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国際ドリフト杯は人間が審査! これからのドリフトの審査方法を考える【FIA IDC】

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11月最初の週末、D1GP最終戦とFIA国際ドリフティング杯(FIA IDC)が東京・お台場の特設コースで、2日連続で行われました。同じ会場で開催しつつ、コースはレイアウトを変えて行い、また審査方法も異なるものになりました。

特に、D1GPはいつも通り機械審査システム「DOSS」を使って単走の審査をしたのに対し、昨年は同様にDOSSを使っていたIDCは、今年はDOSSを使わず、人間主体の審査になりました。ここから両者の比較とこれからのドリフト審査の姿を考察してみたいと思います。

まずDOSSについて解説しましょう。以前は(またD1GP以外の多くの大会では)日本のドリフト大会では単走競技は人間が100点満点法で採点していました。しかし、人間が採点する以上、どうしても採点のブレ(不正確)や贔屓(不公平)が問題になってきました。

特にエントラントが多額の予算を使って参戦しているD1GPではシビアな審査が要求されるため、それを解消する方法として、機械審査システム「DOSS」が開発されました。

DOSSは、車両に搭載したGPSや角速度センサーを使って、最高速度、区間平均速度、振り出しや振り返しの際の姿勢変化の速さ、ドリフト中の姿勢の安定性といった項目を計測します。そして、それらの計測値を、従来の人間の100点満点法の感覚に合うように独自のアルゴリズムで計算し、得点を算出しています。

これはこれで一定の成果を上げていて、エントラントから採点のブレや贔屓が問題にされるようなことはなくなりました。

いっぽう、今年のFIA IDCはこのDOSSを使わずに、人間の審判員を使った方法で単走の審査を行いました。車速の計測だけはDOSSを使ったのですが、その割合は得点のうち100点満点のうち10点分だけで、使われた計算式も通常のDOSSよりずっと単純なものでした。

FIAとしては正確性や公平性という観点から、機械審査自体には賛成のようです。しかし、ドリフトをもっと世界的に普及させたいなかで、DOSSはシステム的に各国どこの大会でも採用するにはハードルが高すぎる、という理由と、今回は人間の審査でもできることを見せたかったため、DOSSは使わず、人間の審査で競技を行うことにしたそうです。

とはいえ、FIA IDCで行われた人間による審査方法は、日本で一般的に行われている審査員ひとりひとりが100点法で行う採点とはちがいました。

むしろアメリカを中心に開催されているFormula-Dの採点方法に近いものでした。それは、3人の審査員のうち、ひとりはラインのみを見る「ライン担当」、ひとりは角度のみを見る「角度担当」、もうひとりは、振りの鋭さや姿勢の安定性を見る「スタイル担当」という分業制をとるものです。

3人の持ち点は30点ずつ。それに機械で測定した「車速」のぶんの10点を加えて100点法としました。車速の項目が入っていること以外はFormula-Dを見慣れているひとにはおなじみの採点方法でしょう。下の写真が今回の審査員。左が「スタイル」担当のロシアのディーマ、中央が「ライン」担当のアメリカのライアン、そして右が「角度」担当の日本の神本サンです。

というわけで、2日連続で行われたドリフト競技は、まったくちがう方法によって単走の審査が行われたのです。しかし特にちがうのは、機械か人間かということではないかもしれません。いちばんのちがいは、「ライン審査」があるかどうかです。

以前はD1GPもラインが審査項目に入っていました。しかし、DOSSを導入したときに、「速く、角度をつけて、安定した状態で走れるならばラインはどこを通ってもいいんじゃないか」という考えかたから、ライン審査は廃止されました(ただしコースアウトはD1でも減点されます)。

というわけで、D1GPとFIA IDCでは、まずライン審査の有無がちがったわけですが、見た感じの感想をいえば、やっぱりFIA IDCの審査のようにライン指定はあったほうがいいかな。コンクリートウォールに寄せれば「ウォー!」って思うし、クリッピングポイントをなめていけば「上手い!」って感じがするし。見た目にわかりやすいですよね。

