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【初試乗】世界初のデジタルアウターミラーを装備した「レクサスES」の完成度とは?

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目次

LEXUS ES300h

なにより話題は「デジタルアウターミラー」

レクサスESの2代目にあたるモデルは日本名ウィンダムとして国内で販売されていたから、厳密に言えば「ES」は日本初導入ではないのだけれど、「LEXUS ES」のバッジを付けたモデルとしては確かに今回が初めての上陸となる。しかしそんなことよりも話題をさらってしまったのは、量産車世界初となるデジタルアウターミラー採用のニュースだった。

デジタルアウターミラーは、一般的なサイドミラーがある場所に設置されたカメラと、ダッシュボードの左右脇に置かれたふたつの5インチ液晶ディスプレイから構成される。デジタルアウターミラーによるメリットはいくつかあって、最たるものは視認性の向上。特に夜間やトンネル内といった外が暗い環境下では照度センサーを用いてカメラの設定やディスプレイの輝度を自動調整して映像を見やすくする。

Aピラーの死角と風切り音が低減。

カメラが内蔵されているステーはサイドミラーよりも小さいので、全幅が若干狭くなるだけでなく、風切り音も低減。さらに通常のサイドミラーよりもAピラー根元付近の死角が大幅に減り、右左折時や後退時には視野範囲が自動的に広くなる機能も備わっている。視野の調整はこれまで通り、パワーウインドウのスイッチと共にドアに備わるスイッチで行う。後方を写すカメラだけでなく、パノラミックビュー用のカメラやターンシグナルが埋め込まれたステーは、サイドミラーと同様に電動可倒式となっている。

鮮明とは言えない解像度。

実際に使ってみるとどうなのか。慣れるまではディスプレイではなく、いつもならサイドミラーがあるべきカメラ本体のほうをまずは見てしまい、そこから慌ててディスプレイに視線を動かすということを何度も繰り返してしまった。ディスプレイに映し出される映像は少し粗く、ガラケーのカメラモードのような画質。これがカメラの画素数のせいなのか、モニターの解像度のせいなのか、あるいはその両方なのかはよく分からないが、いずれにせよさらに鮮明だと嬉しい。サイドミラーならすぐに車種まで判別できる位置でも、デジタルアウターミラーでは何のクルマか分からない場面が多かった。いっぽうで、トンネル内や夜間の視認性はサイドミラーよりも圧倒的にいい。全体的に明るく黒くつぶれてしまう部分も少なく、いままでは見えなかったところまでよく見えた。

気になる注意書き。

ただ、不安に思うところもある。例えば、何らかの不具合でディスプレイに画像が映らなくなるともうどうしようもない。すでに採用されているデジタルインナーミラーであれば、切り替えレバーを使って普通のミラーに戻せるから、まったく見えなくなることはない。また、デジタルアウターミラーにはいくつもの注意書きがあって「体調、年齢などにより、ディスプレイに焦点が合うまで時間がかかる場合があります。焦点が合わせづらいと感じたときは、安全な場所に停車し、ディスプレイの明るさを調整するなどし、焦点が合うまでは運転を控えてください。(カタログから引用)」なんて書かれている。そんなことを言われても困ってしまう。万が一こういう事態に遭遇したとしても、実際にはクルマを止めて運転、控えないでしょう。

こだわり過ぎた「世界初」。

室内に置かれたディスプレイも「後付け感」たっぷりで、もう少しどうにかならなかったのかと思う。タッチの差で量産車世界初を逃したアウディのe-tronにもデジタルアウターミラーが採用されているが、あちらはドアパネル内にきれいにインテグレートされていて、見栄えはe-tronのほうが圧倒的にいい。要するに、デジタルアウターミラーはまだ過渡期の商品なのだけれど、安全に関わる重要機能を備えているのだから「世界初」なんかにこだわらず、もっと時間をかけてじっくり開発してもよかったのではないだろうか。

フラットな乗り心地を実現する「スイングバルブ」の採用。

7代目となった新型レクサスESは、トヨタのGA-Kプラットフォームを共有する。つまりエンジン/前輪/ペダルの位置関係やサスペンション形式などはカムリと同じ、エンジン横置きの前輪駆動用プラットフォームである。だからとって、中身はカムリとまったく一緒というわけではない。ホイールベースはESのほうが45mm長く、スタビライザーやコイルスプリングなど一部の部品はES用に新たに開発されたもの。電子制御式ダンパーのAVSもカムリには装備されていない。さらにコンベンショナルなダンパーには、スイングバルブと呼ばれるまったく新しい機構が備わっている。

スイングバルブとは、ダンパーの断面を見た時に通常のバルブよりも下部に配置されているが、もっとも特徴的なのはオリフィスがないこと。代わりにバルブ自体がわずかにしなることでオイルの流れをコントロールする。こうすることで、路面からの入力が小さい極微低速域でもしっかりと減衰ができるようになり、比較的路面の状態がよいところでは、さらにフラットな乗り心地が実現できるようになったという。

