80~90年代の日本車からグッドデザインを振り返るシリーズ。第38回は、純白のボディで人気を拡大するライバルに対し、ついに日産独自の活路を見出したビッグセダンに太鼓判です。
フォーマルな中にも適度な先進性を持たせたクラウンに対し、旧時代的な価値観が色濃く残る歴代セドリック・グロリア。1987年、一転してショーファードリブンの社用車という固定概念を打ち破り、ドライバーズカーのダイナミックさを身につけて登場したのが、7代目のセドリック・グロリアです。
ライバルに準じるピラーレス・ハードトップボディこそ日和見的ではあるものの、ショートノーズ、ビッグキャビン、ハイデッキの基本シルエットは新世代セダンの証。ブラックパネルを被せたAピラーにより、広くラウンドしたグラスエリアを作ります。
フロントは派手さを抑えたグリルで、リアは横長のランプでシンプルにまとめ、これを結ぶサイドボディは非常にクリーンな面で構成。しっかりとしたグリップ形式のドアハンドルが、質感を高めると同時にアクセントにもなります。
ホワイト全盛の時代に、ダークレッドなど濃色をメインにしたボディカラーは、曲面ボディに映えることを意識したもの。とくにブラックがテーマのグランツーリスモでは、ウインドウを囲むメッキとエアロバンパーのフォグランプが際立ちます。
インテリアは歴代の「絶壁型」を反省、スポーティなメータークラスターとスラントした助手席側パネルが機能性を示します。一方、ブラウン系主体の内装は、ボディカラーに準じてシックな大人の空間を演出。
文系出身で異例の抜擢となった三坂泰彦主査は、歴代に準じた承認済みデザインを否定。動いているときに美しく感じる、よりダイナミックなスタイルを求め、デザイナーはこれに応えたといいます。
この直後、日産は秀作を次々に送り出すことになります。動感を持たせたボディを、クリーンかつソリッドにまとめるセドリック・グロリアのスタイリングは、その「ビッグバン」のプロローグだったのかもしれません。
●主要諸元 日産 セドリック 4ドアハードトップ V20ツインカムターボ グランツーリスモSV (4AT)
形式 E-Y31
全長4690mm×全幅1695mm×全高1400mm
車両重量 1480kg
ホイールベース 2735mm
エンジン 1998cc V型6気筒DOHC24バルブ
出力 185ps/6800rpm 22.0kg-m/4800rpm
(すぎもと たかよし)
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Source: clicccar.comクリッカー