2018年4月18日に、新型CB1000Rの試乗会が開催され本誌からはメインテスターの丸山浩さんが参加した。雨の中の試乗となったが、それが功を奏して電子制御についてはその本領を確認することができた。まずはインプレ前編をお届けしよう。
目次
【はじめに】これは果たしてCBか?!
今まで私が思い描いているCBはCB900Fが強く、そこには2本サスのイメージがある。今でも人気のCB1300スーパーフォアも、昔ながらのCBのイメージを引きずっているだろう。今回新たにCB1000Rが出てきたが、私にとってのCBは1本サスのコンパクトなマシンではなく、まだ見慣れないというのが第一印象だった。
【ライポジ&足つき】スポーティで自由度が高い
跨ってみると、ネイキッドとしてはシートは高い方だろう。だが、両足の親指の付け根がちょうど着くという感じで、それなりに足つきはいいとも言える。タンク後方が絞り込まれているので足もまっすぐ降ろせるのもその要因だ。ステップは座っている位置よりは若干前方でネイキッドとしては少し高め。ステアリング位置は腰骨よりは少し上の位置でハンドル幅はタイトだ。フラットなバーハンドルは干絞りがついている。姿勢は少し前傾しているところがスポーティだ。ちなにみミラーの幅も横に出しすぎずタイトだが、後方の視認性は非常にいいと感じた。
マシンを起こした時の重量感や取り回しは軽い。車重は212㎏で、CB1300スーパーフォアよりかなり軽さ感が演出できている。実際に走ってみるとライディングポジションは、自由度が非常に高い。前に行ったり後ろに行ったり、インに体を傾けたり、リーンアウトぎみに走るなんてことも自在。フロントまわりが何もないのですっきりしていて、また走っている時に重量物感がないのが好印象だった。
【動力性能】意のままに操れる
今回は残念ながら雨の中の試乗だった。しかし雨の中だからこそ分かることがあった。エンジンは初代CBR1000RR系の速いエンジンを積んでるが、出力は145psまで落として扱いやすさを重視している。だが、レスポンスはものすごくいい。開けたら開けた分だけパワーが出てくる一方、開け始めは穏やかになっており、そこからグイーっと湧き上がるようなトルク感で、雨の中でも意のままに操ることができた。当然のようにトラコンなどがついて、これらで守られているだろう。それでも雨の中で開けて楽しいというエンジンはなかなかスゴイなと思える。
この楽しさは、現行CBR1000RRのエンジンからきていると思われる。現行CBR1000RRも競技をするためにというよりは、走らせて楽しいエンジンだった。もちろんCBR1000RRはサーキット、クローズドコースを走ってなんぼでもあるが、競技で競い合う以前にバイク単体でサーキットを走って意のままに操れるところが楽しいのだ。CB1000Rに関しては、ワインディングに回帰して意のままに操れるエンジンのフィーリングが楽しめる。エンジンが楽しませてくれるバイクが近ごろ少ない中、普通の直4でその楽しさを味わわせてくれていると思う。
【電子制御】クイックシフターが気持ちいい
今回もう一つ良かったと思うのは、電子制御のコントロールの素晴らしさだ。トラクションコントロールは3段階でエンジンブレーキコントロールもついている。スポーツモードの時はなるべくエンジンブレーキを利かさない。レインモードでは効かせるようにするといった形だ。そんなコントロールに加えてシフトアップ&ダウンをオートにできるクイックシフターもある。2017年、現行CBR1000RR SPに試乗した時に私は絶賛したがそれと全く同じ印象で、シフトアップ&ダウンが楽しくてしょうがない。ネイキッドの素の状態のマシンを楽しむ場合には、普通のマニュアルでクラッチを切りながらの方が楽しいだろうと思うのが覆るくらいクイックシフターが楽しい。
クラッチはスタートの時以外は握らない。ゆっくり街中を走っていてもパンパンッと入るし、かつワインディングのコーナー手前でパンパンンっとブリッピングして入っていくところなど、ものすごくいい感じでリズムがとれるのだ。従来は少しタイムラグがあってブリッピングが合わなくてリヤがクククッて引っ張られてしまうと半クラでごまかしたいなと思ってしまうが、CB1000Rは気持ちいブリッピングをしてきれいにリヤをホッピングさせずに走れるのだ。電子制御のコントロールが走りの楽しさをちゃんとリンクさせており、これからはクイックシフターやトラクションコントロール、ABSなどはやっぱり欲しくなってくるなという感じがした。それらをマッチングした上でさらにもっと次元の高い走りを楽しむ時代がやってきている。
【電子制御】楽しませてくれる器量のでかさ
CB1000Rの電子制御にはウイリー挙動緩和機能=ウイリーコントロールもある。今までのウイリーコントロールというのは、本当にウイリーをさせないというものばっかりだった。これが現行CBR1000RRの時には、ある程度のウイリーを許容しようという意向があって新鮮だったのだ。CB1000Rにしてもウイリー制御にハイ、ミドル、ローの3段階があって、一番介入のないローモードではちゃんと気持ちよくウイリーができる(クローズドコースにて確認)。その中でもきっちり制御をしていてこれが素晴らしかった。雨の中でグワッてアクセルをあけて本来絶対リヤが空転してしまう訳だが、雨のスリッピーな路面でクウッと浮いてそのままきれいにフロントを持ち上げて2速に入れていく。逆にトラコンオフというモードもあるので、オフにしてグワッて開けたらリヤが空転して終わってしまう。トラクションコントロールによって、雨の中ちゃんと路面をつかんでフロントアップに持っていくのだ。制御も楽しませるために一番きれいなコントロールをしており、電子制御の介入がまるでないように思わせておいて、でもきちっと介入していく。色々なものが余計な動きをしていないように見えて実はライダーを助けてくれているのだ。
【終わりに】私のCB論として
全体的に私のCB論からすると、私が思うCBにこれを加えていいかちょっと疑問だったが、走ってみるとただ単に速いだけではなくて、走る楽しさをすごく演出してくれるマシンとして私の大好きなCBの中にこの1台もぜひ加えてみたいと感じた。鉄フレームなのでサーキットを速く走ってみたら楽しいなと、そんな風にもイメージしてしまう。
撮影:柴田直行/ホンダモーターサイクルジャパン
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Source: WEBヤングマシン