世界中のモータースポーツに参戦するTOYOTA GAZOO Racingが極限で培った技術と情熱を惜しみなく注ぐスポーツカーブランド「GR」。その「GR車両」と「ノーマル車両」の乗り比べができる「GRシリーズ乗り比べ試乗会」がモーターファンフェスタ2018で行われました。
乗り比べられる車両は86GR、ヴィッツGRMN、ヴィッツGR、マークX GR Sport、プリウスPHV GR Sport、アクアGR Sportの6種類。GR車両の魅力を探るべく試乗会のゲスト、レーシングドライバー兼監督でもある土屋武士さんにお話を伺ってきました!
── GR車両を作った職人のこだわりを一人でも多くの人に伝えていきたい」とおっしゃっていましたが、土屋さんが感じたこだわりとは具体的にどのような所でしょうか?
「一本筋がありますね。中途半端な物を世に出さないという意思を凄く感じます。具体的に言うと4つのタイヤのインフォメーションをしっかりドライバーに伝えてくれる、それが安全に繋がっていると思います。例えばレースって雨だったりするとセットアップを変えなきゃいけないじゃないですか。でもGR車両は何も変えなくても走れます。フィールドは違えど4つタイヤがあるのは同じなので、いかに人の感性に合わせてセットアップされているか、乗ってすぐにそのこだわりを感じられました」
── GRシリーズで土屋さん的イチオシ車両はありますか?
「やっぱりヴィッツGRMNですかね。違いすぎて、何でこんなん作ってしまうんだろうって思いました(笑)。エンジンサウンド、速い加速でコーナリングをしても怖さを感じない、タイヤの動きがすんなりしているといった総合的なバランスが抜群なんです。僕はいつもレーシングカーを作る時、時間や予算の中でニーズに対して最高の妥協点を探すことが一番大切だと思っているのですが、ヴィッツGRMNはその妥協点が高すぎて(笑)。こんな楽しいクルマを作っちゃったらユーザーの期待が『もっと!』ってなるだろうし、でもそのワクワク感が良いんだろうなと思います。エコだ燃費だと言われ、どんどん狭くなっていく時代の中にボンと放り込まれたみたいな感じで……。クルマを好きにさせてくれるクルマですよね」
── クルマにあまり興味がない人でも、乗ったら好きになりますか?
「ズドンと感性に訴えてくるものだから、理屈じゃなく響く人は『何だこれ?』って思うだろうし、『なんだクルマってこんなに楽しいんだ』って感じると思います。乗れば乗る程いろんな顔を見せてくれ、味わい深く、作った人の想いがこめられている。こういうクルマってなかなか販売されていないですが、販売しちゃうところが最高だなって思いますね」
土屋さんがあまりにも楽しそうにヴィッツGRMNのお話をするので、どのようなクルマなのか気になってしょうがないっ! しかもヴィッツと言えば、TOYOTA GAZOO Racingが参戦しているWRC(世界ラリー選手権)のマシン「ヤリスWRC」のベース車両ではないですか!!
ということで、GRの究極のスポーツモデル「ヴィッツGRMN」と「ヴィッツノーマル車両」を乗り比べさせてもらいました。
クルマが走り出した瞬間、まず驚いたのはエンジン音! 五感が研ぎ澄まされるような、不思議な感覚です。
コーナーでは土屋さんのおっしゃる通り安定感があり、スピードを出しても怖さを感じません。これはサーキット走行をしてみたくなっちゃう!
違うのは乗り心地だけではありません。冷却性能をはじめ、走りの機能性をストイックに追求した“Functional MATRIX”グリルを採用した専用フロントバンパーや専用大型リヤスポイラー、赤いラインがかっこいい専用スポーツシート、アルミペダルなど、ボディや内装からも技術者のこだわりを感じられました。
そして一番驚いたのが、ドア。ノーマル車両は5ドアですがヴィッツGRMNは3ドアです。一体なぜなのでしょうか? その理由をGR開発統括部 ZR主幹 佐々木良典さんに聞いてみました!
「3ドアのほうが5ドアに比べて開口部分が少ない分ボディ剛性が良いというのも理由の一つですが、やっぱり見た目ですね(笑)。実は5ドアにしようと悩んでいた時期があったんです。ラリーのタイヤ交換の際に、ドアがたくさんあったほうが便利ですからね。ロールケージを付ければボディ剛性も上がるから、そうしようかなとも思ったのですが、やっぱり3ドアのほうがパッと見てかっこいいので、3ドアにしようと決めました」
── 本当にかっこいいですよね! クルマを見た瞬間、一目惚れしちゃいました(笑)。
「そうですよね。完成したものを改めて見ても、『あ~かっこいいな、3ドアにしてよかったな』と思います(笑)」
── ヴィッツGRMNを作る上で、一番こだわったことは何でしょうか?
「レスポンス、応答性ですね。全ての操作に対して、クルマが瞬時に反応してくれるということを重視しました」
── 佐々木さんはGRブランドの立ち上げから携わっているのでしょうか?
「そうです。今はガズーレーシングカンパニーという部署にいるんですけれども、その前身のスポーツ車両統括部というスポーツカー専門の部署を立ち上げた時からずっと携わっています」
── 昔からスポーツカーがお好きだったのですか?
「はい。スポーツカーが好きって人はたくさんいると思うんですけれども、実際クルマの会社に入ってスポーツカーの開発に携われる人って、なかなかいないんですよね。そういう面ではラッキーと思っていますし、幸せをかみしめながら働いています」
── まさに天職ですね!
「本当にそう思います。スポーツカーに携わってから8年経つんですけれども、その前はシャシー設計をやっていて。そういう所で培われてきたものが、今活かされているのかなとも思います。設計部署で考えていたものが、今こうして実現しているという感じです。将来こういうスポーツカーを作ってみたいという夢がある人は想い続けて、トヨタ自動車のガズーに来てくれれば夢が実現できると思います」
── 最後に、これからやってみたいことなどあれば教えてください!
「奇抜なことをやるというわけではなく、今回のヴィッツGRMNで自分でも凄いなと思うクルマを作ればお客様も喜んでくれるということが分かったので、常にお客様が乗ってニコっとしてくれるクルマを作っていきたいです。夢は持ち続けたいですね!」
(yuri)
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Source: clicccar.comクリッカー