からはAMG GTの4ドア版を想像するが、成り立ちを見れば、実はまるで別物。2ドアのAMG GTが911キラーとして生み出されたように、この4ドアクーペがパナメーラを仮想的としているのは明白。しかしながらその走りは、より真摯にスポーツカーとしてのパフォーマンスを突き詰めたものだった。
それをハッキリと示していたのが、試乗の拠点となったCOTA(サーキット・オブ・ジ・アメリカ)のパドックに置かれていたホワイトボディである。眺めて、目が点になった。確かに基本はスチール製モノコックではあるのだが、その前後、床下にはこれでもかというほどのアルミ鋳造部品、各種ガゼットにクロスメンバー、さらにはCFRP製のリヤファイアウォールにラゲッジフロアなどが組み込まれて、徹底的に補強されていたからだ。特にリヤストラットを何本ものステーが支えている所などは、まさに見栄えより何より性能を追いかけたという感じが濃厚で、このボディは現場で鍛えられたに違いないと容易に確信させた。そして俄然、走りが楽しみになってきたのだ。
まず乗ったのは「GT 63S 4MATIC+」。シャシーには4輪エアサスペンション、電子制御式LSD、後輪操舵機構などを組み合わせ、21インチのタイヤ&ホイールを履くこのクルマで街中を走り出した時点で、予感は確信に変わった。この車体、剛性感が半端ないのだ。ハードにセットされた足まわりからの容赦ない突き上げを、事もなげに受け止め、短いストロークの中でサスペンションがしっかり仕事をしているのがリアルに感じ取れる乗り心地は、テールゲート付きのボディだとはにわかに想像し難いほどである。
しかもステアリングの操舵感が、CLSやEクラスとはまるで別物。同様に高いボディ剛性が作用しているのだろう。実にイキイキとした手応えが返ってくるから、日常使用の範疇でも走りの充足感はとても高い。とはいえ、もちろん本領を発揮するのは全開で攻め立てた時である。COTAでのサーキットランは、DTMレジェンドのベルント・シュナイダー氏の先導による走行だったのだが、これが本当に心の底から楽しめた。
ドライブモードをRACEに設定してコースへ。車重は2トン超えとは言え、最高出力は639ps、最大トルクは900Nmもあるから、当然速さは申し分ない。思わず頬が緩んだのは、その吹け上がりの爽快感。レスポンスを重視してボールベアリング式タービンを採用したおかげで、回転上昇のリニアリティが格段に高まっているのだ。トランスミッションはAMGスピードシフトMCT 9G。そのダイレクトな変速ぶりは、快感をさらに倍加してくれる。
けれど、それより何より素晴らしかったのは意外にも、そのコントロール性の高さだ。ターンインでのフロントの応答性はきわめて正確、ダイレクトで狙ったラインを外す気がしない。曲がりはじめてからの車体の動きもソリッド。ESPがスライドをかなりの範囲まで許容するようになるRACEモードでは、テールがリバースしだすのがやや早い気もしたが、決して腰砕けになってだらしなく出て行くわけではなく、しっかりタイヤを地面に押し付けながらじわりと、巨体を曲げるのを助けるかのように漸進的に滑っていく。
そこから態勢を整えてクルマを前に進ませるのも、もっと曲げていくのも右足の動きひとつで自在。鈴鹿のS字のように連続するコーナーをリズミカルに攻めることが求められるCOTAでこのクルマを走らせるのは、最高にスリリング、そしてエキサイティングだった。
この走りには、まず凄まじく高剛性なボディはもちろん、電子制御式LSD、そして特有の違和感をどんな場面でも一切感じさせることのなかった後輪操舵機構の貢献度が大きいのは間違いない。さらに、走行状況に応じてフロントグリル内のスリットの開閉、リヤスポイラーの角度を変化させるアクティブエアロシステムも効いているのだろう。最初から思い切り飛ばしてくれるシュナイダー氏を追いかけて走る時間は、まさに珠玉のものとなったのだ。
心地よい汗と若干の冷や汗をかいた後には、今度は「GT 53 4MATIC+」で一般道に出た。コイル式サスペンションのこちらは乗り心地がマイルドで、直列6気筒エンジンのフィーリングもスイートのひと言。普段使いであれば、文句無くこちらだろう。
AMG GTの名を裏切ることのなったピュアなスポーツカーとしての走りと快適性、実用性を両立させたこの4ドアクーペは、事前に想像していたよりもはるかに完成度の高い1台に仕上がっていた。率直に言って、パナメーラ ターボよりも格段にアツくさせる走りには、もう降参という感じである。
それでも実のところステアリングを握る前には、これはあまり期待できそうにないなと思っていただけに、インパクトは十分にあった。気になる価格はGT 63S 4MATIC+で、まさにパナメーラ ターボを少々上回る辺り。しかしながら、それも納得させられるだけのものは確かにある。
日本導入は2019年春頃の予定。なりふり構わないAMGの構成で、このセグメントの戦い、いよいよ激化してきそうだ。
【SPECIFICATIONS】
メルセデスAMG GT 63 S 4MATIC+ 4ドア クーペ
ボディサイズ:全長5054×全幅1871×全高1447mm
ホイールベース:2951mm
トレッド:前1669 後1664mm
車両重量:2045㎏
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
ボア×ストローク:83×92mm
圧縮比:8.6
最高出力:470kW(639hp)/5500~6500rpm
最大トルク:900Nm/2500~4500rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前390 後360mm
タイヤサイズ(リム幅):前265/40R20(9.5J) 後295/35R20(11J)
最高速度:315km/h
0→100km/h加速:3.2秒
燃料消費率(EU複合):11.3リットル/100km
CO2排出量(EU):257g/km
メルセデスAMG GT 53 4MATIC+ 4ドア クーペ
ボディサイズ:全長5054×全幅1871×全高1455mm
ホイールベース:2951mm
トレッド:前1673 後1666mm
車両重量:1970㎏
エンジン:直列6気筒DOHCターボ+電動スーパーチャージャー
総排気量:2999cc
ボア×ストローク:83×92.4mm
圧縮比:10.5
最高出力:320kW(435hp)/6100rpm
最大トルク:520Nm/1800~5800rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前4リンク 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
ディスク径:前360 後360mm
タイヤサイズ(リム幅):前255/45R19(9.5J) 後285/40R19(11J)
最高速度:285km/h
0→100km/h加速:4.5秒
燃料消費率(EU複合):9.4~9.1リットル/100km
CO2排出量(EU):215~209g/km
【関連リンク】
問い合わせ/メルセデス・コール 0120-190-610
http://mercedes-amg.jp
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Source: clicccar.comクリッカー