マツダはロードスターのレストアサービスを始めるにあたって、第三者機関による認証を利用したのでしょうか。その理由をロードスターアンバサダーであるマツダの山本修宏氏にお話をうかがいました。
そこには、ロードスターへの愛、そして日本は未成熟だといわれる自動車文化への思いがあったようです。
2017年8月4日、マツダは、NA型初代ロードスターを対象としたレストアサービスの開始を発表。公式Webサイト内にNAロードスターレストアサービスページを立ちあげました。そして12月10日にその事前説明会を開催し、12月13日よりレストアの受け付けが開始となりました。
このレストアの特徴のひとつに、完成後の車両に第三者機関であるテュフ ラインランド ジャパンによる認証書が添付されるということがあります。
テュフ ラインランド ジャパンのクラシックカーガレージ認証は、クラシックカーの修理・整備などを行う工場に対する認証で、修理・整備の技術、品質、機器・設備に加え、工場の運営・管理、法令遵守、お客様対応など、11カテゴリー150項目以上の基準に基づき監査を実施するもの。
マツダがこのクラシックガレージ認証を初めて受けました。
この認証のもと、今後生み出されていくレストア車には、クラシックカーガレージ認証書を添付することができ、確かなプロセス・環境で、高い品質レベルのレストア作業のもと製作されたことが証明されることになります。
その意図のひとつには、レストアが仕上がってオーナーの元へ再び戻るロードスターの価値をより一層高めることにあります。
レストア済み車の価値が上がるということは、中古車市場などでもそのポテンシャルを上げるということですから、レストアにさける予算の上限を上げることにも繋がります。これによって新品パーツをふんだんに使うレストアの費用を、ユーザーにリーズナブルなものとして捉えてもらえる可能性が上がります。
そして、仕上がったクルマは認証書により、その価値を保証されるという寸法です。
アンバサダーの山本氏によると、マツダは認証書によってさらにレストア済みロードスターの価値がハッキリすることにより、将来的に妥当な金額での車両保険等への加入が可能になることも狙っているようです。
たしかに現状の保険では、どんなに仕上がりがよくても25年以上昔の車両がレストアの金額をカバーできるような車両保険に加入できるという確率は低いです(一部例外はあります)。今後も個別での交渉となる可能性が高く、その際にこういった第三者機関による書類というのは、強い武器となりえそうです。
さらにその先の話として、このクラシックカーガレージ認証書を持っているクルマについて、保存状態のいい古いクルマとして、自動車税や重量税の減免ができないかどうか、という希望もあります。
ドイツでは1997年に始まったヒストリックナンバー制度により、30年以上経過していてオリジナルを保ってレストアされており、なおかつテュフの認証をとっている車両は、減税になるという制度があります。
自動車文化の発展を阻害している要素としても考えられる古いクルマへの重課税。どうやら、そこからの脱却の一つの方法として、このクラシックカーガレージ認証のような第三者機関による認証を減免の理由にしていくのが有効ではないかという提案も、込められているようです。ただ闇雲に減税を叫ぶよりも、はるかに説得力をもてそうですね。
初代であるNAロードスターが登場した1989年当時、後輪駆動のライトウェイト・スポーツカーは世界的にみても少なく、そのコンセプトは世界各地で受け入れられ、日本国内のみならず世界的なヒットとなりました。その後、欧州メーカーを主とした各社から2シーターオープンのニューモデルラッシュが続きました。
この視点からマツダ・ロードスターは自動車史に残る1台といえます。そのクルマを軸として日本の自動車文化を取り巻く環境を変えようという動き。乗っているユーザーも、そして乗っていなくてもファンの多い1台。まさに、その先鋒にふさわしいと言えそうです。
今後、他社も含めて多車種へとこの流れが広がっていくことに期待したいですね。
(古川教夫)
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価格は250万円〜。ロードスターが新車以上になるマツダのレストアメニューを徹底解説
https://clicccar.com/2017/12/22/539646/
マツダの「NAロードスターレストアサービスの事前説明会が12月に開催。参加申し込みは11月17日から11月26日
https://clicccar.com/2017/11/10/530203/
【関連リンク】
【MAZDA】NAロードスターレストアサービス
http://www.mazda.co.jp/carlife/restore/
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Source: clicccar.comクリッカー