マシンは、1/8スケールのアウディQ2
アウディAGの子会社であるアウディ エレクトロニクス ベンチャー GmbH(AEV)が、毎年「アウディ自動運転カップ」と題したコンペを開催しているのをご存じだろうか。4回目を迎える今年は11月12日〜14日に開催される。
情報テクノロジーを専攻する学生を対象とするこのコンペ、今年はドイツ国内はもちろん、英国、イタリア、オーストリアなど15の大学チームが予選に参加、これを通過した8つのチームが11月14日の決勝に進出することになる。
アウディ自動運転カップは、アウディQ2の1:8スケールモデルを使って行う。このスケールモデルには、実際の車両と同等の高度なテクノロジーが組み込まれている。
アウディが用意したこのハイテクカーを、課題として与えられるコースにいかに適合したセットアップに仕上げるか、これがコンペのコンペたるゆえんだ。各チームが事前に見ることのできるのは、コース全体のデジタルHDマップだけ。しかもコースは毎年変更され、難易度が高くなっている。今年は、緊急車両がルート上に突然現れるというシナリオが用意されている。
各チームは設置されたコースに沿って走行し、障害物を回避しながら交差点を正しく通過し、道路標識を認識しつつ、適切な車間距離を保って先行車を追走するようセットアップする。そして緊急車両のライトが点滅し、サイレンを鳴らした状態で近づいてくると、路肩に寄って停車するのが条件だ。
そうした厳しいハードルをクリアするべく、モデルカーにはボディ前後のカメラを始めとして、レーザースキャナーと超音波センサーなどを搭載する。センサーからのデータは1カ所に集められ、周囲の正確な画像を作成する。このプロセスは、市販モデルが搭載するセントラルドライバーアシスタンスコントローラー(zFAS)と同じだという。
アウディ自動運転カップが意義深いのは、モデルカーによるコース内の自動運転という、ゲーム的課題で終わりとしないところにある。
このあと各チームは、技術開発に関するプレゼンテーションを行い、最後に自由テーマに取り組む。ここでは各チームの想像力がモノを言い、自分たちで選択した課題をデモカーで実演する。今年のメインテーマは『AIの活用』だそうだ。
これら3つのステップでもっとも多くのポイントを獲得したチームが優勝し、1万ユーロ(約130万円)の賞金を獲得。2位のチームには5000ユーロ、3位には1000ユーロの賞金が贈られる。
このようにアウディ自動運転カップは、大学生の興味を自動運転テクノロジーへ惹きつけるのに大きな役割を果たしている。と同時に、アウディの人材確保でも一役買っている。同カップ参加者は未来の社員候補として、アウディの担当者と面接する機会を得られるのだ。
アウディの担当者が、学生にインターンシップや研修プログラムの内容を説明する。例えば、本人が希望する部門で勤務するために2年間のスペシャリストトレーニープログラムがあって、関連する分野の現場を見て回ることができる。これで将来役に立つ専門知識を習得できる、といった説明をする。
優秀な人材を早期に発見できるという意味で、アウディ自動運転カップは主催者であるアウディにもメリットがあるわけだ。
およそ新しい分野のテクノロジー開発には「out-of-the-box」な発想が必須だ。自動運転テクノロジーにも同じことが言えるはず。大学生の奇想天外な発想が、日々研究に没頭するスペシャリストには思いも寄らぬ展開に繋がることだって考えられる。
華やかな舞台で、主要自動車メーカーが自社の最新自動運転テクノロジーを披露する一方で、こうした「草の根イベント」も地道に続いているのである。
アウディ自動運転カップは、産学が一体となって目標に取り組む、好ましい実例だろう。
TEXT/相原俊樹(Toshiki AIHARA)
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Source: clicccar.comクリッカー