2030年には電動車両550万台以上を販売、2050年にはゼロ・エミッションの実現を目標として掲げているトヨタ。そのためにはバッテリーやモーターといった電動車両に欠かせない要素を進化させることは必須です。いずれもレアアース、レアメタルの使用量が多く、普及の壁になっているのも事実でしょう。つまり、レアアース、レアメタルを削減しつつ、性能を維持・向上させることはクルマの電動化という未来に向けて、欠かせない技術要素なのです。
そして、トヨタが発表した「省ネオジム耐熱磁石」は、強力な磁石を作るために必要不可欠なレアアースである「ネオジム」の使用量を20~50%減とすることが可能という画期的な技術。断面の顕微鏡写真を見るとわかるように、磁石を構成する粒を微細化すると同時に、その中身をランタンとセリウムの混ぜた材料として、表面にネオジムを配することで、使用量を減らしながら、耐熱性にも優れた磁石を作ることができるわけです。
とはいえ、トヨタは自動車メーカーであり、磁石を作ったり、モーターを作ったりしようというわけではありません。革新的な技術ですが、生産については「磁石メーカーとの協業」を前提としています。さらに担当エンジニア氏は「駆動モーターだけでなく、パワステなどの小さなモーターにも使える技術ですし、もちろん家電にも有効な技術です」といいます。考えてみれば、自動車用のネオジム使用量を減らしても、他の工業製品で大量に使っていては、遠からずネオジムが枯渇するということになりかねません。
今回の発表には、「自動車業界に限らず、みんなでネオジムの使用量を減らすことで、需要が拡大するであろうレアアースの安定供給を実現しましょう」というメッセージが込められている、そんな気がします。最近のトヨタといえば、「仲間づくり」がキーワードになっていますが、磁石やモーターにおいては、業界を横断した仲間づくりを目指しているのかもしれません。
(山本晋也)
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