東京オートサロン2018でカーメイキングレヴューが発表したNDロードスター用のスーパーチャージャーキットがついに市販化された。最高出力はブースト0.9〜1.0kg/cm2時に約200ps。純正から実測値で70psアップが可能になる魅惑のキット、その実力を探るために稲田大二郎が緊急試乗を敢行した。
目次
「実測70psアップは伊達じゃない。低速から湧き上がる過級トルクには感動すら覚えるレベルだ」
ヤンチャな1.5Lと落ち着いた2.0L
おなじ過給機チューンでも味付けが違う
千葉県のカーメイキングレヴューは、HKSの遠心式スーパーチャージャーを使ったオリジナルキットを開発していることで有名なショップだ。過去にはEJ20用のダブルチャージャーキットやVQ37VHR用のツインチャージシステムなど、数々の独創的なキットを生み出してきている。なにより、代表の前塚くんはJUNオートメカニックで修行していたこともあって、作りモノがひじょうにきれい。ステーひとつとっても強いこだわりが感じられるほど。
そんなレヴューの最新作が、今年の東京オートサロンで発表したND5RC型ロードスター用のスーパーチャージャーキットだ。キモとなるスーパーチャージャーはもちろんHKSの遠心式タイプで、サイズは同社が86/BRZ用に販売しているGTS7040Lをチョイス。ECUチューニングと組み合わせて実測203ps(ノーマル131ps)を超える出力を手にしている。エンジン本体フルノーマルのポン付け過給機で、このパワーアップ率はかなりのものだ。
その数字に嘘いつわりなどなく、乗り味は強烈のひとこと。わずか3000rpm足らずから正圧に入ると、1.5Lとは思えないトルクが湧き上がってきて7000rpmまでストレスなくパワーが追従してくる。ターボのような炸裂感こそないものの、どんな領域からでもアクセルを踏み込めば瞬時に過給トルクが後押ししてくれる。このリニアな感覚は、じつにスーパーチャージャー仕様らしい特性だ。見事な仕上がりだよ。
テスト段階だという2Lのスーパーチャージャー仕様(223ps)もおもしろかった。1.5Lのような軽快感はないかわりに、ドッシリと力強く加速していくんだ。まるでキャラクターが違う。ヤンチャな1.5ℓと落ち着いた2.0L、これは完全に好みがわかれるだろうけど、どちらも本当にすばらしいクオリティだ。
キット価格は1.5L用が69万8000円、2.0L用が79万8000円とのこと。そこにROMチューン(圧力センサー付きで12万5000円)や取り付け工賃(15万円)などがプラスとなるからトータルは1.5Lで100万円あたりだ。キットは、パーツ量販店レベルでも取り付けができるボルトオン設計にしているようだし、排気側にいっさい手を入れず吸気側だけで完結できるこのスーパーチャージャーキットは車検も問題なくパスできる。つまり時代にあったパワーチューニングというわけだ。
このプライスを高いと思うか安いと思うかはユーザーそれぞれの価値観に委ねようと思うが、このパフォーマンスの高さは何にも代えがたい魅力と感動が詰まっていることは間違いない。
Photo:Nobutoshi Kaneko TEXT:Daijiro Inada
キット使用のスーパーチャージャーはHKS製。加工いらずのボルトオン設計!
対応:ロードスター(ND5RC/NDERC)
価格:ND5RC 69万8000円/NDERC 79万8000円
備考:キット取付工賃 15万円/ECUセッティング代 12万5000円
スーパーチャージャー本体はHKSが展開している遠心式のGTS7040L。2.0Lクラスに最適なサイズのため、腰下の強度を懸念してリストリクターで47φまでコンプレッサー入口を絞ってパワーを制限している。
HKSスーパーチャージャーの内部構造図。プーリーの回転にともない、インプットシャフトに直結するアニュラスリングが回転(青の部分)。大小サイズの異なる3つのローラー(紫)をまわして、増幅された回転力がインペラーシャフト(ピンク)で伝達。なお、黄色の部分がトラクションオイルをローラーやリングに吹き付けるための流路で、緑がトラクションオイルを循環させるベーンポンプ部だ。
制御は1.5Lも2.0LもECUTEKが担う。セッティングの精度を高めるために圧力センサーは高性能タイプへ変更している。ECU導入コストはセッティング費&圧力センサー込みで12万5000円だ。
製作でもっとも苦労したのは動力源となるクランク軸からのベルトまわし。純正の位置ではどうやってもコンプレッサーにベルトを直線的にかけることができなかったため、純正クランクプーリーの手前にコンプレッサーベルト用のオリジナルプーリーを重ねて配置している。
NAはもちろんスーパーチャージャー仕様にも対応するオイルクーラーキットも開発(9万8000円)。19段のチューブコアとテフロンケブラー製の高性能ホースを使った自信作だ。
スーパーチャージャー化にともなって必要になるプラスαの要素は、バッテリーの小型化(19サイズ)とプラグの熱価をあげることくらい。燃料系はポンプもインジェクターもノーマルのままで対応できるようにセットアップされている。
POWER GRAPH
青:1.5L+GTS7040L:最高出力 203ps/5600rpm:最大トルク 27.3kgm/5000rpm
赤:2.0L+GTS7040L:最高出力233ps/5400rpm:最大トルク 33.7kgm/4900rpm
スーパーチャージャーは駆動力をクランク回転に依存する。つまり、回転数の高まりとともにブースト圧も上がっていき、トップエンドで最大ブースト値(=ピークパワー)に達するパワーカーブを描く。そのため乗り味もターボのような唐突感やラグはなく、NAの延長線上で排気量アップに近いフィーリングとなるのだ。
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Source: clicccar.comクリッカー