1958年からの累計生産台数が1億台に到達したホンダ・スーパーカブ。その最新型は新排ガス規制に適合しつつ、従来型で角型だったヘッドライトをLED 式の丸目とするなど、“ニッポンのカブ”スタイルへと回帰したデザインが特徴だ。 ※ヤングマシン2018年1月号(2017年11月24日発売)より
目次
【〇】日本人が思い描く”カブ”に
エンジンの耐久性やシフトフィール向上、シートや操安性の改善などなど、新しいスーパーカブは従来型の車体を踏襲しつつ、じつに細やかな改良を施している。排ガス規制に対応してシリンダーやピストンを新作、オイル経路にも手を加えたエンジンなどは、実はほぼ新設計なのだ。しかし、その最大のポイントは「丸目」のヘッドライトを核とするスタイリングの刷新だろう。日本人の多くが角目の従来型より”カブらしい!”と感じるはずのこのデザインは、累計1億台達成や来年の発売60周年を踏まえたメモリアルモデル……と思いきや、それは全く関係がないのだという。真相は、従来はモダンなデザインを好んだタイなどで、レトロ系の人気が急上昇しているから。特にここ1~2年はその気運が強まり、日本のスーパーカブも「オシャレだ!」と人気を博しているらしい。そうした背景を受けて「ならば、新型カブは思いっきり日本人好みに!」と開発陣が奮起した結果”丸目回帰”が実現したということのようだ。
【〇】シフトタッチが滑らか、エンジンの振動も低減
そして110は、全域でしっかりと力強いエンジンや4段ミッションの適切なレシオ(3速の守備範囲が広い)といった美点は踏襲しつつ、”ガチョン”と男らしかったシフトが”スコン”と軽く入るようになり、尻に伝わるエンジンの振動も大幅に低減(シートの改良も奏功?)。荒っぽい従来型の方がむしろ力強く感じてしまうほどだ。操安面ではフロントフォークカバー後部にスリットを入れるなど、空力の改善で安定性を増し、スイングアームのショック取り付け部を補強してサスの動きも改善。こちらはエンジンほど明確ではないものの、安定感が増したような印象は受けた。
50も基本的な印象は同様だ。エンジンの力が小さい分、110で感じた上質さはむしろ際立っていて、エンジン内のギヤが発するヒュルル〜という音がよく聞こえるのも50の個性。タイヤが細いからか、ハンドリングのヒラヒラ感も110より強い。
【×】装備は充実したが価格は約4万円上昇
制動力自体は不満ないが、フロントブレーキがディスクなら安心感が増すはず。ギヤ位置の告知灯があればロータリー式ミッションに不慣れな人も安心だろう。規制に対応して装備も充実した分、価格は上昇した。
【結論】激変ではないが確実に上質化、スタイルもイイ!
ブレーキやギヤ位置の件を開発陣に伝えると、前者は整備性や維持のしやすさでドラムを選び、後者は「ユーザーの多くは配達員などプロで、ロータリーに違和感は少ない」からと不採用。カブはコストや耐久性も重要なのだ。
スーパーカブ110主要諸元[ ]内は50 ■全長1860 全幅695 全高1040 軸距1205[1210] シート高735(各mm) 車重99[96]kg(装備) ■空冷4スト単気筒OHC2バルブ 109[49]cc 8.0[3.7]ps/7500rpm 0.87[0.39]kg-m/5500rpm 変速機形式4段リターン 燃料タンク容量4.3L ■ブレーキF=ドラム R=ドラム ■タイヤF=70/90-17[60/100-17] R=80/90-17[60/100-17]
取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン
撮影:山内潤也
Source: WEBヤングマシン