ES300hに搭載されるのは
2.5リッター直4ハイブリッドエンジン。

日本で販売されるのは、2.5リッターの直列4気筒エンジンにプラネタリーギアを挟んでモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを使用する「ES300h」のみ。海外市場向けには3.5リッターのV6を搭載したES350や2リッターの直4エンジンのES200なども用意されている。この直4ユニットは約40%という世界トップレベルの最大熱効率を達成していて、同じ設計手法の2リッター版がレクサスUXに搭載されている。

GSよりも少し大きい「ES」のボディ。

ボディサイスは、全長4975mm、全幅1865mm、全高1445mm、ホイールベース2870mm。これをレクサスGSと比べてみると、95mm長く、25mm幅広く、10mm背が低く、20mmホイールベースが長いから、実質的にはESのほうがGSよりも少し大きなボディを有していることになる。ちなみにGSは欧州での販売終了がすでに決まっている。日本では今後もしばらくGSとESの併売が継続すると思われるが、GSの次期型の開発の噂が聞こえてこないことからも、将来的にはESがGSのポジションを引き継ぐ可能性が高い。

ラインナップは3モデル。

グレードは素の「ES300h」、「ES300h  F SPORT」、「ES300h  version L」の3種類から構成されていて、今回はそのすべてに試乗した。どのモデルにも共通していたのは、FFであることを強く意識させない素直なハンドリングと、よく言えば妙なクセのない快適なセダン、悪く言えば秀でた特徴のないフツーのセダン、である。

「ES300h」と「version L」には前述のスイングバルブ付きダンパー、「F SPORT」には電子制御式ダンパーのAVSが標準装備されている。このうち、常用域でもっとも乗り心地がよいと感じたのはES300h。version Lも悪くないが、素のES300hは215/55R17、version Lは235/45R18のタイヤを履いていて、この差が乗り心地にも若干影響しているように思える。

待望の「F SPORT」を追加。

実はこれまでのレクサスESにF SPORTがラインナップされたことはなく、北米市場からの強い要望で今回初採用となった。専用のサスペンションセッティングが施された上にAVSと19インチのタイヤ&ホイールが組み合わされていて、でもだからといって途端に乗り心地が硬くなったり、ステアリングゲインが上がったりはしておらず、「スポーティな雰囲気になった」くらいの範疇にとどめている。だからタウンスピードでも乗り心地は不快感を伴うほどではない。

F SPORTならではの所作は旋回中の挙動にあって、ばね上の動きは明らかに他の2グレードよりも抑えられている。また、ステアリングフィールは、F SPORTのほうが断然いい。他の2グレードはステアリングの切り始めにフリクション感のようなものがあって、これが運転中ずっと気になった。F SPORTのほうがこれがなく、微舵域からスッキリとしている。どうやらEPS(電動パワステ)のセッティングの違いが原因のようで、開発チームはこの件は認識していたから、早急に改善されるだろう。

改善されたハイブリッドエンジン。

ハイブリッドは以前と比べればいわゆるラバーバンドフィールがずいぶんと軽減された。エンジン回転数と速度の上昇がシンクロしていて、回転数だけ先に上がって後から速度がついてくるようなこともない。215psのシステム最高出力は1680-1730kgの車両重量を動かすには必要にして十分で、追い越しなどの中間加速でももたつくことなく、欲しい時に欲しいだけのパワーが引き出せる。高速道路や市街地やワインディングロードが混在した試乗ルートを約200kmほど走った燃費は16.8km/リットルだった。

フツーのセダン。それの何が悪い?

「フツーのセダン」と書いたけれど、これが本当に悪いことだとは思っていない。最近はセダンだろうとミニバンだろうとSUVだろうと、何でもかんでも「スポーティ」やら「アジリティ」やらを性能や内外装のしつらえでことさらアピールする傾向にあって、それにいささか辟易としていた。本当にみんな、そんなにこぞってスポーティなクルマを求めているのだろうか。それよりも乗り心地がよくて静かで快適なクルマが欲しい人だってたくさんいるはずだ、と考えているからである。そういう方にとってレクサスESは、クルマ選びの苦悩に平和的解決をもたらしてくれる1台だと思う。でもせっかくフツーを目指すなら、究極のフツーをレクサスには目指して欲しい。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

【SPECIFICATIONS】
レクサスES300h〈F SPORT〉《version L》
ボディサイズ:全長4975×全幅1865×全高1455mm
ホイールベース:2870mm
車両重量:1680〈1720〉《1730》kg
エンジン:直列4気筒DOHC+ハイブリッドシステム
総排気量:2487cc
最高出力:131kW(178ps)/5700rpm
最大トルク:221Nm(22.5㎏m)/3600 – 5200rpm
モーター:交流同期電動機
最高出力:88kW(120ps)
最大トルク:202Nm(20.6kgm)
バッテリー:ニッケル水素
トランスミッション:無段階変速機
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーレンストラット 後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
燃料消費率(JC08モード):23.4km/L
車両本体価格(税込):580万円〈629万円〉《698万円》

【関連リンク】
・レクサスインフォメーションデスク TEL  0800-500-5577
https://lexus.jp

(GENROQ Web編集部)

Source: clicccar.comクリッカー

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