2018年7月16日、ツインリンクもてぎの南コースでホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催された。いつもの動態確認テストはレーサーなどが多かったが、今回は20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックメイキングなモデルが走行を披露した。
欧州に進出したことで生まれた新フレーム
1962年、ホンダは日本のメーカーで初めてベルギーに海外現地法人を設立し、10月からスーパーカブC100の派生モデルであるペダル付きモペッド、C310の生産をスタートした。しかしセールスは苦戦し、新しいスポーツタイプのモペッドの開発に乗り出した。この新しい欧州向けモペッドのエンジンや足まわりなどはC310の流用を前提としていたが、C310やスーパーカブに採用されていたボトムリンクのフロントフォークではスポーティさに欠けるためテレスコピックフォークに変更。だが、これだけでは軽快なデザインにはできず、かと言ってパイプフレームはコスト面で採用が難しい……。模索するなかでTボーンフレームのアイデアは生まれたのだ。
スーパーカブなど、それまでのプレスフレームはリヤフェンダーと一体で成形されており、軽快な印象にはならなかった。一方、Tボーンフレームはリヤフェンダーを本体から分離したため、パイプフレームのモデルのようなスポーティな外観を生み出すことに成功。フレーム本体は全周溶接で剛性が高く、また空間を生かした造形美が特徴で、1967年にホンダ2輪車で初めてGマーク(GOOD DESIGN AWARD)製品に選ばれた。
本田宗一郎氏の一声で国内販売→90㏄ブームに
当初、CS90の開発プロジェクトの重要度は高くなく、デザイン室の片隅で作業が進められていたという。ところが、このスポーツモペッドが本田社長の目にとまり、直ちにモデルの前で会議が始まり「このデザインを国内で売りなさい」との指示が出された。エンジンについても急きょ議論が交わされ、SOHC90ccの新エンジンを開発することになった。
エンジンは、クラス初の4ストロークSOHC単気筒で、製品プランはスポーツカブに基くが、排気量が異なるため全ての部品が新設計となった。アルミ合金製シリンダーヘッドは、軽量化とともに冷却性能を向上させ、燃焼の安定化等に寄与した。鋳鉄製スリーブ入りのアルミ合金製のシリンダーは、軽量化のほかにも放熱性能の向上ももたらした。90ccの排気量から最高出力は8ps/9500rpmを発揮し、最高速は100km/h、0~200m加速は12.5秒と抜群の性能を誇った。CS90はたちまち若者たちの人気を集め、90ccスポーツ車ブームを巻き起こし、他社からも2ストロークエンジンを搭載したスポーツモデルが一斉に発売された。
取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン
Source: WEBヤングマシン