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HKSソアラC240の開発コンセプトは「純正」。その意味とは? その6【OPTION 1984年12月号より】

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その1からその5で、HKSスーパーソアラ「C240」極限耐久テストの記事を様々な視点からプレイバックしてきました。この時代にオーバー240km/hでの連続走行がいかに大変なことだったのか、お分かりいただけたかと思います。

今回のその6では、C240の開発コンセプトをプレイバック。No.1チューニングパーツメーカー・HKSの新たなる挑戦、その中身に迫ってみましょう。

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スーパーソアラC240
240km/hクルージングを可能とするHKSコンセプトカー
そのニューコンセプトを解析する!
「アルピナ純正スポイラーとか純正ホイール」とかいう言葉を聞く。HKSスーパーソアラC240はそんなコンセプトから誕生したクルマである。

【コンセプトは「純正」】

これまでストリート用チューニングキットやドレスアップキットは数多く発売されてきた。しかし、それらのパーツはいずれも付加的改造パーツとしての発想から商品開発が行われてきている。ところが、HKSはそれらの発想を根底からくつがえした。

ヨーロッパにはカロッツェリアがある。カロッツェリアはメーカーのラインから生まれるクルマを独自にモディファイし、完成車はオリジナルのニューカーとする。

例えば、フィアット車のフィアット500にアバルトが独自のエンジンとボディパーツを付けると、そのクルマはフィアット500からアセットコルサTC650になってしまう。アルピナもしかり。BMW323のエンジン、ボディなどチューンしたらアルピナC1に変化する。そのアルピナ社は現在ではメーカー的存在にまで成長している。

ヨーロッパでのカロッツェリアの中には、ディーラーも含まれている。例えばボーゼ社。BMWのディーラーだが、客に売るときはボーゼチューンが施されているというものだ。

日本のHKSの目指すところは、チューナーからスペシャル・カーメーカーへの方向である。つまり、メーカー純正の姿を超えてのクルマを仕上げるのだ。ソアラを超えたニューソアラ=新車というわけだ。

すでに4気筒DOHC4バルブという自社製エンジンまで製作しているHKSである。チューナーの域はとっくに超えて、メーカーへの道を現実に歩み出している。

【「純正」を主張する耐久テスト】

「純正」という言葉に拘るのなら、誰から見ても純正らしくなければイケない。レーシングカーではないのだから、一般乗用車に要求される要素は全て持っていなければイケない。つまりトラブルが無く、乗り心地が良く……。そしてHKSはC240を、240km/h巡航カーとしてのレベルで純正の位置付けをしようとしている。結果は、ミッショントラブルが発生して幕を閉じたわけだ。

しかし、この高速耐久性は従来のチューンドカーのレベルとは別物だ。しかもHKSがチューニングしたパーツは、全てトラブルが発生しなかったということは特筆に値するだろう。では、各部にどんなチューニングがされたのか見ていこう。

【400psオーバーも可能なパワーユニット】

コンプリートカーとして日本最速を目指すなら、なんといっても強力なパワーソースを持たなければダメだ。

そこで使われたのは、5M-GEUをベースに3Lにチューンし、ツインターボを装着するという手段。しかも燃料系はマニアックにキャブレターに変更されている。300km/hオーバーしたM300とパワーソースを同一にする。

だが耐久性を考えてチャージ圧を抑え、250km/h巡航レベルにディチューンしてあるのだ。その点、325psのパワーユニットにとってゆとりのパワーといっていい。

パワーを強化した場合、サスペンション、タイヤ、ブレーキのチューニングはストリートにとって不可欠! 最も重要視したいパーツでもある。

まず、サスペンションはダンパーとスプリングのデータを変更してのチューンが行われている。例えばダンパーでは、ピストンスピードで0.8m/sec以上になった時に急激に減衰力が増加するというように設定。つまりコーナリングでGを強烈に感じるようなときに、その能力を発揮するようにしてあるわけだ。だから0.8m/sec以下、つまり通常運転のときにはトヨタ純正のダンパーと大差なく、乗り心地も変わらないように感じるのだ。その差はハードランで!ということになる。

