8代目パサートに新規追加されたTDIグレード。これは日本のポスト新長期排ガス規制に対応するクリーンさを保ちつつ、意識的にパワフルに作ったターボディーゼル2Lエンジンを搭載したモデルです。
近年の日本における輸入車はディーゼルが大ブーム。JAIA(日本自動車輸入組合)のデータでは海外ブランドの日本での販売台数のうち、約2割超がディーゼル車になっており(2018年2月期)、なかなかのボリュームです。
ここまでディーゼルがメジャーになってくると気になるのはそのエンジンの個性。このフォルクスワーゲンの新ディーゼルが持つ特徴はどんなものでしょうか。ディーゼルエンジンの特性や近年の排ガス規制対応の状況を交えつつ見ていきましょう。
ディーゼルエンジンは構造上熱効率が高く、好燃費を出しやすい条件が揃っています。またターボとのマッチングもいいので比較的容易にトルク上乗せを得られるというメリットもあります。
しかも日本では軽油がレギュラーガソリンに比べても安いので、同一ボディにガソリンエンジンとディーゼルが設定されていた場合、ほぼ間違いなく走行コストはディーゼル車のほうが安くなります。
一方でディーゼルエンジンは排気ガスに有害成分が増えるため、これを減らすべくコモンレールシステムで燃料噴射を細かく制御したり、DPF(ディーゼルパティキュレートフィルター)でPM(粒子状物質)を抑えたりする必要があります。また、昨今の厳しい排ガス規制である欧州のユーロ6や日本のポスト新長期をクリアするためには、さらなる排気浄化対策が必要になってきます。
そこで自動車メーカー各社は様々な手法を使って排ガス浄化に取り組んでいます。フォルクスワーゲンがパサートに積んだ2L・TDIエンジンではコモンレールとDPFの「定番2点セット(もはや今後これらは必要不可欠)」に加えて、SCR(選択触媒還元)システムを採用しました。これはアンモニアを主成分としたアドブルー(AdBlue)を専用触媒に噴射してNOxを窒素と水に還元する仕組みです。
一方「排ガスがキレイなだけじゃない」のが最新ディーゼルエンジンのトレンドでもありまして、ここにこそ「フォルクスワーゲン・ディーゼルならではの特徴」が出てきます。その特徴とは「気持ち良さ」が追加されていることです。
この「気持ちよさ」にはさまざまな要素が絡んできますが、ひとつ目には特殊なターボの恩恵が挙げられます。
パサート用2L・TDIのターボチャージャーには可変ガイドベーンを設けました。エンジン回転数に応じて排ガス通路面積を変更して、常時最適な過給圧を狙える仕組みとしています。これにより高レスポンスが得られます。
もう一つは圧縮比を下げ、高回転も楽しめる仕様としたことが挙げられます。一般的にディーゼルエンジンはガソリンエンジンに比べて高圧縮ですが、このエンジンではこれを15.5程度に抑えています。圧縮比が下がればムービングパーツの重量を下げて高回転まで回すことができる素性ができます。
この素性をもとにパサート用2L・TDIでは最大トルクを1900rpmから発生させつつ、ディーゼルエンジンとしては比較的高い3300rpmまでそのピークを維持するセッティングとしました。また最高出力はディーゼルエンジンとしては低めの3500rpmから発生させ、これを4000rpmまでキープします。
このトルクとパワー特性のマッチングで、低回転からのディーゼルらしい加速はそのままに高回転まで回ることで、自然に最高出力発生回転数へとつなげていくことができました。これは乗ってみるとドライバーには「伸びやか」さとして実感できます。
トルクフルでありつつ気持ちよく上まで吹ける、回して楽しむ志向のディーゼル。これこそがフォルクスワーゲンTDIの大きな個性なのでした。
●パサート ヴァリアント TDIハイライン・主要スペック
全長×全幅×全高:4775×1830×1510mm
車両重量:1610kg
エンジン形式:直列4気筒ターボ・ディーゼル
排気量:1968cc
最高出力:190ps/3500〜4000rpm
最大トルク:40.8kg・m/1900〜3300rpm
価格:509万9000円
(写真/小林和久 動画・文/ウナ丼)
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Source: clicccar.comクリッカー