筆者は旅行は好きだけど旅行の準備が苦手。子どもの頃から忘れ物が多く、クラスの壁に貼られていた「忘れ物をするとマスが塗られる」棒グラフが紙からはみ出るほどダントツ1位でした。自覚があるので前日から何度も確認するにも関わらず、ケータイは持ったけど充電器を忘れたり、カメラにメモリーカードが入ってなかったり、靴下を忘れたり…未だに治りません。
しかし現在、キャンピングカーに住みながら旅をしていれば忘れ物をしてもすぐ取りに帰れるという安心感があり、忘れ物へのプレッシャーがずいぶん軽減しました。何でも手に届くところにある、「走る万年床」と呼んでいます(笑)
この【キャンピングカー生活の日常】シリーズでは、筆者のキャンピングカー生活についてお伝えしてきましたが、愛車Rocky21を基準に書いているので、これからキャンピングカー購入を考えている方々にとっては、あまり参考にならなかった部分もあると思います。
Rocky21はフォード E-350の〝クラスC〟がベース。車幅も車高も長さも4トン車並みの大きさで、日本の道路事情にはあまり合っていません。では、何故このキャンピングカーにしたのか?、それは親の代まで遡ります。
Rocky21は20年前に両親が購入しました。父は若い頃からアウトドアが好きで、30年以上前に中古車を購入して自分でキャンピングカーを造ったこともあり、定年退職したらキャンピングカーで日本一周することが夢でした。それまでずっと何年も、キャンピングカー購入に向けて専門誌を読みあさったり、キャンピングカーショーにも九州から仙台まで足を運んでいました(その頃、筆者は東京で一人暮らしをしていました)。
母は持病があったため、将来、車椅子になったとしてもそのまま乗り降りできる大きさがいいということで、最終的にRocky21を選んだそうです。両親とも、その年代としては長身(165〜175cmくらい)なので「車内で立ち上がっても圧迫感がない」「ベッドに余裕がある」というのも決め手となりました。特にダイニング(展開するとベッドになる)が2つついているので、1つを常設ベッドにしておけば母はいつでもすぐに休むことができます。父は、もっとも長いバンクベッドでゆったり寝られます。
その後、日本一周を2回ほど楽しむことはできましたが、母が入退院を繰り返したり父がヘルニアの手術をしたりということがあり、キャンピングカーはすっかり車庫の花と化し、もう手放すか…という段階で「じゃあ、わたしが乗る」と筆者がしゃしゃり出たのです。キャンピングカーを手放したくない父の感情を逆手にとったかっこうで、完全な乗っ取りです。
それまで実家のクルマやレンタカーくらいしか運転したことがなかったので、まずは練習から。幅、高さなど車両感覚を掴むのが大変で、バックアイカメラも初めてだったので慣れるまで苦労したことを覚えています。あの緊張は、自動車学校以来でした。キャンピングカー生活をはじめて以降も、高架下に屋根をぶつけたり色々ありましたが、それはまたの機会に…。
【ポイントその1・目的を明確にイメージする】
キャンピングカー生活って、意外と面倒で大変なことが多いなと思われた方もいらっしゃるでしょう。「生活」は大げさだとして、週末や大型連休を利用した旅行であれば、キャンピングカーはたいへん便利です。新幹線や飛行機のチケット、ホテルなどの予約が要らず、スケジュール変更にも臨機応変に対応できます。ペットと一緒に旅行したいがためにキャンピングカーを購入した方も多いです。
自分がキャンピングカーを持ったとしたら、どんなシーンがもっとも多くなるだろうか? 「温泉めぐりがしたい」「登山がしたい」など具体的な目的を思い浮かべてみます。一人なのか、夫婦、家族でなのか。人数が多くなれば趣味・嗜好、生活パターンなど個人差があり、キャンピングカーの仕様も要る/要らない部分が複雑に絡んできます。
また、最初は大きいと思っていても、子どもの成長とともに手狭に感じたりもするでしょう。数年で買い替えることを前提とするか、長く乗り続けるか、それによっても選びようが変わってきます。
【ポイントその2・キャンピングカーの大きさ】
土地が有り余る田舎ならまだしも、都心部や住宅街にお住まいであれば駐車場の確保は一大事です。筆者も東京に住んでいた時期がありますが、駐車場代が高すぎて「ここにキャンピングカーを置いて住んだらダメなんだろうか」などと考えたりしました。
