スバルに続きマツダも異例のタイミングで社長が交代となった。スバルは本社に不正問題で国交省の立ち入り検査など入ったけれど(不正と言ってもユーザーへの実害無し)、マツダについていえば大きな問題無し。そればかりか、スバルの吉永さんもマツダの小飼さんも業績を伸ばした功績たるや絶大。両社、来年の社長交代と思われていたほど。
なぜこのタイミングで交代なのだろう。いろいろ取材してみたけれど、こればかりは御本人から直接聞くまで解らない。とは言え個別インタビューを含め、お二人には何度も話を聞く機会があった。人柄や周囲の「おそらく‥‥」という交代理由を総合してみると、共通項がありそう。すなわち「安定している今なら万全に交代が出来る」だ。
確かに不祥事や業績の極端な悪化などで突然の社長交代劇になると、事業継続性でいろいろな問題が出てくる。お二人にインタビューした時に印象的だったのは、就任当初苦労したということ。次の社長へ万全の状態でバトンタッチするなら業績も社会環境も平穏な時に、ということなんだと思う。代表取締役会長として残るのも同じ理由。
もう一つ共通しているのは、アメリカ対応である。スバルとマツダ、他のメーカーと違い、圧倒的に輸出比率が多い。ホンダやトヨタなどアメリカで販売している台数以上を生産しているため、トランプ大統領の「アメリカで売るクルマはアメリカで作れ。輸入車に高額の関税を掛ける」と言われても、大きな問題無し。
けれどスバルはアメリカで販売しているクルマの40%が日本製。マツダについていえば、アメリカ国内に工場無いため全数を輸入していることになる(メキシコ工場は売れ行き不振で稼働率低迷中)。マツダの方が深刻度大きいものの、いずれにしろ改善に数年掛かってしまう。となれば同じ社長で継続対応するべきだろう。
電動化技術もスバルとマツダの大きな課題になっている。今や電動化技術を投入するのは喫緊の課題。これまた両社共に通常のエンジン車を得意としてきたため、大幅に出遅れてしまった。これから開発に注力しても挽回が難しいと判断しているらしく、トヨタとアライアンス組んで技術や構成部品の供給を受ける計画。
幸い吉永さんと小飼さんは豊田章男社長との「相性」が素晴らしく良く、電動化車両の技術開発で「ぜひとも一緒にやりましょう!」と、見事なTOPダウンで話はまとまった。章男さんが1956年生まれ。吉永さんと小飼さんは1954年生まれで、章男さんからすれば微妙なお兄さん感覚も心地よかったんだと思う。
これまた継続して開発を続けなくてはならない。スバルの新社長である「中村さんは年下なので少し時間が掛かるかもしれません」(スバル役員のOB)、マツダの丸本さんは「とっても有能ですが人付き合いがあまり上手じゃないんです」(マツダ役員のOB)。やはり吉永さんと小飼さんからすればトヨタとの付き合いにも課題を抱えていると認識しているんだと思う。
ということで、おそらく1年くらいはバトンタッチの期間ということになり、スバルもマツダも従来路線を継続していくことになる。ただ新しい事業や計画は新社長の担当。自動ブレーキ技術で猛追を受けるスバルも、販売が伸び悩んでいるマツダも「次なる攻めの一手」を必要とされている。専守防衛だけでは厳しいと思う。どんな方針を打ち出すか期待したい。
(国沢 光宏)
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Source: clicccar.comクリッカー