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新型スーパーカブC125開発者インタビュー 合言葉は「神は細部に宿る」

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初代C100 に込められた想いや広く愛される基本性能を継承しつつより豊かで新しい乗り物を生み出す。だからこそ、C125の開発陣は細部にまで徹底的にこだわった。 ※ヤングマシン2018年9月号(7月24日発売)より

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既存のカブを超えた上質なパーソナルコミューターを

YM:まず開発の経緯からお伺いしたいのですが、スーパーカブC125はグローバル市場を意識して生産だけでなく、開発も主にタイで行っていたとか。

勝田:スーパーカブは、日本では多くの人に役立つバイク=ビジネスバイクとして長い文化を築いてきました。一方、タイをはじめ東南アジア各地では一家に一台のファミリーユース=自家用車として愛され続けてきたんです。創業者である本田宗一郎やその参謀役だった藤澤武夫をはじめ、初代C100開発に携わった人々が思い描いた「人々の生活に役立つ喜びの提供」が受け入れられたからだと思っています。

そしてここ数年、東南アジアでは経済状況の高まりとともに、これまでの市場に変化が起き始め、お客様の指向も変化してきました。そこでスーパーカブが永く培ってきた基本性能の高さを見つめ直し、ファミリーユースからひとつ上の「現代の豊かな生活」と調和を図ったパーソナルコミューターを新たに生み出そうと考えたのが開発の経緯です。日本オリジナルの文化を基本としながら、グローバルモデルとして新しいものが生み出せるのではとも思いました。

YM: そこでこのスーパーカブC125は、非常に質感あるデザインとなっているんですね。これまで海外では丸目よりも角目や異形デザインが受けると聞いていました。先代スーパーカブ110/50は異形ヘッドライトでしたが、やっぱり海外でもカブは丸目の方が受けるんでしょうか。

立石:過去にはタイでも丸目のスーパーカブは長く販売していますから、丸目のなじみは深いと思います。時代の中ではそれが古く見えることもありましたけど、現在ではタイでも丸目の普遍的なイメージが見直されています。ちなみにLEDのヘッドライトユニットはC125専用設計となっています。

勝田:初代C100の鳥が翼を広げたような形のハンドルは、コミューター
にふさわしいライディングポジションと当時のプレス成型を前提とした製造課題を両立するために編み出されたものなんです。そのハンドルからフロントフォークを一体化して見せる「ユニットステア」も居住性を高める効果があります。C125ではC100をモチーフとするにあたり、こうした当時の開発者の想いを大事に継承していきました。また「神は細部に宿る」を合言葉にとことんまで質感を追求しました。

立石:デザイナーとしてはサイドから見たときにボディ上端が描く「S字ライン」。これにこだわりましたね。板厚が必要な樹脂成形ではリヤフェンダーがキレイなラインで後方に下がらないので、ここはあえてスチール製としたのがポイントです。タイ仕様ではリヤキャリアが標準装備となっておらず、よりハッキリとこのラインが見えますよ。

YM:スーパーカブはボトムリンクサスのイメージも強いですが、先々代からテレスコピックになっています。C125は、あえて初代にならってボトムリンクという選択もあったのでは?

立石:フロントまわりのデザインを極力すっきりさせたかったのが、まず理由としてあります。さらにディスクブレーキですから、ボトムリンクだと形状がかなり複雑になってしまうんです。タイ仕様や日本仕様にはABSの設定がありませんが、これもフロントまわりをすっきりさせたかったからです。

勝田:それにこの車両は乗り心地を重視していますので、ショックの吸収性の面でも優れているテレスコピック式を採用しました。サスペンションストローク量を110や50より長くしたのは、東南アジア地域で見られる悪路での走破性を高めるという狙いもありますが、それよりも日常的な乗り心地、道路の継ぎ目などちょっとした段差を超えても気にならないようにすることが狙いなんです。シートも110より厚みを持たせて乗り心地に貢献させました。

【勝田順平さん(左)】スーパーカブC125の開発責任者を’18年2月まで担当。過去にはエンジン設計としてCBR250R 、CB300R(ブラジル)、ACTIVA125(インド)などの機種も担当。’05年入社。【立石 康さん(右)】スーパーカブC125のデザイン取りまとめを担当。今までに携わった機種はジョーカー、エイプ、ズーマー、PCX、ダンクなど。’91年入社。

カブらしさを表現するために、デザイナーが特にこだわった「S字ライン」のシルエット。跨りやすさと走りの良さが一目でかつ美しく伝わるためにミリ単位での調整が必要とされた。

オーナーの愛玩に耐える細部への作り込み

YM:フレームやエンジンはどうなっているのでしょうか?

勝田:メインフレームはパイプ材による110のものがベースになっています。これにヘッドパイプまわりの強化や、エンジンハンガーの125㏄ユニット対応を行ったのが主な変更です。

YM:オリジナルのようなプレスフレームの可能性はなかったんですか?

立石:技術的には可能なんですが、現実的にはプレスフレームを製造加工する機械が揃わないんですよ。四輪用のものとも違うんです。

勝田:エンジンは東南アジア向けに販売されているウェーブ125に使われているものをベースとしました。スーパーカブ110用をベースに125㏄まで排気量を上げるのではなく、ウェーブ用に新たに設計された経緯を持つエンジンを選択しています。このC125では上質感を動力性能に落とし込むときに求められる余裕や快適性、それは出力だけでなく振動、音といった五感全体で受ける部分の気持ちよさを実現するために最適なユニットということで選択しました。もちろん、そのままではなくC125に合わせて特性を変えたり、ケースカバーを新たにデザインし直すなどしています。パワーやトルクはウェーブよりも力強くかつスムーズになっていますし、同時にプライマリーギヤのヘリカル化などによって上質コミューターにふさわしい静粛性も向上させました。また110や50と違ってオイル点検窓もありますから使い勝手も良くなっていますよ。

YM:先ほど「神は細部に宿る」とおっしゃっていましたが、本当に細部まで手が込んでいますよね。何か特別な部分ってありますか?

勝田:細かいところだと、シフト&ブレーキペダルはアームとペダルプレートを別パーツで構成したというのがありますね。ペダル上面は踏み続けていくと、やがてすり減っていってしまうじゃないですか。でも、交換していただければ、いつまでもキレイな状態で乗っていただけると思ったからなんです。開発陣としてはそういったところまで想いを込めました。やっぱり「神は細部に宿る」ですから(笑)。

立石:メーターは上質さを演出するために液晶ディスプレイ部を手前に、アナログ指針の速度計をその奥にと立体的なレイアウトとしたんですが、他ではなかなか見られないこういった試みも採り入れています。

YM:ホンダのHマークを模したというリヤキャリアもカッコいいですね。

勝田:あはは。Hマークは都市伝説ですね。機能を考えて作ったらこういう形になりました(笑)。

美しいボディラインを実現するため、リヤフェンダーはあえてスチール製に。シフト&ブレーキペダルは裏側のボルトを抜けばアーム部分と分離。擦り減っても交換が可能だ。

’17年の東モでコンセプトモデル(左)として発表された後も、ステップラバーやそのヒダの形状、内部構造にまで改良を加え(右)、110や50とは別クラスの上質な乗り心地をとことん追求。「神は細部に宿る」のひとつだ。

文:宮田健一
取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン
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Source: WEBヤングマシン

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