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トヨタ・プリウスの駆動モーター進化のポイントは「リラクタンストルク」

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いま自動車業界のトレンドは「EVシフト」と「自動運転」。いずれも日本の自動車メーカーは遅れを取っているというイメージですが、そうとはいえません。とくに前者においては「EV」という言葉から近々に100%電気自動車が主流になると捉えられていますが、当面はハイブリッドカーが多数派になると予想されています。

というのは、いまの内燃機関を使った自動車の性能(航続距離など)をそのままに電気自動車に入れ替えるには、あまりにも車両価格が上がってしまうから。電気自動車がリーズナブルなモビリティになるには、まだまだ超えなければならないハードルはいくつもあります。それはバッテリーであったり、充電システムであったりします。

その一方で、駆動モーターについては、ほぼ進化し尽したと考えられているのか、ブレークスルーを求める声はあまり聞きません。

しかし、電動車を拡大するためには、まだまだ課題はあります。トヨタが開催した「電動化技術説明会」では、1997年に誕生した初代から現行型まで歴代プリウスの駆動モーターが並べられ、いくつもの課題をクリアすることで進化してきた様を見比べることができました。

駆動モーターにおける進化ポイントと技術開発の3本柱は「低損失化」、「小型軽量化」、「低コスト化」。そのほか冷却性能や静粛性といった部分でも進化を遂げています。

歴代プリウスが採用した駆動モーターのスペックを、最高出力(kW)、コア体積(L)、最高回転数(rpm)、コイル種類の順番で、以下に記します。

初代:30kW 5.1L 5600rpm 丸線
2代目:50kW 4.7L 6000rpm 丸線
3代目:60kW 2.7L 13500rpm 丸線
4代目:53kW 2.2L 17000rpm 平角線

3代目からリダクション(減速)機構を備えているので、単純に比較できませんが、ピーク性能でいうと最高出力は倍増していますし、体積は半減しています。つまり体積あたり出力でいうと4倍といえる大幅な進化を遂げています。もちろん、減速機構により小型化できているのは言うまでもありません。

小型化が進んだことで初代から3代目までは同軸配置だった発電モーターと駆動モーターは、4代目において複軸配置となりユニット全体としてのレイアウト自由度が上がったことも感じられます。そうしたレイアウトの最適化や減速機構の変更などによりメカニカル損失も低減。初代と比べると4代目ではおよそ60%減となっているのも見逃せません。

小型化に効いたポイントが、4代目にして初採用した平角線のステーターコイルです。丸線を巻くのに対して成型した平角線を使うことで隙間を減らすことができ、いわゆるコイル専占率を向上させることができています(約1.3倍)。

また、低コスト化については磁石使用量を削減することが大きく貢献しています。とはいえ、単純に磁石を減らしてしまうとモーターの発生できる力(トルク)が減少しています。そこで、磁石を小さくしながらも、その配置を工夫することにより「リラクタンストルク(ステーターの磁界による力)」を有効利用することで、合成トルクを増やしています。

つまり、ローター磁石配置構造の最適化が進化ポイントのひとつとなります。具体的には初代では一つだった磁石は、2代目、3代目で2つにわかれ、さらに4代目では3か所に配置しています。これによりリラクタンストルクを強め、磁石量を減らしながら合成トルクを確保することが可能になりました。パフォーマンスを落とさずにコストダウンを成功させたわけです。

電気自動車における誤解のひとつに「モーターを買ってくれば、自動車メーカー以外でも簡単に電気自動車を製造できる」というものがあります。しかし、モーターについても「買ってくる」のではなく、技術を手の内に入れていることが、ライバルを圧するテクノロジーにつながるということを、プリウスの進化は教えてくれるようです。

(山本晋也)












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Source: clicccar.comクリッカー

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