クルマの「サイバーセキュリティ」と聞いても他人事だと思っていませんか?
これ、実はクルマを運転する人にとっては大問題です。日本人はよく「平和ボケ」と言われ、他国に比べると防犯意識などが低いと言われますが、もしかしたらそんな国民性が出てしまっているのかもしれません。
今、自動車業界は「自動運転」「電動化」「コネクティビティ」にまっしぐら。
今ドキのクルマはカーテレマティクスやIoT(自動車の通信技術)、V2X (路車間通信)、Bluetooth 、USB、CDなど車内外で通信が多く行われ「コネクティッド」化が進んでいます。
クルマが外部と通信で繋がることで交通安全が保たれ、しかも便利になるというメリットも大きい分、デメリットもあります。その中の大きなデメリットが「サイバーテロ」からの攻撃です。それらを防ぐため、インターネットのセキュリティソフトと同じようなものが自動車にも求められています。しかもクルマは、ウイルスが侵入したりサイバーテロからの被害に遭うと、個人のデータを盗まれたり悪用されるだけではなく、クルマが凶器となって暴走したり、最悪の場合は犯罪に使われる危険も。そのため、常に最新で最強の対応を行う必要があるのです。
そして今回は「コンチネンタル・オートモーティブ」のお話。
「コンチネンタル」社はもともとはドイツのタイヤメーカーですが、現在はタイヤだけに留まらず、オートモーティブのサプライヤーとして広く自動車に関わっています。その中の一つで昨今、力を注いでいるのがカーセキュリティの分野。
外部からの脅威からドライバーやクルマ、そして社会を守ることを強化するため、コンチネンタル社は2つの会社を傘下に収めました。一つが「ARGUS(アーガス・サイバーセキュリティ)」社、もう一つが「Elektrobot(エレクトロビット)」社。
ざっくりとわけると「コンチネンタル」がECU(電子制御ユニット)やセキュリティ、「エレクトロビット」はソフトウェア、「アーガス」がセキュリティに強みを持っています。
この3社は共通のコンセプトを持ち、競合する部分と協業する部分を保ちながら3社体制でコンチネンタルグループとしてサイバー攻撃に取り組んでいるとのこと。
「コンチネンタル」はテレマティクスやインフォテイメントのコンポーネントのセキュリティを強化。
「エレクトロビット」は、クルマのECUユニットのソフトウェアを無線通信でアップデートすることができるソフトウェア「EB cadian Sync」を提供し、この機能をクルマに搭載することによって「アーガス」と共にクルマが出荷された後も車両のメンテンナンスをはじめ最新のソフトウェアのインストールが可能となり、常に交通安全のためのシステムやサイバーセキュリティからの保護ができます。
そして「アーガス」ではオペレーションセンターがもし万が一サイバー攻撃を受けても、素早く情報を分析して、新たな脅威の特定やその予防にいち早く対応したソフトウェアを自動車メーカーがオンラインでアップデートし、インストールすることができます。
カーセキュリティは100%ではないため、常に攻撃する側と守る側の戦いです。相手に対するハードルを高くすることでそれぞれの段階で適切な処置をすることができ、セキュリティのリスクを最小限にすることができます。
コンチネンタル・オートモービル・ジャパンのボディ&セキュリティ 日本OEM総括責任者 青木英也氏のお話によると。
「アーガスは世界最高のプロフェショナル集団。サイバーセキュリティ関連の特許を多数登録していたり、ハッカーと同じ思考で考え、サイバーセキュリティの経験豊富ないわゆる「ホワイトハッカー」の「アーガス・レッドチーム」もあります。万が一の時は「アーガス」のセキュリティのオペレーションセンターが行います。大量のデータから起きる前に予防はしていますが、もしハッキングされたらそれを検知。リアルタイムに防御。ブロックして車両に伝わらないようにする。原因の分析。…これらを継続的に行って攻撃の範囲を特定し、ほかの車両への影響があるかを確認。車両からの情報を遮断することでその後で侵入しにくくなる状況を作ります。2023年までにすべてのクルマを守ること、できるだけ多くのクルマを守ることが目標です。ただ、自動車メーカーの対応には温度差があります」
気になる日本車メーカーはどうなのでしょう?
「日本車メーカーは不幸な現実に当たっていないせいか、それほど積極的ではないようです」とのこと。
といはいっても日本車メーカーもカーセキュリティ対策には取り組んでいるので、海外メーカーはそれ以上の危機感を持って取り組んでいるということなのでしょうか? 加えて今後、半永久的にアップデートするなどの対応をしていかねばならないため、コストの問題もあるのかもしれません。
しかし、
「一度ハッキングされたら一気に加速する可能性があります。段階的な壁を作ればそれはおこなわれないかもしれないし、それはわかりません。5G(高速で大容量、多くの接続がリアルタイムで可能。人が持つデバイスからIoTまで幅広い無線通信が可能なシステム)が入れば取り上げられるデータ量や処理能力が上がりますが、同時にリスクも増えます。ハッキングポイントはいろいろありますが、電波を受けるものはタイヤプレッシャーに至るまですべてハッキングされる可能性があるのです」
クルマ進化と共に、クルマのサイバーセキュリティ対策が今後ますます必要不可欠なのは間違いありません。
(吉田 由美)
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Source: clicccar.comクリッカー