今年9月の全米オープンテニスの女子シングルスで優勝した大坂なおみ選手が獲得した賞金は4億2000万円(!)。モータースポーツの世界では、2017年にインディ500を制した佐藤琢磨が2億7000万円を手にしました。テニスとモータースポーツという、ふたつの伝統的な大会で「日本人初制覇」という偉業で歴史を塗り替えたことで大きなニュースとなりました。
歴史がある大会なので、賞金が多いのも当然ですよね! そして、世界の強豪を相手に熱戦を勝ち抜き、われわれに感動をくれたのだから!!
改めて金額を見ると、まさに「アメリカンドリーム」。やっぱりアメリカはスケールが大きい! ……ということで、本稿の主題である「マツダ・グローバルMX-5カップ」の魅力を、コストパフォーマンスという視点で検証したいと思います。
マツダ・グローバルMX-5カップは、アメリカと日本を舞台にマツダが展開している画期的なレースプログラム。米国ロングロードレーシング社が製作したMX-5(日本名=ロードスター)ベースの世界統一仕様のカップカーを用意し、世界共通のルールで争われる究極のワンメイクレースで、今シーズンもステップアップカテゴリーとしてアメリカと日本で激しいバトルが繰り広げられています。
では、マツダ・グローバルMX-5カップの人気の秘密はどこにあるでしょうか? これはレースに参加している人に直接聞くのが早い! ということで、米国シリーズに参戦するレーサー鹿島氏に、マツダ・グローバルMX-5カップの魅力を聞いてみました。
「MX-5カップカーは、徹底したイコールコンディションが図られており、エンジンやECUといった性能差につながる部分は封印され、ほぼすべてのパーツが指定されています。セッティングで差が付けられる部分も少なく、実際に手を加えられる部分はタイヤの空気圧を調整するくらいですね」
こうした徹底したマシン管理は、腕を競うステップアップカテゴリーとして必要不可欠なもので、別の見方をすれば余計な費用が発生することがない、ということにつながります。さらに、マツダによる各種サポートも充実しており、マツダ・グローバルMX-5カップは3シーズン目にして、レーシングドライバーを夢見る若手ドライバーからジェントルマンドライバーに注目されるカテゴリーへと成長したのです。
ここで、マツダ・グローバルMX-5カップカーを紹介します。
万が一の際にドライバーを守る強靱なロールケージ。
サイドウィンドウも省略されており、ネットで乗員を保護します。
日本では未導入の北米仕様2.0ℓ 直4エンジンを搭載するグローバルカップカーは、
左ハンドルと右シフトとなるのも特徴です。
タイヤはBFグッドリッチのワンメイクで、
スリックとウェットという二種類のタイヤを路面状況に応じてチョイスするのです。
今年、米国シリーズに参戦しているレーサー鹿島氏は、アメリカンモータースポーツの世界におけるマツダの功績を強く感じている、と言います。
「マツダは、インディ500を頂点としたオープンホイールの“Road to INDY”、耐久レースやスポーツカーレースを主体とした“Road to 24”という、ふたつのステップアッププログラムを展開してきました。こうした活動を続けてきた結果、インディカーに参戦しているドライバーの33人中25人は、マツダのステップアッププログラムを経験しています。インディカーに供給されているエンジンはシボレーとホンダだけなので、凄いプログラムだと思います。残念ながら、Road to INDYは今シーズンで終わってしまいますが、アメリカンモータースポーツの世界におけるマツダの功績は、とても大きなものです」
さらにマツダは、レーシングカーを操るドライバーを育てる、つまりアスリートを育てることが自動車メーカーの役割であり、それがBe a driver.の精神なのだと断言しています。
「北米マツダの毛籠勝弘社長兼CEOに昨年の世界一決定戦でお話を聞きました。自動車メーカーはエンジンを作り、クルマを作ることを生業としていますが、マツダがインディカーのドライバーをサポートするのは、Be a driver.という企業方針によるものということです」
さて、マツダ・グローバルMX-5カップに参戦するためには、自分でマシンを購入するオーソドックスな方法が一般的ですが、米国シリーズではほとんどの選手がチームのマシンを借りて走る、いわゆる「レンタルマシン」で参戦しています。
