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雨宮シャンテと一緒に東名を「ドライブ」していたバケモノ・ワゴンって何だ!?【OPTION 1982年9月号より】

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前回、RE雨宮自動車の、あの有名すぎるシャンテの「ゼロヨン仕様」と「最高速仕様」を紹介しました。

当時、雨さんはR246や東名高速をシャンテに乗って「ドライブ」していた話は有名ですよね。そんなとき、一緒にランデブー走行をしていたワゴン車がいたことをご存知でしょうか?

そう、それが今回紹介するクラウン・ワゴンです。オーナーは……青いトランザムで最高速トライアルをしていた、元トラスト・大川光一さんです。コイツはまさにバケモノ・ワゴン! では、プレイバックしてみましょう。

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目次

240km/h!を豪語するバケモノ・ワゴン
クラウン・ワゴン・ツインターボ

異色チューンドカーの代表格といえば雨宮シャンテがその筆頭だが、今度はなんとライトバンのチューニングカーが登場してきた。

このクラウン・ワゴンを作ったのは、あのTRUSTトランザム(OPT最高速トライアルで、264.71km/hをマーク)の大川光一さん。

ベースは50年型のクラウン・カスタム・ワゴン。2LのM-U型エンジンは2.6Lの4M-U型に換装、さらに83mmにボアを拡大して5M-EUと共通の2790ccの排気量を得ている。これに組み合わされるのは、なんとKKK製K26/2470Rのツインターボ・ユニットなのだ。

シルエット・セリカやTRUSTセリカでのツインターボの経験が豊富なだけに、エンジンのチューニングも万全だ。

ピストンは5M-G用のノーマルを使用、燃焼室を拡大して2.8mm厚のターボ用ガスケットを組み、圧縮比を7.0まで下げている。キャブレターは対策用のM型用ツインSUユニットをマニホールドごと使用。カムは74度の加工。バルブ、同スプリングなどはノーマルだ。

ツインターボを装着するマニホールドは、自製の鉄パイプ製。ウエイストゲートはシグマ製のものを使う。ふたつのタービンから出た空気は、エアリサーチ製の大型レース用空冷インタークーラーに導かれる。このインタークーラーは、ニッサンのシルビア/スカイライン・シルエットに使われているものと同じ、超大型のものだ。インタークーラーを出たパイプは1本にまとめられ、インテークチャンバーに入り、キャブへとつながる。

ブースト圧は常時1.5kg/cm2! キャブ調整による濃い燃料、大型インタークーラーによる効果的な吸気温の低下などの効果で、フルブースト時にもノッキングは発生しないというから驚異だ。また、点火時期も大幅に進角させているらしく、エンジンパワー的には、ハイブーストのL型3Lターボ以上の数値が期待できる。

この強力無比のパワーユニットに組み合わされるのはセリカXX2.8L用の5速ミッション。クラッチはフェロード製ディスクに強化プレート、TRUST製クロモリのフライホイールを装備。デフは同様に、セリカXX用の3.727を組む。

一方、足まわりも強大なパワーに対処すべく、硬められている。コイルはビックの強化型に前後とも変更、ショックはフロントにTRDの高圧ガス、リヤに同7段調整式のガスの組み合わせ。ブレーキは、前後ともフェロードのパッド/ライニングで強化。

タイヤは前ファイアストン・セミレーシングの205/60VR15、後グッドリッチ275/60VR15。ユニークなのはホイールで、なんとデ・トマソ・パンテーラ用の5穴カンパニョーロ・マグ8J-15を履いている。

排気系は60φデュアルのTRUST特注品。パワーステアリングこそ取り外してあるが、エアコンは装着したまま。外観もタイヤ/ホイール以外はまったくノーマルのままなので、一見したところ、街中を走っているごく普通のクラウン・ワゴンとまったく変わりはない。

しかし、ひとたびアクセルを踏みつければ、5000rpmでフルブーストの1.5kg/cm2に達し、ごく短時間に200km/hに達するという怪物の牙をむき出す。

こんなクルマにカモられたら、たまったものではない。ヘタなチューンド・スポーツカーやスーパーカーではブッ千切られてしまう。「羊の皮をかぶった狼」なる言い回しがあるが、このクルマはそんな比論を許さないバケモノだ。

オーナーは日常の通勤用として、毎日使っているというから、驚きは一層強い。

谷田部テストでは不発に終わる

この怪物クラウン・ワゴンの最高速チェックのため谷田部の周回路に持ち込み、フルスロットルをくれてみた。1速、2速の加速はスポーツカー並みのハイギヤードながら、素晴らしい。一切、軽量化されていない1500kgのボディをいとも簡単に150km/h台に乗せる怪力は、さすがにツインターボだけのことはある。

テストでは耐久性を考慮して、ブーストを最大1.3kg/cm2に調整してあったが、それでも4速6000rpmまでは短時間に到達した。しかし、空気抵抗増大のためか、車速ののびが次第に落ちてくる。

4速7000rpmまで引っ張って5速に入れるが、次第にブースとが低下、0.5kg/cm2ほどになってしまう。ガソリンは相当濃く、全開で谷田部のバンクを駆け降りても、黒煙をマフラーから吹くほどだ。

結局、5速でブーストの上がらぬまま計測地点を通過、最高速は201.96km/hに終わってしまった。

3周ほど周回したが、ブーストは上がらず、エンジンがヒートしてきたのでピットに入る。点検してみると、大型インタークーラーの吸気側カバーが大きく裂けて破損しており、ブーストがほとんど漏れていたことが分かった。

残念ながらここでタイムアウト、240km/h近いはずの最高速を実証することは出来なかった。

バンクでの高速安定性は意外に良好、ステアリングがフロントのリフトでやや軽くなるものの、直進性は常に保たれていた。空気抵抗は思ったよりも大きくない。実はバンボディはセダンよりもCD値、CL値ともかなり低く、このクルマのフィーリングもそれを裏付けている。

今回はトラブルに見舞われ、その実力の片鱗を見せたに終わったが、その怪物性は印象的だった。

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大川さん曰く「ワゴンじゃなくライトバンね!」と今でもおっしゃっていますが、その昔(クラウンよりはあと)、ベンツの300TEに500Eエンジンを換装して、通勤兼ラジコン荷物運搬用の「ライトバン」として乗っていた時期がありました。「ライトバンを舐めてかかると撃沈する」……いかにも大川さんらしいクルマの遊び方です!

[OPTION 1982年9月号より]

(Play Back The OPTION by 永光やすの)

Source: clicccar.comクリッカー

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