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ASTON MARTIN DBX
アストンマーティン DBX
電動モデルであっても、
アストンの流儀に従うSUV。
すでにアストンマーティンが公表していた初の電動SUVモデル「DBX」。その車名がそのまま使われることが決定し、開発専用のプロトタイプ第1号車も完成、早くもウエリッシュラリーで使われるステージで実走テストが始まった。陣頭指揮を執るのはチーフエンジニアのマット・ベッカーだ。
DBXのシェイクダウンテストは、これから始まる広範囲なテストプログラムの序章に過ぎない。
開発初期段階ではシミュレーションが重要な役目を果たしたが、今回ウエールズでプロトタイプが実走したことにより、ようやく「リアルワールド」でのテストが始まったことになる。
この1台のプロトタイプが過酷なテストプログラムをこなしたあと、複数の開発用プロトタイプが製作される。その開発用プロトタイプは、北極のツンドラ地帯、中東の灼熱の砂漠地帯、アルプスの険しい峠道、アウトバーンの連続高速走行、そしてニュルブルクリンクなど、世界中のありとあらゆる極限的な環境でテストを重ねる。
DBXはアストンマーティンのラインアップのなかでもユニークな存在なだけに、専用のテストプログラムを要する。テストはアストンの流儀に従い「気迫と落ち着き」をもって進行するが、DBXの「オールパーパスカー」としての資質を見極めるには、同社がこれまで経験したことのない領域にまで踏み込むことになる。
オールテレインビークルとしての資質はもちろん、プレジャーボートなどを牽引する能力も問われるのだ。プロトタイプ第1号車を走らせたベッカーは、次のように語る。
「ドライビングシミュレーターによる開発とチューンによって、実走テスト用のプロトタイプが完成するまえの段階で素晴らしい成果を上げました」
「とはいえ、最初の1台で最初の1kmを走らせる日は『ビッグデイ』です」とベッカーは興奮を抑え切れない様子だ。
「シミュレーションで得た結果が、ほぼそのままプロトタイプで実現できたことを嬉しく思います。ひとりのエンジニアとして、ずっと作業を続けてきたクルマのフィールを実際に感じることができるのは、最高に胸躍る経験です」
ベッカーはさらにこう続ける。
「DBXはこれまでのアストンマーティンとはまったく別のキャラクターですが、あらゆる状況と地形でテストして、『ウィングエンブレム』に相応しいドライブ体験を実現させます」
DBXは2019年の後半にデビュー予定で、同社が新設中のセント・アサンファクトリーで製造される。
アストンマーティン社長兼グループCEOのアンディ・パーマーもこう語る。
「DBXの開発専用プロトタイプ第1号車が実際に走る姿、これは私たちにとって初のSUVを語るストーリーのなかでも重要なチャプターです。命を宿した瞬間を目撃したわけですから」
パーマーはこのように前置きして、DBXはただのSUVとは違うと断言する。
「私たちの新ファクトリー、セント・アサンが製造する最初のモデルであり、アストンマーティンの長い歴史のなかでも、これまでの慣習に捕らわれない、まったく新しい時代の幕開けを告げるモデルなのです」
DBXは、アストンマーティンにとって極めて重要なモデル。純EVカーであるうえ、SUVの走破性も求められるマルチパーパスカーだ。キャンプ先で必要となる電力もDBXから供給できるようにするなど求められる条件は多い。あえてそこ踏み入れたアンディ・パーマーの新たな戦略は、まさに正統派。そのフィーリングが如何なるものか、世界中が注目している。
TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)
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Source: clicccar.comクリッカー