アジアで最も人気の高いモータースポーツシリーズの一つ、SUPER GT(SGT)が今年も岡山で開幕。去年は、序盤を圧倒的な速さで制覇したレクサス勢が年間チャンピオンを獲得しました。今シーズンは、ニッサンGT-Rが王座を奪還するか?それとも熟成の進んだホンダNSX-GTの逆襲となるか?話題は尽きません。そんな中、元F1世界チャンピオンのジェンソン・バトン選手がホンダ陣営に加入。SGTはこれまで以上に盛り上がっています。
バトン選手と同じく、今シーズン「TEAM KUNIMITSU」に加わったのがZF。同社は2013年から「シリーズパートナー」(スポンサー)としてSGTへの参画を開始。翌年からは、GT500クラスのマシンにレーシングクラッチシステムの供給を開始しています。このクラッチは、「DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)」でメルセデス・ベンツ、BMW、アウディの全車両に使用されている実績が買われての採用となりました。
ZFと言えば、自動車ファンには「ザックス」ブランドの高性能ダンパーで知られていますが、クラッチやトランスミッションなどの駆動系コンポーネンツも市販車、モータースポーツ車両の両方に広く使用されています。F1のフェラーリ、トロ・ロッソ、ハース、フォース・インディアがZF製ダンパーを、レッドブルはZFのクラッチを今シーズン搭載しています。
また、ル・マン24時間を含むWEC(世界耐久選手権)、ダカールラリー、ニュルブルクリンク24時間レースや世界各国で開催されるポルシェ・カレラカップの車両にもZFの製品・技術が採用されています。
さらに次世代のモータースポーツ、「FIAフォーミュラE(FE)」。電気自動車で競うこのシリーズは、今年の12月に開幕する予定の第5(2018/2019)シーズンからニッサンがワークス体制での参戦を発表して日本でも話題となっています。このFEにもZFは積極的な参画をしています。
昨シーズンからは得意のショックアブソーバを含む、サスペンション技術の提供を複数のチームに対して開始しました。昨年12月に香港で開幕した「第4シーズン」からは、テクニカルパートナーである「ヴェンチュリー・フォーミュラEチーム」に新開発のトランスミッションの供給も始めました。さらに、電気モーター、インバータ、トランスミッションを一体化した全く新しいドライブラインの開発も行っており2018年第4四半期に開幕予定の「第5シーズン」からの投入を計画しています。
このようにZFが世界中の様々なカテゴリーでモータースポーツに参画するのは、乗用車や大型商用車に使用される同社の自動車用製品・技術の革新性と信頼性を継続的に向上させるのを目的としています。FEに投入されるZFのEモビリティ(電動化)技術は、ポルシェやBMWに採用されているプラグインハイブリッド(PHV)車両用システムから得られたノウハウも活用されています。
また、新世代の電気自動車用モジュール「eVD2」も昨年末に量産が開始されるなど、電動化に関してもモータースポーツ、市販車両分野で積極的な活動が見られます。
ドイツを中心に、ディーゼルエンジンからPHVやマイルドハイブリッドを含む電動化にシフトが進む自動車のパワートレイン。その他、自動運転につながる先進運転支援システム(ADAS)など、クルマは次の世代に向けて加速しています。それに伴いモータースポーツもFEやWECのハイブリッドマシンに見られる電動化や燃料の流量制限、自律走行レーシングカーによる「ロボレース」など、大きな変革の時を迎えています。
伝統的な機械機構から先進的な技術まで、自動車向けに幅広いシステムを供給するZFは、モータースポーツの分野でもこれまで以上に積極的な取り組みを行っていきます。SGT開幕戦ではさっそく、バトン選手と山本尚貴選手が2位に入賞し観客を大いに沸かせてくれました。今シーズンは、母国ドイツだけでなく、日本のサーキットでもZFが、レースをこれまで以上に盛り上げてくれそうです。
(Toru ISHIKAWA)
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Source: clicccar.comクリッカー