2017年12月にマイナーチェンジをしたV37スカイライン。シャシーに関してのアップデートはありませんが、ハンドリング、乗り心地、ノイズ、振動といった動性能はどういったレベルなのか、レビューしていきます。
搭載エンジンは、直列4気筒DOHC 2.0リッター直噴ターボエンジン。実はこのエンジンはダイムラー製、つまりメルセデス・ベンツと同じです。ルノー・日産およびダイムラーの業務提携に基づき実現したもので、エンジンが供給されています。
基本的には「E 250」で採用されるものと同様であり、最高出力/最大トルクは200GT-tおよびE 250ともに155kW(211PS)/350Nm(35.7kgm)と同等。また、JC08モード燃費はE 250が15.5km/Lですが、200GT-tでは13.6km/L(Type SP/Type Pは13.0km/L)と、日産の方が控え目な値です。
全長×全幅×全高=4800×1820×1450mm、ホイールベース:2850mm、エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ、トランスミッション:7AT、車重:1680kg、駆動方式:FR、トランスミッション:7AT、タイヤ:(前後)225/55RF17、JC08燃費:13.0km/リッター(JC08モード)、価格:456万8400円/テスト車=476万7336円。
ちなみに、一世代前のV36スカイラインType Pの価格は、388万5千円でしたので、トップグレードの3.5Lではないベースモデルの価格が、約70万円も高くなったことになります。当然、エンジンがダイムラー製になったことが価格アップの主要因と考えられますので、エンジン性能には期待がかかります。
<加速感とサウンド>
ハンドルの左後ろにあるスタートボタンを押し、エンジン始動すると、ブルンという大きめの始動時ショックと、若干うるさく感じるカラカラとしたアイドル音が入ってきます。「ああ、これがダイムラーの直4なのか」と改めて感じさせられます。
アイドルストップ→始動のたびに聞こえるカラカラした音と始動時のショックは、高級車のエンジンという印象は若干スポイルされています。同じエンジンを搭載するメルセデスベンツを外から聞くと、同様のカラカラ音が聞こえますので、きっとこれがこのエンジン特有の基準音質なのでしょうが、燃費重視の実用的なダウンサイジングエンジンというものを、強く感じさせるものでした。
さて、走り出しの緩加速シーン、アクセルペダルの踏み込み始めは、スーッとクルマが前へ出る印象ですが、ガーガーという音を伴って加速をします。続いて、一定速走行(約50km/h)からの加速シーンでは、若干アクセルに対する加速開始のもたつきを感じます。アクセルを踏み、エンジン回転が2000rpm近くまで高まれば、トルクが一気に湧き出て加速していくのですが、V6+HEVのような、踏み込み始めから潤沢にトルクが出て加速していく様には感じられず、決して速いエンジンとは言えないように感じました。
ただし、高速走行(約90km/h)からの加速シーンで、キックダウンを使っての加速ではもたつきを感じることなく加速します。ただ、その加速音質が、高級車には似つかわしくない、ガサツな印象を受けました。日産のV6エンジンが放っていた、「ガオーン」いう迫力のある音質が無くなってしまったのだなと、少し残念に思います。
<ハンドリングと乗り心地>
ハンドリング性能をサーキットで試す、ということはできませんでしたが、交差点や一般道の山道のワインディング、高速道路でのレーンチェンジ、どこでも思い通りにクイクイと曲がります。
もちろん、ダイレクトアダプティブステアリングによる効果と同時に、車両のロールを抑えた、やや硬めのサスペンションセッティングが効いていると感じました。操舵力は軽めで、このカテゴリの高級車のトレンド(BMW3、5やベンツCクラス等は軒並み軽め)通りといえます。
10km/h以下の低速でのハンドルからの反力は弱いですが、車速が高いと操舵力は適度に重たくなり、ハンドルの中央の位置決めがしっかりとする印象を受けました。このおかげで、ハンドルを握る力を多少抜いた操縦をしていても直進性が良く、「楽」に感じます。この直進性の良さは、V37スカイラインの魅力の一つと言えます。
サスペンションは、前:ダブルウィッシュボーン式、後:マルチリンク式を採用。フロントサスはV36型スカイラインからの踏襲ですが、リアサスペンションは、フーガやシーマに使われている高級マルチリンクを採用し、より高級でスポーティな乗り心地を目指し、スカイラインに合わせたリファインが施されています。
そのサスペンションの効能か、首都高速60km/h走行時の路面の継ぎ目のような、単発のショックが入る突起路面では、当たった際のショックは低く、角が丸い衝撃になっていました。しかし、50km/h程度の中低速でやや粗い路面を走ると、上屋が揺すられることなくなめらかにスーッと通過してほしい期待に反して、上屋がバタバタと跳ね上げられる印象がありました。
対して、東名高速道路100km/hの様な追い越し車線で直面する大きなうねりのシーンでは、上屋がフワつくような上下動は小さく、安心できました。この両端のシーンの両方をクリアするには、上屋のバタつきを抑える柔軟さと、余計な上下動の抑制という、背反性能を両立する必要があります。そのうえで、Type Pはフワつきを抑えた硬めのセッティングに振っている様です。
<ロードノイズ>
サーというノイズレベルは下がり、V36に対しては明らかに静かになりました。日産の中では、新型リーフに次ぐノイズの低さと感じます。相当静かになりましたので、長距離移動でも快適に移動ができると考えられます。ただし、BMWやベンツ、レクサスなどの競合車は、同等以下のノイズレベルであり、キャッチアップがまだできていない段階だと感じます。
ロードノイズを下げるには、タイヤ、サスペンション、車体剛性(固有値配列)など、多岐の対策が必要になり、一日二日の開発では改善しません。ハンドリングや乗り心地の性能に跳ね返りないよう、根気強く、設計していく必要があると感じます。
またエンジン音に関しては、冒頭にも述べた通り「ガーガー」という加速サウンドが盛大に鳴る残念な音質です。1世代前のV36スカイラインType Pに乗っている筆者としては、日産製V6 2.5Lの加速サウンドの方がはるかによく感じます。推測ですが、ダイムラーから購入したパワーユニットをそのまま積んでいるわけではないはず。サウンドチューニングが適切になされているのか、それともこの音質で良いとメーカー側が判断したのか、疑問が残ります。
ベンツが同じエンジンを積んでいるから平気、同じ音質をしているから良い、というベンチマーク視点だと、特に乗り換え目的のお客様の期待を裏切ることにもなります。スカイラインを買うという判断をするお客様へ、日産らしさ、日産サウンドとはこれだ、という「こだわり」を持っていただきたかった点です。
V37スカイラインType Pは、「快適に運転できるクルマ」です。それは「きちんとまっすぐに走る」という、プレミアムカーとして外してはいけない「当たり前の性能」を満たしているからです。「音質」に関してはネガティブな印象を書かせていただきましたが、スカイラインファンだからこその愛情ということで、改善を望んでやみません。
(吉川賢一)
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https://clicccar.com/2018/03/08/564217/
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Source: clicccar.comクリッカー