昨年取材で盛岡から釜石へ向かう途中、夜道の暗がりにすっくと現れた鹿に遭遇した時は少し驚いたものです。
大きいので制限速度で走っていれば確かに止まることは可能で、そういった意味では全く問題はなかったのですが、何しろ堂々としている、と言えば聞こえはいいですが、要は全く動じないのです。
周囲に民家もありませんし、対向車もいませんので、パッシングをしたり、クラクションを鳴らしたりしてもあまり反応はありません。しばらく止まっているときょろきょろして森の中に入っていきました。
猿に遭遇したり、イノシシの子供が横切ったりということも時々ありますし、首都圏の郊外でもタヌキは案外遭遇する印象があって、しかもそのイメージとは裏腹に案外俊敏なことに驚かされるほどです。しかし、それに対して鹿と来たら、動きがゆったりとしており、遭遇すると厄介だなあ、という実感を持っていたところでした。
そんな体験をしていたものですから、今年の東京オートサロンで鹿ソニックを見つけた時には「し、鹿センサー!!!」と思わず声に出してしまったほどでした。山梨県南都留郡富士河口湖町での点火系チューニングなどを手掛けるT.M.WORKSは、オートサロン会場に鹿撃退装置「鹿ソニック」を出展していました。
もちろん本業の点火系チューニング関連の商品も国内外様々なものを紹介していましたが、そんな傍らにある、この「鹿ソニック」は、地元へ貢献したいという思いから開発されたのだそうです。
「河口湖周辺、実は鹿がかなり頻繁に現れます。実際に鹿に衝突したケースや、鹿にヒヤッとしたことのあるという方は少なくないのです。鹿は小さくないですから、衝突すればクルマもダメージを受けますし、最悪の場合、けがをすることも十分あり得るのです。私たちは自動車関連のビジネス、特に電装関係を手掛けていますので、そんなノウハウも生かしながら、地域のそんな事情にお役に立てないか?そんな思いで作ってみました。威嚇したり、不快な音を出すというのではなく、鹿が聞きなれない音波を発生させ、近寄らせないようにするというのが説明としては正確かもしれませんね。当初の効果はまずまずと言えるのではないでしょうか。」と紹介してくださいました。
自動車は工業製品であり、人間社会の文明の利器ではありますが、地域性を反映したきっかけから生まれた「鹿ソニック」。
地域地域ごとにこうした対策を講じることも大切なことかもしれませんね。正式には近日発売というこの「鹿ソニック」。すでに同じ悩みを抱えている遠方のユーザーからも引き合いが来ているのだとか。鹿に遭遇しなければ、クルマと衝突する鹿も減るということ。野生動物の生息エリアが、森林が荒れたことで狭まり、追いやられるケースも少なくない昨今。駆除する、撃退する以前に「近づけない」対策は大切かもしれませんね。」
また最近こちらも全国的に問題になっている誤操作による以上発進のによる事故。それを防止する装置も展示されていました。
(中込健太郎)
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Source: clicccar.comクリッカー