タイヤも文句なしに重要だ。パーツに見合った高性能が要求される。250km/hで何時間も巡航するのだから、ハンパは許されない。それなりのパフォーマンスを持たなければ危険である。

その答えをHKSは、ヨコハマのアドバンA-008で解答した。このタイヤはヨーロッパ向けのもので国内販売されていないが、間もなく販売するという噂はある。基本的にはアドバンHF-Dと同じトレッドパターンを持っているが、中身は全く違うらしい。

ブレーキのチューンでは、ディスクパッドの変更で対処している。ノーマルで4輪ディスク、しかもベンチレーテッドという高級なものが付いているからだ。だからデータ的にはパッド交換というレベルで十分なのだ。が、さらにチューンすることも難しくない。望めば、ディスク径の拡大とか、キャリーパーのツイン化とか……。

【魅力的なエアロチューン】

次はボディ。つまりドレスアップ&エアロチューンである。

ボディの外装。つまりスタイリングは、クルマを購入するうえで大きなウェイトを占めている。そのためにソアラの魅力を活かしながら、さらにカッコよくするという考え方がエアロチューンには多い。C240も例外ではない。

しかし大きく違うのは、本来の目的である空力に本気で取り組んだことだ。240km/hカーとしてスタイリングばかりに気を取られては話にならない。

そこで1/5モックアップモデルを製作して幾度も風洞実験を重ねてスタイリッシュに仕上げながら、高い空力効果を狙ったのだ。

魅力的なオーバーフェンダーも、そうして作られている。これは最近の高性能ヨーロッパ車がそうであるように、空力的には何らドラッグを発生しない形状なのだ。かつてのオーバーフェンダーはボディサイドの空気を乱してしまったが、この形ならOKというわけ。

サイドステップも同じだ、本来は下面やボディサイドの空気の流れを整流するものだが、その目的を達成させるには、この程度の大きさではダメ。スーパーシルエットのそれになるという。が、それではストリートでは使えない。だからドレスアップ効果が主眼だ。

しかし、ここで注目したいのは、このサイドステップはドラッグになっていないということ。アフターマーケットのサイドステップにはCL(揚力係数 f:前/r:後)値に悪影響を与えているものが少なくないのだ。

そしてフロントスポイラー。これは谷田部の空洞実験により決定された。なんと、今、メーカーがその低減に血道をあげている空気抵抗係数Cdが0.38→0.41と大きくなっているが、揚力となるCLf値は0.18→-0.34と大幅に向上しているのだ。

わずかなCd値の差はHKSでは軽視する。空気抵抗がどうのこうのという前に、高速でも不安なくアクセルが踏める安定性が必要だからだ。パワーがあっても、ボディが浮いて危なっかしいのでは失格だ。CLf値は素晴らしく向上している。これはフロントの揚力を抑え、タイヤの接地性を向上させていることになる。俗にいう「高速になるほど路面に吸い付く感じ」といえば分かってもらえるだろう。

Aピラーからフェンダーにかけてのスポイラーも面白い。が、単なるドレスアップではない。コーナリング時、直進時にリヤトラクションを増大する効果があるのだ。これはスーパーシルエットカーにも採用されている。このスポイラーはフロント&リヤのダウンフォース効果を高めることができ、旋回性能、直進性脳に貢献するのだ。

リヤウイング。これはAピラーのスポイラー効果をより効果的にさせるもので、リヤのダウンフォースが強化されていることは、風洞実験写真を見てもらえば分かるだろう。そして風洞実験ではCd値の変化はなく、CLr値がマイナス0.1からマイナス0.21へ向上している。

これらのエアロチューンはCL値をトータル80%あまり向上させている。トヨタ・ソアラとは比較にならないほど直進性、旋回性、操安性は向上している。

このようにC240は、エンジン、足まわり、ボディとトータルにチューニングされ、ハイレベルでバランスのとれたコンプリートカー「純正」として生み出された新車なのだ。

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純正を超えるHKSコンプリートを目指しての、C240開発! その開発能力も開発費用も大メーカーならではのチカラ、なのでしょう。その後のBNR32ベースのZERO-Rへと続く開発コンセプトでした。感服です!

[OPTION 1984年12月号より]

(Play Back The OPTION by 永光やすの)











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Source: clicccar.comクリッカー

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