それに、もはや世界的にドリフト競技ではライン指定があることが標準的になっているようなので、それならもう日本もそれに合わせたほうがいい。ちなみに下の写真のオレンジと白の棒が、寄せるべきポイントです。

ほかの項目についてはどうでしょうか? DOSS審査では、角度、速度といった要素ごとの得点は表示されません。コースを5つに区切ったセクターごとの点数が出るんですね。だから、表示されたスコアは「第○セクターはよかったけど、第□セクターは落とした」というような見方になります。

それに対して、FIA IDC方式のスコアは「ライン」「角度」「スタイル」といった要素ごとの得点が出ます。「ラインはいまいちだったけど、角度はあったね」という見方になるわけです。ただし、角度が大きくついていたコーナーとそうでないコーナーがあったとしても、そういうことはわかりません。

どっちがいいでしょうか? うーん……ひとによるかもしれないけど、個人的にはこれもFIA IDC方式かな。

DOSSの場合、まずセクター別の点を見ても「第○セクターってどこだっけ?」というところから思い出さないといけないので、瞬時には把握しにくい。しかも、セクターごとの点数配分もちがうので、そこを把握しておかないと、出来不出来が直感的にわかりにくい。ちょっとマニアックすぎる気がします。

それとDOSSのスコアのもうひとつの大きな問題は、各セクターの得点も小数点以下2桁まで表示されているので、ごちゃごちゃしていて、非常にわかりづらいことです。「ライン」とか「角度」とか直感的に分かる要素が表示されていて、しかも各項目が整数2桁までの得点となるFIA IDCのほうが、瞬間的にははるかにわかりやすい。

ただし、最高速の数値は、DOSSでは表示されるけどFIA IDC方式では表示されませんでした。これはあったほうがいいですね。盛り上がる大きな要素ですから。

というわけで、ライン指定があるとか、審査の項目別表示がわかりやすいってことで、なんかFIA IDCの単走の審査方法のほうがよかったなぁ、というのが個人的な感想でした。

でも、大きな問題も感じました、やっぱりFIA IDCの人間審査のほうは「後半にかけてだんだん点数が甘くなってきているんじゃないか?」という疑念がわいたのです。いわゆる審査基準の「ブレ」ですね。

明確な根拠はないですが、後から調べたら、上位5人がすべてBまたはCグループで走行した選手なので、やっぱり多少そういう傾向はあったんじゃないかな。心理的に最初から高得点ってつけづらいんですよね。

よく考えてみれば、「角度」とか「スタイル」って、DOSSでも採点できる要素なんですよ。じゃあ機械で計測させたほうが、ブレや贔屓が出なくていいじゃん。というわけで、なんとなく思い描く審査のスタイルとしては、ライン指定あり(これは人間が審査)、角度と速度とスタイルは機械が審査、二度振りとか振り出し時の戻りといったDOSSが苦手な部分は人間が審査、という機械と人間のミックスがいいんじゃないかな。

それから、得点表示はFIA IDCのように、できれば整数だけがいいですね。採点の明細は、セクター別ではなく「角度」とか「ライン」といった要素別のほうが納得しやすい気がします。ホントは数値だけじゃなくて、バーグラフとかも出てくれると、もっとわかりやすいなー。

私はそんなふうに感じましたが、FIA IDCを見られたかたはどう思ったでしょうか?

なお、このFIA IDC、ロシアのゴーチャ選手が優勝、2位はスイスのメイエー選手、3位はタイのエス選手と、表彰台は海外の選手が独占し、世界的なレベルの向上が表れた結果になりました。

日本勢は横井選手が練習走行でのクラッシュの影響が響いて単走で敗退。昨年の勝者・川畑選手はマシントラブルのためベスト8敗退。藤野選手はベスト8で、末永(直)選手は準決勝での敗退となりました。下の写真は、左から2位のメイエー選手、優勝のゴーチャ選手、3位のエス選手です。

それにしても、参加選手がコースに慣れるにつれてアグレッシブな走りを見せるようになっていったのは圧巻でした。ロシア人と思われるグループのゴーチャ選手への声援も大きくて、印象に残りました。国際大会は面白いですね。

(まめ蔵/写真提供:サンプロス)

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Source: clicccar.comクリッカー

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