「アメリカでレース車両は約650万円で販売されていますが、レンタルはレース参戦に関するものがパッケージ化されており、価格もリーズナブルな設定となっています。レースウイークへ向けて練習2回、予選・決勝(45分)が2戦で100万円、エントリーフィー約13万円、タイヤ3セット40万円、ガソリン3〜4万円、渡航費と宿泊費約25万円をプラスすると一戦あたりの費用は180万円程度となります。単純計算で、6大会12レースに参戦すると1080万円となりますが、シリーズチャンピオンになると、奨学金で元が取れる計算になります(笑)」
そう、マツダ・グローバルMX-5カップのスカラシップ制度は、シリーズチャンピオンになると奨学金として20万ドル=約2200万円が進呈されるので、ステップアップを目指すドライバーにはとても大きな魅力です。
「2017年、米国シリーズで年間チャンピオンに輝いたパトリック・ギャラガーが、スカラシップを獲得しスポーツカーでデイトナ24時間に初参戦、5月にはミッドオハイオで初の表彰台へ上っています」
一方の日本シリーズは、現状ではアメリカのレンタルマシンのような車両が少ないため、複数のドライバーが参戦方法を模索しているようです。
新たにカップカーを購入して参戦する場合、車両本体価格は798万円(税別)。チームスタッフの遠征費、エントリーフィー、タイヤ代などがかかります。鈴鹿、富士、もてぎ、SUGO、岡山といった全国の国際コースを舞台に開催していますので、人数分の宿泊費も必要となります。ただし、これらは他メーカーのワンメイクレースには必ず必要な経費です。マツダ・グローバルMX-5カップは世界統一仕様で徹底したイコールコンディションが図られているため、マシンを速くするために部品を追加するなどのコストは必要ありません。これが参加者にとっては大きなメリットとなっています。
こうした支出に対し、賞金などはどうなっているのでしょうか。マツダ・グローバルMX-5カップ日本シリーズのシリーズ賞金総額は600万円が用意されています。一戦あたりの優勝賞金は50万円なので、全5戦を全勝すると250万円となり、チャンピオンに輝くと50万円が加算され、総額300万円を獲得できます。
さらに、日本シリーズでチャンピオンまたはランキング2位となれば、アメリカで開催される「世界一決定戦」に招待される“副賞”が贈られます。これは他のカテゴリーにはない、マツダ・グローバルMX-5カップだけの大きな魅力です。さらには、この世界一決定戦で優勝すると約550万円の賞金がドライバーに贈られ、名誉とともにアメリカの上位カテゴリーにステップアップできるチャンスが得られる可能性があるのです。
参加するドライバー全員がまったく同じ仕様、コンディションのレースカーで戦うことから、予選タイムやレース結果がドライバーの評価に直結するのは嬉しいところです。チームやドライバー、主催者であるマツダ関係者との関係が密接で、まるでファミリーのような信頼関係が構築されています。これはアメリカ、日本ともに同様です。
結論としては、マツダ・グローバルMX-5カップは、レベルの高い戦いによって腕を磨くことができるので、とてもコストパフォーマンスの高いカテゴリーといえます。今後、日本とアメリカ以外でのシリーズへと拡大していけば、さらに盛り上がっていくことでしょう。
ということで、まずは11月11日に米・フロリダのセブリング・インターナショナル・レースウェイで開催される「世界一決定戦」に注目しましょう! 日本からは、シリーズチャンピオンに輝いた堤優威選手とランキング2位の吉田綜一郎選手のふたりが挑戦します。米国シリーズから参戦するレーサー鹿島氏とともに、日本人3人の戦いに注目したいところです。
(クリッカー編集部)
【関連リンク】
マツダ・グローバルMX-5カップ ジャパン公式サイトhttps://mx-5cup.jp/
マツダ・グローバルMX-5カップUSA公式サイトhttps://www.mx-5cup.com/
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Source: clicccar.comクリッカー