2018年6月20日に発表されたスバル・フォレスターのフルモデルチェンジ。発売日は7月19日(ハイブリッドは9月14日)と少々先ですが、クローズドコースで試乗することができました。
これまで2.0リッターのNAエンジンと直噴ターボエンジンというラインナップだったフォレスターですが、新登場した5代目に設定されるパワートレインは、2.5リッターNA直噴エンジンと2.0リッターNA直噴+モーター+ISGによるマイルドハイブリッドという2本柱となっています。
NAとターボのときはターボが格上というイメージもありましたが、新型フォレスターではあくまで対等の2本柱であって、どちらかが上位になるといったキャラクター付けはしていません。
実際、3グレードが設定される2.5リッターエンジン車の価格帯は291万6000円〜302万4000円、「アドバンス」という1グレードとなるハイブリッドの価格は309万9600円。それほど価格差はありません。
ステレオカメラによる先進安全装備「アイサイト」はもちろん、追従クルーズコントロール作動時に加減速だけでなく操舵までもアシストする「ツーリングアシスト」も全車に標準装備されています。また、後側方警戒支援システムやアダプティブドライビングビームからなる「アイサイトセイフティプラス」はNA車の上級グレードとなる「プレミアム」とハイブリッドの「アドバンス」に標準装備となっています。
とはいえ、気になるのは新設されたハイブリッドの「アドバンス」でしょう。このグレードには、赤外線カメラによりドライバーの居眠りやわき見を検知して注意を促す「ドライバーモニタリングシステム」が標準装備されているのです(他グレードには設定なし)。
ドライバーの様子をモニタリングする安全運転支援システムは、レクサスやキャデラックなどに実装されていますが、フォレスターでは顔認証システムを搭載することで、ドライバーがシートに座るだけでシートやドアミラーのポジションを合わせ、エアコンの設定温度も好みのものに調整するという付加価値を乗用車として世界で初めて搭載したといいます。
ハイブリッドだからというのではなく、この「ドライバーモニタリングシステム」を求めて「アドバンス」グレードを選ぶというユーザーも増えそうです。実際、先行予約実績では4119台のうち約4割が「アドバンス」グレードとなっているそうです。
さて、注目のハイブリッド車ですが、そのパワートレインには新たに「e-BOXER」という名称が与えられました。省燃費性だけではなく、新しいボクサー(水平対向)エンジンとしての魅力を提案するパワートレインを目指すという意思が感じられます。
仕組みとしてはトランスミッションの後ろに配置された駆動モーターとラゲッジ床下に収納されたリチウムイオン電池から構成されるマイルドハイブリッドですが、さらにそれ単体でもハイブリッドといえるISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)とISG用の鉛バッテリーを搭載しているという他にはない独特のメカニズムとなっています。
バッテリー以外の構成要素としては旧型インプレッサ&XVに設定されていたハイブリッド車と同じといえますが、思想が異なっています。また、バッテリーがコンパクトにまとめられているためラゲッジスペースへの悪影響がないというパッケージングも見事といえるでしょう。
ハイブリッドカーと聞くと、燃費重視でドライバビリティにマイナスなイメージを持つかもしれませんが、スバルe-BOXERは「アクセル踏み込み時の軽快感、レスポンスの良さ」を狙ったハイブリッドなのです。従来のターボのような回したときのパワー感ではなく、アクセルの踏み始めから鋭いトルク感で気持ちよく加速するといった点で、モーターアシストを活用しています。
カタログ値のみならずリアルワールドでの燃費性能を無視しているわけではありませんが、フォレスターというキャラクターに期待するアクティビティにつながるパワートレインとして仕上げられているのです。
とくに、「SIドライブ」と呼ばれるドライブモードを「Sモード」にすると積極的にモーターアシストを活用するセッティングになります。ただし、モーターの最高出力は10kWにとどまっていますから、全域でモーターアシストを体感できるわけではありません。30〜50km/hの速度でコーナリング、そこから立ち上がりに向けてハーフスロットルを入れていったようなシチュエーションで、もっともモーターアシストの旨味を感じることができます。つまり、一般道を法定速度で走っているときの軽快感につながるパワートレインが「e-BOXER」というわけです。
今回の試乗コースはワインディングを模したクローズドコースでしたが、まさにこうしたシーンにおいてe-BOXERのレスポンスは光ります。しかも、プラットフォームから一新したフォレスターのハンドリングは、最低地上高を220mmも確保したSUVとは思えないほどロールが制御され、ステアリング操作にもキビキビと反応するものですから、モーターアシストによるコーナー立ち上がりの鋭さは、コーナリング全体の流れとしても好印象につながっていることが確認できました。
過給エンジンとも違う、しかしハイブリッド的なネガも感じさせない、新しいパワートレイン像をフォレスターの「e-BOXER」は表現しているのです。
●スバル・フォレスター「アドバンス」 主要スペック
車両型式:5AA-SKE
全長:4625mm
全幅:1815mm
全高:1730mm(ルーフレール装着車)
ホイールベース:2670mm
車両重量:1660kg
乗車定員:5名
エンジン型式:FB20
エンジン形式:水平対向4気筒ガソリン直噴
総排気量:1995cc
最高出力:107kW(145PS)/6000rpm
最大トルク:188Nm(19.2kg-m)/4000rpm
変速装置:CVT
モーター型式:MA1
モーター形式:交流同期電動機
モーター最高出力:10kW (13.6PS)
モーター最大トルク:65Nm(6.6kg-m)
駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
燃料消費率:18.6km/L (JC08モード)/14.0km/L(WLTCモード)
タイヤサイズ:225/55R18(サマータイヤ)
メーカー希望小売価格(税込):3,099,600円
(山本晋也)
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