いよいよ「平成」も残すところあと1年と少し。思い返すと、「平成」におけるクルマは激動の中にありました。
私が生まれた平成元年は、世界中で今も評判が高い「ロードスター」が誕生したほか、「スカイラインGT-R(R32)」が数々のレースで戦果を挙げ、またレクサスの初代「LS」が高級車の概念を塗り替えるなど、クルマの歴史の中でも当たり年だったと言われるほど活気に満ちていたそうです。
ところが、私が免許を取れる年齢を迎えたとき、環境は一変していました。発売されるクルマは、ミニバン…ミニバン…ハイブリッド…またミニバンと、実用性にこだわるばかりのつまらないクルマで溢れ返っていました。
最近では、必要な時だけクルマを借りる「カーシェア」が徐々に広がっており、首都圏を中心に「クルマを持ってなくても困らない」という考えが浸透しつつあります。いずれ自動運転技術と組み合わさったら、タクシーを捕まえる要領で街中を走る自動運転車を止めるだけで、誰でもクルマの利便性を享受できることでしょう。
クルマ好きにとっては悲観的かもしれませんが、実はチャンスかもしれません。そんな未来が現実味を帯びているからこそ、実用車の維持管理は人に任せて、デザインや走りにこだわった楽しいクルマを心置きなく所有できるのではないでしょうか?
それを踏まえて、その年に出たクルマの中からNo.1を決める「クリッカーオブザイヤー」で私が最高点(10点)を付けたのが「レクサス・LC」です。
デビューした17年3月に「LC」と1週間を過ごしたのですが、まさに夢のようなひと時でした。
新開発のGA-Lプラットフォームが実現した優美なスタイルの美しさに死角はなく、信号待ちでショーウィンドウにチラッと映る横姿にさえ見惚れるほど。クルマ好きの大人だけでなく、物心ついたばかりの子供でさえ目を丸くして「LC」の姿に惹き込まれていました。
試しに運転席に座らせてあげれば、上質なレザーをふんだんに使ったスポーティなインテリアの雰囲気に圧倒され、絞り出すように「すごい」とひと声。しかし、次第に笑みが零れる。これほどまで人の心を揺さぶったのは、2017年に出たクルマの中で「LC」を置いて他にありません。
もちろん、走り出せばその喜びはさらに増すばかり。新開発のマルチステージハイブリッドシステムは、特に高速域での反応が素早く、思い通りの加速が可能。従来のハイブリッドとは別物と言えるほど、爽快感と楽しさを味わえます。価格は1300万円と高価ですが、「LC」でしか味わえない味があります。
残りの10点のうち、6点は流麗なスタイルと快適な乗り心地、先進的な安全装備を備える「メルセデス・ベンツ Eクラスクーペ」に、4点をリーズナブルな価格ながら独特な世界観を見事に表現した「シトロエン・C3」に付けました。
クルマを所有することへの意識が変わり始めているからこそ、それでも“あえて所有したい”と思わせるようなクルマが登場することを、次の時代に期待したいです。
(今 総一郎)
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Source: clicccar.comクリッカー