2018年9月3~4日、九州のオートポリスで新型Ninja ZX-10RRのサーキット試乗会が実施された。本誌からはメインテスターの丸山浩さんが参加し204psの新エンジンの内部をチェックした。
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直接バルブを押さないフィンガーフォロワーで大きな効果
今回のパワーアップのキモとなるのがフィンガーフォロワーロッカーアーム。ロッカーアームには中心点に対してシーソー式のものがあるが、これは片側で押している。フィンガフォロワーの上面の滑らかな部分をカムシャフトが押してその反対側でバルブを押し下げるというシステムで、直でカムシャフトがバルブを押すのではなくて、中心点からずれたとこで押してバルブを押し下げる。これを使うことによってリフト量を増やし、カムシャフトのプロファイルを変えて中低速及び高速まで出せるというメカニズムだ。従来の直押しタイプでは、カムシャフトのリフト量とオーバーラップを確保するための幅の広さだけでパワーアップして高回転型になってしまうところを、フィンガーフォロワーを使うことによって全域をカバーできるパワー特性を作れるというところが今回のキモと言える。これで今回のZX-10Rは高回転のピークで3psアップ。なおかつそこに至るまでの低中速も全域でアップしているのが、フィンガーフォロワーバルブシステムの効果となる。
パワーとハンドリングの改善に寄与するチタンコンロッド
さらに、もう一つキモとなるのはチタンコンロッド。スチールコンロッドと比べて持ってみても軽い。単体で102g、4本合わせて408gの軽量化が高速回転で回った時の慣性マスを減らすことができる一方、エンジンブレーキではよりクランク回転による慣性マスを発生させ、前輪に荷重を置くことができるという。軽くなるだけでなくフリクションを軽減させるなどして1psアップを獲得。だが、本来はハンドリングや加減速に対するレスポンスの方に恩恵をもたらすのがチタンコンロッドで、ZX-10RR=ホモロゲモデルの方に追加されている。現物には、パンケル社の刻印も確認できた。ピストンピンはスチール製、ピストンは特に圧縮比は変えていないが、形状は多少変えて新しいヘッドに合わせるようになっている。
ファンネルは2段式で全回転域に対応
もうひとつ、エアクリーナーボックスも変更されている。おむすび型のファンネルに対して吸入口は丸くなっており、中低速域は長いおむすび型のファンネルから吸気し、高回転域になると根本のすき間の部分からも吸って高回転のパワーも出すというもの。従来モデルでは通常のファンネルだったのだが、さらに前のモデルはこの2段式のファンネルを使っていたという。中低速域も持ち上げるという目的で再び採用されており、改めて今回のエンジンにはこの2段ファンネル仕様がよかったのだろう。さらに今回、エアフィルターもより空気抵抗の少ないエレメントを採用。もちろんレース用はもっと空気抵抗の少ないものを使っている。
解説:丸山浩
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Source: WEBヤングマシン