着々と力を蓄えてきた中国の自動車メーカーが、かつて遠い夢だった欧米市場への進出を目論むようになってきた。デザインや技術、販売方法の改善を通じて世界最大の自動車市場である本国でシェアを拡大した各社は、欧米でも戦えると自信を深めている。
「われわれ西側世界はあまりにも傲慢だ。自分の方が進んでいると思っているが、状況は変わるだろう」と語るのは、吉利汽車(ジーリー)(0175.HK)が設立した新たな自動車ブランド「リンク・アンド・カンパニー(Lynk & Co)」のアラン・ビサー上席バイスプレジデントだ。
「中国は、傲慢なわれわれの目には止まらないほどのスピードで追い抜こうとしている」と話した。
吉利はボルボ・カー・グループやロータスを傘下に収め、「ブラックキャブ」と呼ばれるロンドンのタクシーを製造。2019年には欧州、20年には米国での販売開始を狙っている。
先陣を切るのは、ボルボと共同でスウェーデンで設立したリンク。欧米での販売は、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車、電気自動車(EV)などの環境車に絞り、主に直営店やオンラインで売る方針だ。
広州汽車集団(601238.SS)の子会社であるGACモーターは、2019年末までの米国進出を視野に入れており、この市場では吉利に先んじるかもしれない。ただ、リンクと違って伝統的な流通網やフランチャイズ店を通じて販売する可能性が高い。
むろん道のりは険しいだろう。
JDパワー・アンド・アソシエーツのシニアディレクター、ジェフ・カイ氏は「米国のような市場で一番の障害になるのは、中国製品に対する消費者の偏見だ。わが社の調査によると、大半の米消費者は中国のことを粗悪品を作る第三世界の国だと思っている」と話した。
中国から米国への自動車輸出には、トランプ大統領が攻撃する中国の対米貿易黒字という問題も関わってくる。
<直接販売>
吉利傘下のリンクは、2019年後半にベルリンで、20年にはサンフランシスコで、それぞれ旗艦店をオープンする方針だ。
直接販売が許されていない米国のいくつかの州では登録制をとり、1カ月といった短い期間で車をレンタルする事業の計画を立てている。これはちょうど、動画配信のネットフリックス(NFLX.O)や音楽配信のスポティファイのような事業モデルだ。レンタル契約には保険や保証その他の恩恵が含まれる。
リンクのビサー氏は、伝統的な販売経路を通すとディーラーのマージンや値引きで売上高の約4分の1が失われると判断し、こうした新しいモデルを試してみたいと考えている。消費者に直接売ることで、「損失」の半分以上を取り返せるとの読みだ。
ビサー氏によると、取り返した分の一部は、自動車の価格を抑えることで顧客に還元する。また、欧米での販売台数は年間25万台を目指すと述べたが、時間的な目標は明示しなかった。
リンクが米国で直接販売に乗り出すと、強力なロビー団体である全米自動車ディーラー協会(NADA)と衝突する可能性がある。
ビサー氏は、NADAが「信じられないほどの影響力」を持っていると認めた上で、リンク車の修理や保守にはフランチャイズディーラーが当たることになりそうなため、最終的にはディーラーも直接販売モデルに納得するとの見方を示した。ディーラーはこうしたサービスで利益の大半を得ているという。
<「トランプチ」は変更へ>
GACモーターの関係者2人によると、同社は米北東部を手始めに海外でのプレゼンスを高めていく可能性がある。外国車に寛容で、GACが販売を計画するスポーツ用多目的車(SUV)の人気が高い土地柄だからだ。
米国販売第一弾は、中国で販売されているSUV「Trumpchi(トランプチ)GS8」になりそうだ。ただ、政治的な配慮から、名称は米市場向けに変更されるだろう。
GACの広報は「当社は米国の文化を尊重しており、現職の大統領の名前をブランド名に使うのは前例がないことを承知している」と話した。
https://jp.reuters.com/article/auto-china-analysis-idJPKBN1E908C
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Source: 新型車情報局