2018年8月23日、三菱アウトランダーPHEV(プラグインハイブリッド)の2019年モデルが発売されました。独自のコンセプトで注目されているPHEVシステムの特徴と今回のマイナーチェンジの改良点について解説します。
目次
●PHEVにはEV派生とHEV派生の2種類がある
EV(電気自動車)の最大のメリットは、走行中にCO2と有害排出ガスを発生しないことですが、一方で電池のエネルギー密度の限界から、満充電での航続距離が短いという課題があります。
この課題の解決法として注目されているのが、PHEVです。
PHEVは、短距離通勤や買い物など日常の用途ではプラグインの外部電源から充電した電池によってEV走行し、長距離で電池容量がなくなると、エンジンとモーターを併用したHEV走行となります。
システム構成には2つのタイプがあります。
ひとつ目は、アウトランダーPHEVのようなEV派生のPHEVです。EVベースで発電用のエンジンを搭載して電池容量を減らしたシステムです。
ふたつ目は、プリウスPHEVやクラリティPHEVのようなHEV派生のPHEVです。フルHEVの電池の容量を増やし、外部充電機能を付加したシステムです。
●3つの走行モードを走行条件に応じて自動で選択
アウトランダーPHEVは、前後輪それぞれにモーターを搭載した4WDシステムの SUVです。大容量の駆動用電池と高出力モーターを搭載し、電池切れを回避するために充電用のエンジンを追加しています。
最大の特徴は、3つの走行モードを走行条件に応じて自動で選択し、燃費と走りの両立を実現していることです。
[EVモード]
プラグインによる外部充電と、エンジンの発電による充電エネルギーを使って、モーターで走行
[シリーズ式ハイブリッドモード]
登坂や急加速など力強い加速が必要な場合、エンジンで発電した電気を使ってモーターで走行
[パラレル式ハイブリッドモード]
電池の残量が少ない場合と高速走行中は、エンジンで走行し、必要に応じてモーターでアシスト
さて、アウトランダーPHEV 2019年モデルは何が変わったのでしょうか。
エクステリア&インテリアデザインなど含めて車両全体で多くの変更点がありますが、注目はやはりPHEVシステムのパワーアップです。
●EV走行領域の拡大を実現
PHEVシステムの基本構成に変わりはありませんが、電池容量を12.0kWhから13.8kWhに増大し、満充電でのEV航続距離を60.8kmから65kmに延長しました。
同時に発電機とリアモーターの出力も10%向上させ、EVでの最高速度を125km/hから135km/hに引き上げてEV走行領域の拡大を実現しています。
発電用エンジンは、2.0Lから2.4Lに排気量を拡大し、アトキンソンサイクルを採用しています。
アトキンソンサイクルは、多くのエンジンが採用している熱効率(燃費)向上手法ですが、一方で出力が低下する課題があるので排気量を拡大して出力低下をカバーしています。
●代表的なPHEVを比べてみると?
最後にプリウスPHEV、クラリティPHEVと比較してみました。いずれも両社が開発した高効率HEVシステムの電池を大容量化し、外部充電機能付加したHEV派生のPHEVです。
・三菱アウトランダーは、前・後輪それぞれにモーターを搭載した4WD SUV
エンジン2.4L、電池容量13.6kWh、航続距離 65.0km、HEV燃費18.6km/L
・トヨタプリウスPHEVは、HEVシステム「THS」をベースにしたFFセダン
エンジン1.8L、電池容量8.8kWh、航続距離 68.2km、HEV燃費37.2km/L
・ホンダクラリティPHEVは、HEVシステム「i-MMD」をベースにしたFFセダン
エンジン1.5L、電池容量17kWh、航続距離 114.6km、HEV燃費28.0km/L
車両価格は、アウトランダーPHEVが394万円〜、プリウスPHEVが326万円〜、クラリティPHEVが588万円〜です。
アウトランダーPHEVは燃費や航続距離など性能面では、プリウスPHEVとクラリティPHEVに劣ります。しかし、2モーターによるEV走行性能と4WD機能、さらに低燃費とのバランスをとった環境対応SUVで、他のPHEVとの差別化を図っているのです。
PHEVのパイオニア的なアウトランダーですが、まだまだ価格が高いと思っている人も多いでしょう。しかし一度乗って見れば、その静粛性や独特の力強い加速、安定した4WD走破性などに魅了されるかもしれません。
(文:Mr.ソラン/写真:前田 惠介)
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Source: clicccar.comクリッカー