しかもクルマ通勤している場合はキャンピングカーと普通車の2台持ちとなってしまいますが、駐車場の確保や税金などの経済的理由で、2x5m以下のキャンピングカーのみ所有するという選択肢もあります。このサイズであれば通勤や買い物にも行きやすいですし、女性キャンパーさんが運転しているのはほとんどがコンパクトなキャンピングカーです。
キャンピングカーの大きさが重要になる点として、旅先での有料駐車場も忘れてはなりません。コインパーキングはもちろん、有名観光地などの有料駐車場では、キャンピングカーの大きさによっては大型車(観光バスと同等)に割り当てられます。どう判断されるかは駐車場の管理者によって様々で、土日祝日などは厳しくなりますし、さらには受け付けている「人」によっても変わってしまう場合もあります(こういう時はムキになって反発せず、管理者の要求に従う姿勢を見せた方が無難です)。
失念しがちなのがフェリー乗船料です。フェリーの往復割引やWEB割引、キャンペーン割引などは<5mまたは6m未満>が条件であることが多く、料金にかなりの差が生じます。
例えば津軽海峡フェリーの【海割ドライブ】キャンペーンは、函館⇔青森間が片道14,800円と破格です! が、これも<車長6m未満>が条件。Rocky21は全長6.7mなので対象外。正規の運賃は、なんと32,990円! 倍以上にもなってしまいます(2018年2月現在)。これを往復、そして毎年のように費やすとなると、長い目で見れば大きいです。
【ポイントその3・キャンピングカーユーザーとの交流】
筆者は機械オンチでクルマのことはまったくの無知でした。キャンピングカー生活をはじめてから強制的に学んだことばかりで、未だに知らないことだらけです。キャンピングカーそれぞれの特性、というのもキャンピングカー仲間の体験談を聞いてはじめて意識したくらいです。
あくまでも筆者のイメージですが、アメ車は「豪快で頑丈」というイメージで、ズボラな筆者には合っているんだろうなと思ってます。その代わり「気が回っていない」部分も多く、ヨーロピアンのような洗練された機能美や国産車のような柔軟性は持ち合わせていない気がします。
ただ、同じアメ車でもRocky21がカナダ製だったことは助かりました。しっかりと断熱材が入っているので結露しにくいのです。高温多湿の日本において、断熱材は欠かせません。
どの世界でも一長一短があり、その「足りている部分と足りない部分」に自分がどうハマるか、例えばアメ車キャンピングカー乗りの方々は、手がかかるアメ車ほど可愛いと思っているような感じで、長所ばかりを見るのではなくどこまで短所を許せるのかもキャンピングカー選びのポイントかなと思います。
どのキャンピングカーが自分に合っているか、それはディーラーさんでも答えづらい難問です。キャンピングカーを何台も乗り継いでいるヘビーユーザーや、経験豊富な熟練キャンパーさんの助言がもっとも参考になるかと思いますので、キャンピングカーショーや各キャンピングカークラブのオフ会などに参加されて、交流を図ってみてください。わたし自身、キャンピングカークラブの諸先輩方に教えていただいたことが大いに役立っています。
ただ、最後の決定打は〝人〟だと思います。ビルダーやディーラー、営業マンの人柄、アフターフォローをしているか、お客さん(ユーザー)の評判をなるべくたくさん聞き入れて、自分でも実際に店舗に足を運ぶなどして〝人〟を見ることです。どんなに素晴らしい技術や知識を持っていたとしても、自分の経験としては人柄をおろそかにしていいことはひとつもなかったです。
仕事としてキャンピングカー業界に携わっていて、なおかつ自身がキャンピングカーユーザーである方は多いです。なかなか正面きってデメリットな話はできなくとも、その方自身がキャンピングカーライフを楽しんでいたならば信憑性があると言えるのではないでしょうか。
Rocky21は大阪のディーラーさんで購入し、社長自らが運転して熊本まで届けてくれました。それから約10年後、そのディーラーさんを尋ねたら覚えていてくれて、主催のキャンプ大会にも参加しました。アットホームな雰囲気で社員さんたちも楽しく仕事をしていると感じ、「ここで買ってよかった」と思いました。
キャンピングカーのレンタルをしてみるのも手ですね。まず試乗してみると、より具体的にイメージできるのではないでしょうか。
ちなみに今は父を乗せて小旅行にでかけたりしています。母も愛犬も亡くなりましたが、楽しい思い出がたくさん詰まっているキャンピングカーRocky21、これからも大切に乗り続けたいです。
(松本しう周己)
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