2019年で生産を終えることになったフォルクスワーゲン ビートル。ここでは、FF車として復活した新世代のビートルについてお話しましょう。
本来であれば、1974年に傑作車・ゴルフが誕生した時点でビートルは役割を終えたはずでした。ところが20世紀もそろそろ終わろうとする1994年、フォルクスワーゲンはデトロイトで開かれた北米自動車ショーに、ビートルを現代に復活させたようなプロトタイプ「コンセプトI」を出展します。
人々はビートルというアイコンを忘れてはいませんでした。コンセプトIは大きな話題となり、市販化を望む声が多数寄せられます。この声に応えて、1998年に市販化されたのが「ニュービートル」です。
ニュービートルはゴルフのA4プラットフォームをベースにしたFF車で、生産拠点となったのはメキシコのプエブラ工場。初代ビートルがトランク&スペアタイヤ置き場として使った丸いフロントセクションにエンジンを押し込んだため、ダッシュボード周辺が大きいという「事情」もありましたが、愛らしくモダンな存在感は圧倒的で、ビートル神話を21世紀へと継承することに成功します。
ニュービートルからも、初代ビートルのような派生モデルが生まれました。アメリカで人気を得たカブリオレに加えて作られたのは「RSi」というモンスター。巨大なリアウイングを持つボディに225psを発生する3.2L・V6エンジンを押し込み、6速MTを通じて4輪を駆動したこのクルマは、初代ビートルのチューニングカルチャーを受け継いだかのようなホットモデルとして注目を集めました。
そのニュービートルは、2011年にフルモデルチェンジを敢行します。車名は新たに「ザ・ビートル」と名付けられました。横から見ると完全な半円だったルーフラインにわずかな「角」が与えられ、全長も伸ばされて室内の居住性が改善した点が特徴です。高性能モデルとしては「ターボ」があり、ゴルフGTIと同じ直噴4気筒エンジンにDSGを組み合わせて、211psを発揮しました。
このザ・ビートルも一定の人気はつかんだのですが、いっぽうで大きなトレンドの変化に直面することとなります。それが他ならぬSUVブームです。メインマーケットとなる北米はもちろん、世界中でSUVが大きな存在感を占めるようになり、2+2のノッチバックスタイルというザ・ビートルは苦しい戦いを強いられることとなります。
じわじわとセールスも勢いを失い、メインマーケットアメリカですら、今年前半の販売台数が1万台強にとどまる状態。なによりフォルクスワーゲン自身が、トゥアレグやティグアンといったSUVで大きな利益を上げるようになったのですから、しかたのない流れなのかもしれません。
今回の生産終了について、フォルクスワーゲングループジャパンの商品広報担当であり、なによりも熱烈なビートルフリークでもある池畑浩さんにお話をうかがってみました。
「自動車の歴史を通して、あれほどのカルチャー、文化を作ったクルマって他にないですよね。日本での販売台数をみてみると、初代がおよそ9万台売れたのですが、ニュービートルもほぼ同数、最後のザ・ビートルもおよそ4万台売れています。初代だけが人気だったわけじゃなくて、ずっと続いたんですね。もうビートルのマインドが根付いているんだと思います」
「フォルクスワーゲンも、最近はEVやバス(トランスポーター)といった新しいモデル作りに取り組んでいますが、ビートルのマインドがみんなの心にある限り、また違った形で復活することを望みたいと思いますね」
(文・角田伸幸/写真・フォルクスワーゲン)
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Source: clicccar.comクリッカー