自動車技術会主催「人とくるまのテクノロジー展2018 名古屋」(7月11日〜13日)において、「VCR(Variable Compression Ratio)」技術を搭載した可変圧縮比エンジンの仕組みを初公開した日立オートモティブシステムズ。
同社は自動車部品の製造・システム開発を手がけており、昨年11月末に発表されたインフィニティ(日産)のSUV「QX50」では、世界初の「VCRエンジン」実用化に貢献、燃費と走りの両立を実現しています。
「VCR」は内燃機関の一層の高効率化に向け、ピストンの上死点位置をシームレスに変化させることで圧縮比を最適化する技術。排気量2.0Lの直4ターボエンジン「MR20DDT」において、運転状況により圧縮比を8~14の間で変化させ、自動制御します(最高出力:272ps/5600rpm、最大トルク380Nm/1600-4800rpm)。
同エンジンは高速定常走行時には低燃費を実現する一方、アクセルペダルを踏み込めばディーゼルエンジンのような力強いトルクを発生、素早く加速するといった2面性を持ち合わせています。
渋滞時には燃費を重視して高圧縮比を維持。加速時など大トルクが必要時には過吸量を増やし、圧縮比を低くしてノッキングを抑制することで、より高出力や大トルクを発生。
「VCRエンジン」の研究は40年以上も前から行われていたものの、機構が複雑で実現へのハードルが非常に高く、これまで実用化された例は無いそうです。
構造としては、ピストンの支持機構と、その位置を変えるモーター機構に分けられ、「マルチリンク」と称する回転機構で構成。ピストンを支持するコンロッドを3本のリンクとモーターに換え、モーターでピストンの上下位置を動かして圧縮比を変化させます。
これにより、排気量3.5LのV6 NAエンジンに比べ、最大トルクが+10%、燃費性能が+27%向上しているそうで、日立オートモティブシステムズは同システムの中核となる「モーター」と「VCRアクチュエーター」を開発。日産との2人3脚で研究に15年、量産開発に6年を要したとのことです。
新聞報道などによると、日産は「VCR」技術を活用し、今後10年程度で熱効率が50%に達するエンジンの開発を目指しているそうで、今回公開されたシステムはそのベースになるものとみられます。
(Avanti Yasunori・画像:INFINITI、Hitachi-Automotive)
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