スバルのWRX STIに走りに徹したモデルTYPE RA-Rが500台限定、500万円を切る4,998,240円で販売になりました。WRXシリーズのなかでもとくに走りにベクトルを向けたモデルがSTIです。そしてそのSTIの走りの部分をさらに磨き上げたモデルとしてS208というモデルが2017年に450台の限定で登場しました。東京モーターショーでお披露目されたS208は多くの申し込みがあり、抽選販売となった経緯があります。そして満を持して、2018年、WRX STI TYPE RA-Rが登場しました。
WRX STI TYPE RA-RはS207と同じ329馬力の2リットル4気筒エンジンを搭載しますが、徹底した軽量化を行うことでそのポテンシャルを向上しています。その軽量化の手法は、ヘッドランプウォッシャーやリヤのワイパー、リヤフォグランプ、スペアタイヤの廃止などに加えて、ウオッシャータンクの小型化などまで徹底したものです。
試乗は群馬県にある群馬サイクルスポーツセンターで行われました。このコースはまるでワインディングロードのようなコースで、なおかつ路面が荒れているのでクルマにとってはなかなか厳しい評価となるコースです。乗り出してアクセルを踏んでいくと、そのエンジンの吹け上がりのよさにまずはびっくりさせられます。アクセル操作に対するエンジンの反応がシャープで、レッドゾーンの8000回転まで何のストレスもなく回転が上ります。もちろんただ回転が上がるだけでなく、加速感が衰えることがないのです。とくに3000から5500回転の間はトルクカーブが高い状態でフラットとなっているため、シフトアップして回転が落ちた際もトルクバンド中に収まってくれて、シフトアップ時の息継ぎ感はありません。とくに2速と3速はギヤ比が離れ気味ですが、そこの息継ぎ感もありません。
ただし、シフトダウンのときはこのギヤ比の離れをカバーするため、ブリッピングを強めに行わないとなりません。加速時のフィーリングには申し分のないエンジンですが、フリクションが少ないこともあり、エンジン回転の落ちが少し遅れ気味になります。コーナリング時に荷重移動を行う際はアクセルワークだけに頼ったドライビングではなく、積極的にブレーキを使った荷重移動が大切になります。
そのコーナリングですが、これがびっくりするほどによく曲がります。S208はビルシュタインのダンパーを使っていましたが、TYPE RA-RはKYBのダンパーとなります。このダンパーがじつにしなやかに動き、クルマの動きを抑制することない印象です。WRX STIには前後のトルクバランスを制御するドライバーズコントロールセンターデフ(DCCD)を装備しています。最新のDCCDは電子制御式となり、まるでFRのようなコーナリングを可能にしています。ステアリングを切ったなりに素直に曲がって行き、アクセルを入れてもアンダーステア傾向には振られずそのままグイグイ曲がってくれます。
タイヤは245/40ZR18のミシュランパイロットスポーツ4Sを履きます。従来、日本国内で販売されていたパイロットスポーツ4Sは19インチと20インチでしたが、STIがこのWRX STI TYPE RA-Rにどうしても履きたいということを強く要望し、特別にアメリカから輸入されることになったと言います。タイヤと路面の当たり方にカドがなく、路面が荒れているコースでありながら、乗り心地を確保していました。このタイヤはトレッドの外側がドライ路面用、内側がウエット路面用というデュアルコンパウンドを採用するタイヤなので、ぜひウエット路面でも試乗してみたいと感じました。
S208はレカロシートが装着されていましたが、WRX STI TYPE RA-Rはノーマルタイプのシートです。これはある程度自由にカスタマイズしてほしいという思いでの設定となります。クルマの性能が高いだけに、ノーマルタイプのシートでは運転に限界を感じました。購入して乗られる方はシートのカスタマイズは必須でしょう。
(文:諸星陽一/写真:平野 学)
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Source: clicccar.comクリッカー