日本を代表するレーシングコンストラクター/パーツメーカーとして知られるヨシムラ。このページではそんな同社が新たに開発した、3種のZ900RS用スリップオンマフラーの乗り味を紹介しよう。
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STDとは異なるヨシムラならではの音
Z900RSに限った話ではないものの、近年のバイクのノーマルマフラーは、かなりいい音がする。その背景には、騒音規制の変更や車両メーカーの意識の変化があるのだが、今回のテストを行うにあたって、ノーマルと大差ないフィーリングだったらどうしよう……と、僕は心配していた。でもそこはやっぱり、日本を代表するレーシングコンストラクター/パーツメーカーのヨシムラ。同社が手がけた3種のスリップオンマフラーは、ノーマルとは一線を画する魅力を備えていたのだ。
まずは3種に共通する特徴を述べると、ノーマルより乾いた音がすること、低中速域の重厚さが増している一方で、高回転域での伸びが軽やかになっていること、跳ね上がった取り付け角度によって、見た目がアグレッシブになっていることなどが挙げられる。もっとも音に関する印象は、ノーマルだって全然悪くなかったのだ。でもヨシムラ製を体感すると、ノーマルの音はやや湿り&こもり気味で、低中回転域と高回転域の差異は、そんなに大きくなかった気がしてくる。ちなみに、近接排気騒音と最高出力/パワーカーブは、ノーマルも3種のヨシムラ製もほとんど同じだから、僕が感じた印象は、音質の違いと考えるべきだろう。
構造を熟知しているからこそ独創的な音が生み出せる
続いてはヨシムラ製の特性の違いだが、まず新規開発されたBREVISは、3種の中で低中回転域の重厚さに最も磨きがかかっていて、しかも音質がまろやか。そんなBREVISと対照的なのがR-11で、こちらは回転上昇がフワッという表現を使いたくなるほど軽やかで、高回転域では並列4気筒ならではの咆哮が堪能できるし、心なしかエンブレの利き方が穏やかな印象を受ける。
もっとも前述したように、ヨシムラ製は3種共通の特徴を備えているのだが、BREVISはツーリング、R-11はスポーツライディングで、真価を発揮しそうなのだ。事実、BREVISを装着すると、景色を見ながら淡々と走りたくなるし、逆にR-11を装着すると、高回転域をキープして走りたい欲求が生まれて来る。そしてその論法で行くなら、R-77SはBREVISとR-11を結ぶ線の中間地点よりちょっとR-11寄り、スポーツ&ツーリングという印象だった。いや、この表現だと何だか中途半端と思われそうだけれど、守備範囲の広さで考えるなら、R-77Sは最も優れた資質を備えているのだ。
試乗後にヨシムラで聞いてみたところ、僕が感じたフィーリングの違いには、ボディ形状だけではなく、テールパイプやパンチングパイプの寸法、エンドピースの構造なども影響していると言う。逆に考えるなら、そういった排気系の構造を熟知しているからこそ、ヨシムラはノーマルマフラーとは一線を画する、魅力的な音が作り出せるのだろう。
【BREVIS】伝統を継承しながらボディを新規開発
オーソドックスな丸型サイレンサーとして、近年のヨシムラはLEPTOSシリーズ(ボディ全長は500 mm) を販売しているが、Z900RS用ではマシン全体のバランスを考慮した結果、ボディ全長を300mmに短縮したBREVISを新規開発。V字型のスプリングフックやエンド部のレーザーマーキング、各部のバフ仕上げは、LEPTOSに通じる要素だ。なおBREVISは、ラテン語で“短い”という意味。
【R-77S】アメリカで生まれ日本で磨かれた性能
異形断面のR-77シリーズは、もとはUSヨシムラで開発されたサイレンサーを、ヨシムラジャパンが日本国内の法規に合致させたR-77Jとしてリリース。さらに、ボディのコンパクト化を図ったR-77Sを開発した。Z900RS用は後者を採用している。なお他社製のZ900RS用マフラーと比較すると、3種のヨシムラ製はいずれも、テールパイプに趣向を凝らすことで、跳ね上がり角を強めに設定。
【R-11】レースで得た技術を惜しみなく投入
’12年から発売が始まったR-11は、近年のヨシムラがレースで培った技術を惜しみなく投入したモデルで、軽量化やマスの集中化、バンク角の確保、空力性能の向上など、スポーツライディングに配慮して設計されている。インナーパイプ径は他2機種と同じ50.8mmだが(ノーマルは45mm)、エンド部がフレア形状になっているため、高回転域で感じる並列4気筒らしい咆哮は、このモデルがNO.1 。
フルエキのレーシング手曲ストレートサイクロンも発売
レーシング手曲ストレートサイクロンは、Z1ストレートサイクロンのイメージを継承しながら公道用マフラーの開発を進める中、プロトタイプを2018年東京モーターサイクルショーで展示。その後テイスト・オブ・ツクバのデモラン用にレーシングサイクロンを開発。これに対する大きな反響と要望を受け、まずはレーシングマフラーが商品化された。エキゾーストパイプと集合部の素材には、手曲げの曲線とネオレトロな雰囲気を持たせる為に鉄を使用。熟練した職人が生み出す美しいラインと独特のボリューム感が特長だ。テールパイプ・インナー部品の素材にはステンレスを使用し、耐久性も考慮している。
文:中村友彦
写真:真弓悟史
取材協力:ヨシムラジャパン
Source: WEBヤングマシン