スズキの新型、クロスビーに試乗しましたので報告します。
クロスビーはスズキの小型車・イグニスのプラットフォームをベースに、全長を60mm・全高を110mm高めたモデルです。
同社のハスラーを思わせる特徴的なヘッドライトはLEDが設定されるものもあります。リヤ部分はライト類を含めクロスビーオリジナルのものとなっていますが、注目はバンパーの上端位置が一般的なモデルよりも非常に高い場所にあることです。
昨今のハッチバック車では開口部位置を下げるためにこの位置が低くなる傾向にありますが、クロスビーではタフな外観を優先して高めにしました。これはボディのバックパネル面積を増やすことにもなり、剛性は非常に高くすることができました。
パワーユニットは全車マイルドハイブリッドで、エンジンは1リッター直噴ターボエンジンです。これは同社のバレーノでも搭載経験がありますが、クロスビーではレギュラーガソリン仕様なのが嬉しいところです。
マイルドハイブリッドシステム用のモーターは、発進直後や加速時に最長で30秒間エンジンをアシストします。全車CVTではなく6速ATを採用して、ステアリングにはパドルシフトも付いています。
駆動方式はFFと4WDの2タイプが用意されています。
4WDモデルではヒルディセントコントロールやグリップコントロールを装備。さらに走行モードもスノーとスポーツを選択することが可能です。
例えばスノーモードでは滑りやすい路面のトルク抑制はもちろん、走行中にスリップしたタイヤのみにブレーキ制御を併用しながら安定走行させるこども可能です。
インテリアはAピラーが立っていてウインドウは上下に薄いので、運転席からの視界は非常に独特の眺めです。
ホイールベースはイグニスと同じ2435mmですが、前後シート間を155mm増やしたことでリヤシートは広々です。また後席は50対50の2分割式で、左右それぞれスライドとシートバッグを倒すことができます。
ラゲッジルームの開口幅は最大で1100mmあり、開口高さは最大で800mmです。シートを倒した時の荷室の最大長は1165mmです。ラゲッジフロアは汚れを拭き取りやすい素材が採用されていますので、アウトドア用品なども積みやすいですね。
早速試乗してみました。今回の試乗路は空いた郊外です。
クロスビー、通常走行する分にはいい意味でクセがなく自然です。低速域からトルクが出ているからか、車重が軽量(全車1トン以下)だからか、またはその相乗効果で出足から素早く車体を前に出していきます。しかしそれはアクセル踏み込み量に対してナチュラルで、「ビュン」と出過ぎて運転しにくいようなことはありません。
制限速度上限が60km/hの一般道ではアクセルに軽く足を触れるだけで交通の流れに乗ることは可能ですが、今回はちょっと深めに踏んでみました。
1リッターターボエンジンは2000rpm付近からトルクが非常に厚くなっていき、意外なほどスポーティーなエンジン音を発生させつつ車速を増していきます。単純にスピードが上がるだけではなく、ドライバーに強い加速感を感じながら走らせていきますので、運転していてとても気持ちがいいです。これはCVTではなく6ATを採用したことも大きく寄与しているものと思います。ダイレクトなフィールが快感なのです。
なお、このトルク感にはISG(セル機能付きモーター)によるアシストも寄与しているはずですが、その効果は自然なため気づきません(メーターのパワー遷移モニターをチェックすれば視認可能ですが)。
このパワーユニット2種類と変速機マッチングの合わせ込みレベルが非常に高いので、クロスビーではターボの存在もISGがあることも忘れてしまいそうです。まるで1.8L級のNA車に乗っているような感覚なのです。
こういう「自然さ」「気持ちよさ」を生み出す作業がどのくらい大変なのかはわかりませんが、そういうクルマが少ないことから考えるとたぶん簡単/コスト安ではないのでしょう。
また、アクセルを深く踏み込まない限り、走行中はエンジン音が聞こえることはほとんどありません。これは常用回転域が低いことに加えて、Aピラー部分を始め遮音材を一般レベルより多く使っていることが要因でしょう。ロードノイズも含めた車内の静粛性はなかなかのレベルです。
クロスビーは見た目の印象でハスラーを連想させますが、室内やラゲッジの広さ、そして走りの余裕と質感などで全く違うキャラクターを持つクルマでした。
●スズキ クロスビー・主要スペック
価格:176万5800円〜214万5960円
全長×全幅×全高:3760×1670×1705mm
パワーユニット:
3気筒直噴ターボ+ISGモーター
排気量:996cc
最高出力:99ps/5500rpm
最大トルク:15.3kgm/1700〜4000rpm
JC08モード燃費:22.0km/L〜20.6km/L
(文・写真・動画/ウナ丼)
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Source: clicccar.comクリッカー