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スーパーGT2018シーズンを戦い終えて
今シーズン、日本でのレースデビューとなった『NSX GT3』。スーパーGTでは2台のNSX GT3が戦い『#34 Modulo KENWOOD NSX GT3』が初年度&新チーム体制にもかかわらず第7戦オートポリスで3位表彰台を獲得するなど活躍を見せた。
そして2018年10月、その改良版となる『NSX GT3 EVO』が2019シーズンから投入されることが発表された。各部のアップデートによってさらに戦闘力を高めて来ることは間違いないだろう。
そこで、今シーズン1年を通してNSX GT3で経験を積み重ねてきたModulo Drago CORSEの道上龍チーム代表に、EVOについての意見を伺った。
旧型GT500マシンと新型GT3 キャラクターの違いは?
初戦での追突クラッシュ、第5戦での全損事故を乗り越え、シリーズ投入1年目でNSX GT3の国内初表彰台を実現させた『#34 Modulo KENWOOD NSX GT3』。
チームを牽引する道上龍選手はチーム代表として、そしてドライバーとしてNSX GT3を熟成させてきた。今や日本だけでなく世界中を見回しても、NSX GT3をもっともよく知る人物と言っても過言ではないだろう。
2018シリーズ最終戦となるツインリンクもてぎでも、練習走行で4番手タイムを記録。9位でスタートし、結果は13位フィニッシュと不完全燃焼に終わったものの、無事にシーズンを終えることができた。
そんな最終戦の直後、道上選手にNSX GT3の印象を聞いてみると「昔のGT500で乗っていた旧型のNSXとはまったくの別モノだね。旧型はキビキビ動くコーナリングマシンという印象だったけれど、この新型NSX GT3は車重もあるしエンジンもターボだから、ストレートスピードの速い安定志向のマシンというかんじ」と、自らがステアリングを握りシリーズ優勝したGT500マシン(#16 Castrol無限NSX[NA2])との違いを評価してくれた。
GT300クラスで戦うNSN GT3が抱える課題
GT3規格のマシンが走行するさまざまなレースのなかでも、スーパーGTは特殊な点が少なくない。特にタイヤに関しては、他のGT3レースは使用するタイヤが統一されたコントロールタイヤ制が多いのに対し、スーパーGTはグリップ力や特性の異なるさまざまなメーカー・コンパウンドを選択することができる。
これによって問題となっているのがブレーキだ。グリップ力の高いタイヤを履くほどブレーキへの負担が増加し、冷却などのキャパシティが想定を超えてしまった場合に効きが悪くなるトラブルが発生してしまうという。
最終戦が行われたツインリンクもてぎはブレーキへの負担が大きいと言われるサーキット。結果的にはこのブレーキトラブルを抱えながらの我慢を強いられるレースとなり、14位でのフィニッシュとなった。
また、もうひとつ、レース中盤からリヤの挙動が不安定になりがち、という悩みも抱えているようす。
前後の空力や重量のバランスなどが複合的に影響しているようだが「リヤがピーキー」「オーバーステア」というコメントに加え、フロントをアンダーステア傾向に変更するセッティングなどを施してる場合が多かった印象だ。
最終戦でもこの悩みは健在で「決勝はドライバーチェンジの際にリヤ2輪のみ交換する作戦を立てていたんです。でも、コンパウンドの違いや前後バランスを考えて、結局は4輪とも交換しました」とスタートドライバーを務めた道上選手。リヤだけ新品でグリップ力が高くなり、後発の大津弘樹選手がオーバーステアに悩まされる事態を懸念した決断というわけ。
「これらの課題はもちろん販売元のM-TECHにもフィードバックしていますよ」という道上選手。
来シーズンから投入されるEVOは、どのようなアップデートがおこなわれているのだろう?
2019シリーズから投入される NSX GT3 EVO
新型ターボチャージャーを採用 ブレーキ&空力アップデートも実施
Hondaのニュースリリースによると『NSX GT3 EVO」はこれまでと同様、搭載されるV型6気筒3.5Lツインターボエンジンは市販型NSXのエンジン製造を行う米国オハイオ州のアンナ・エンジン工場で、メインフレームも市販車NSXの製造を担う米国オハイオ州メアリズビルのパフォーマンス・マニュファクチュアリング・センターで生産され、イタリアのミラノにあるJ.A.S Motorsportで組み上げとともに安全装備が施されるという。
日本における販売、テクニカルサポート、パーツ供給などは(株)M-TECが担うというのも、従来通りだ。
改良点は以下の通り
同時に、前後の空力バランスの最適化により、ブレーキング時の安定性を高めドライバビリティーを向上。
・冷却システムのエア流れ改善により冷却効率を向上。
・最新のBosch製アンチロックブレーキシステムを採用
・ディスプレイとデータロガーをアップグレード
・新しいターボチャージャーを採用しスロットルレスポンスと燃費性能を向上
(Hondaニュースリリースより抜粋)
既存モデルのNSX GT3もアップデートが可能
EVOにほどこされたアップデートは、既存のNSX GT3にも使用することができるよう準備が進められているというが「全部揃えると莫大な金額になりそうなので、今からドキドキしてますよ(苦笑)」と道上龍選手。
いっぽうで「フロントバンパー形状が変わってブレーキの冷却効果が高まることを期待しています。それと、フロントのスプリッターも新設計で少し短くなるみたいだから、オーバーステア傾向が解消されるといいんだけど…」と、現状で抱えている課題が少しでも解消することに期待しているようだ。
来シーズンの予定はまだ発表されていないけれど、アップデートによって戦闘力を高めたNSX GT3 が、日本全国のサーキットで活躍する姿に期待したい!!
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Source: clicccar.comクリッカー