80~90年代の日本車からグッドデザインを振り返るシリーズ。第34回は、日本のGT史上最高のスペックによりアウトバーンの追い越し車線制覇を公言したスーパー・グラン・ツーリスモに太鼓判です。
ドイツの高性能車群に比類し、80年代の走りを牽引するクルマはどうあるべきか。1981年、コンセプトカー「EXー8」の発展版とし、170馬力のDOHC6気筒エンジンを引っ提げて登場したのが初代のソアラです。
80年代を象徴する「空力」を追求したスタイルは、当時最先端のクサビ型ウエッジシェイプボディ。同じく最新の一体成形ウレタンバンパーを採用し、フロントを大きく絞り込むことで国際基準の高速性能を表現します。
前後ランプ間に繊細なキャラクターラインが引かれるサイドボディは、きわめてシンプルかつクリーン。プレスドアの採用はそのボディにカタマリ感を与えつつ、面一化による空力特性向上にも貢献します。
フェンダーに回り込む横長の前後ランプは、ボディ全体に端正な佇まいを与え、とくにブラックで縁取ったリアランプはエレガントさも獲得しています。さらに、太いガードモールはボディを引き締めつつ、ボディの低さも演出。
インテリアはシート形状こそ70年代の雰囲気を引きずるものの、エレクトリックメーターを採用し、整然と機能を集約したコクピットは新時代を表現。インパネは複数用意された基本色とブラックを組み合わせることで質感を向上させました。
このスタイルに対し、当時の日産・レパードと比較して「物足りない」「おとなし過ぎる」という意見が多かったといいます。しかし、デザインチームは、200m離れてもソアラとわかる存在感を与えるため、あえてシンプルな「素顔美人」を標榜。
「そこには牙をむき出しにしたラインは一本もない」というカタログコピーは、その目標を如実に表したもの。このとき、トヨタのデザインチームは、評論家やユーザーの意識をはるかに上回る仕事をしていたのかもしれません。
●主要諸元 トヨタ ソアラ 2800GT-EXTRA(4AT)
形式 E-MZ11
全長4655mm×全幅1695mm×全高1360mm
車両重量 1305kg
ホイールベース 2660mm
エンジン 2759cc 直列6気筒DOHC
出力 170ps/5600rpm 24.0kg-m/4400rpm
(すぎもと たかよし)
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Source: clicccar.comクリッカー