日本が生んだ伝説の名車たちを紹介する新シリーズ。国産市販バイクが世界の頂点に上り詰めた昭和44年(1969年)から現代に至る50年の間に登場した”エポックメイキングなロードスポーツ”をテーマににお届けします。本稿は、昭和57~59年(1982~1984)”空冷から水冷へ”編。
目次
空冷最速決戦は1100㏄でピークを迎え、水冷+カウリングの時代へ
’80年代の名車といってイメージしやすいのはこの年代だろう。カタナ、ニンジャ、センヒャクアールなどの合言葉は、同時代を過ごしたバイクブーマーたちにとって特別な響きを持っている。世界一のバイクを作るという日本メーカーの目標が果たされたのち、さらなる高性能競争に突入していって’80年代中盤を迎える頃、空冷エンジンでの性能追求に見切りをつけた4メーカーは、次の一手を矢継ぎ早に打っていくことになる。そうして生まれたニンジャのエンジンは、つい最近まで生き残っていたし、ホンダがこの頃に開発したV4エンジンは今でもホンダのレーシングエンジンの代名詞になっている。昭和57年は映画「セーラー服と機関銃」などがヒット。大長編ドラえもんは「のび太の大魔境」だった。昭和59年には国内初の衛星放送がはじまっている。
衝撃のデザイン革命:GSX1100S KATANA
’80年のケルンショーで披露された1台の試作車が世界を驚愕させた。日本刀や武士道をイメージした先鋭的なGSX1100Sカタナは「ケルンの衝撃」と呼ばれるインパクトを与えたのだ。その後1年足らずで、プロトタイプに忠実な市販版が登場。瞬く間に大ヒットを飛ばした。デザインを担当したのは、BMWから独立したデザイナー、ハンス・ムートらが所属するターゲットデザイン社。外装はデザインのみならず空力性能をも追求しており、当時最強クラスとなる111psのハイパワーと相まって、“世界最速”の称号を得た。心臓は、SX1100Eベースの空冷直4。これを鉄ダブルクレードル+アルミスイングアームの車体に搭載する。
国内仕様は殿様乗りを強いられたが…:GSX750S
こちらは耕運機ハンドル装着やスクリーンなしなどで独特のスタイルになった国内仕様。排気量も747ccとなっている。これにセパハンを装着して走るのが流行し、それが違法行為として取り締まられ、通称「カタナ狩り」と呼ばれたりもした。
超弩級のホモロゲマシン:CB1100R[RC]
市販車レースで勝つために開発された、公認取得用のホモロゲーションモデル。CB900Fをベースにボアのみの拡大で1062ccとし、ハイカムや鍛造ピストンも投入した。車体は専用の高剛性フレームを与え、アルミタンクにFRPカウル、シングルシートなど豪華装備を獲得。当時価格は驚愕の250万円で、ホンダの旗艦に君臨した。
AMAスーパーバイクの熱狂:KZ1000R
’70~80年代に熱狂的な人気を誇ったAMAスーパーバイク。’81年の王座は、Z1000Jを駆るエディ・ローソンが獲得した。これを記念した限定モデルがKZ1000Rである。ビキニカウルや角型燃料タンクを装着し、専用の段付きシートやリザーバータンク付きリヤショックも標準で採用。純正でカーカー製の集合メガホンを備えた。
ヤマハ唯一の世界最速車:FJ1100
世界最速を狙って開発されたヤマハ初のGT スポーツツアラー。最高出力125psはデビュー当時の空冷で最大。1490mmのロングホイールベースや空力性能に優れたハーフカウルもあり、ゼロヨンは世界トップの10秒681、最高速は233.82km/hで世界2位の記録を誇った。’86年には130psのFJ1200に発展した。
900ccで世界最速となった初代ニンジャ:GPz900R
Z1に代わる次世代フラッグシップを模索していたカワサキが’84年、満を持して送り込んだ旗艦がGPz900Rだ。ライバルより小さい908ccながら、最先端の水冷DOHC4バルブ直4にサイドカムチェーンを組み合わせ、軽量コンパクト化と115psのハイパワーを達成。さらに振動を低減する1軸2次バランサーなど現代レベルの装備を当時から実現していた。フレームはカワサキ初のダイヤモンド式で、リンク式モノショックを装備。鋭角的で斬新なフルカウルは空力性能も抜群だった。最高速はライバルを超える250km/h超をマークし、最速王座を見事奪取。ビッグバイクの新基準となり、現代まで続く栄光のペットネーム「Ninja」の元祖にもなった記念碑的な1台だ。
V4でも世界最速を奪還:VF1000R
82年、WGPレーサーのNR500で得た90度V4のノウハウを注いだプロトタイプのRS1000RWが完成。米国伝統のデイトナでF・スペンサーが2位を獲得するなど実力を証明した。その公道レプリカがVF1000Rだ。CB1100Rに続く旗艦として、市販車初のカムギアトレーンなど豪華装備を備え、250km/hに迫る最高速をマークした。
ロードスポーツ唯一のリトラ:GSX750S III
主に国内向けに用意された750カタナが、’84年型のIII型でフルモデルチェンジ。GSX750E4をベースに戦闘力を上げた。さらに航空機をイメージした外観に一新。格納式のリトラクタブルヘッドライトをロードスポーツで初めて採用した。スーパーカーブーム世代直撃のギミックが賛否両論を呼んだが、現在まで唯一の“リトラ”となる。
昭和~平成を駆け抜けた国産名車たち [日本車LEGEND] (その1)はこちらへ
昭和~平成を駆け抜けた国産名車たち [日本車LEGEND] (その2)はこちらへ
昭和~平成を駆け抜けた国産名車たち [日本車LEGEND] (その3)はこちらへ
Source: WEBヤングマシン