新たなスモーキー伝説の誕生。東京オートサロン2017のチューニングカー部門最優秀賞マシン!!
かつての箱スカが「羊の皮を被った狼」だとすれば、こいつは「R32の皮を被ったR35」!? まるで漫画の世界のようなマシンを構築したのは、ご存じスモーキー永田率いるトップシークレット。R32とR35のどちらにも精通しているからこそ成し遂げられたビッグプロジェクトであったが、そもそものきっかけはスモーキー永田の思いつきに近いものだった。
「やっぱりさ、R32GT‐Rが好きなんだよね。でもR35のイージードライブを味わってしまうと、重たいクラッチを踏む気にはなれなくてね(笑)。だったらR32もDCTにしちゃえば…と思って、すぐにベースとなるボディを探しはじめて、去年の4月くらいから作りはじめたんだ」と永田さんは振り返る。
VR32GT‐Rのアウトラインを説明しよう。まずエンジンはVR38DETT。I断面コンロッドで腰下を強化し、R800プラスタービンを装着してパワーは700ps。 アテーサ4WDシステムやデュアルクラッチ式ミッションなどのパワートレインもR35だが、実はここがもっとも苦労をした部分。その理由がエンジンミッション一体式のR32に対し、R35はエンジンとミッションが離れたトランスアクスル方式だからだ。
そこでVR32GT-Rでは、ミッションやデフを含むリヤメンバーを丸ごと移植。ホイールベースはプロペラシャフトで調整し、GR6ミッションの収まるスペースを確保するために、リヤシート右側のフロアを大胆にカットして対応しているのだ。
インテリアの仕上げも圧巻のひと言。インパネまわりは完璧にR35で、メーターまわりやパドルシフトはもちろん、ステアリングの各種スイッチやエアコン、ナビ・オーディオに至るまできっちり作動する。また、マニアックなポイントとしては、実はドアミラーや、トランク&フューエルリッドの開閉システムまでもがR35GT-R用と凝った作り込みになっていたりもする。
もちろん、チューニングカーとしてのポテンシャルも本物。車重がR35GT-Rよりも300kg軽い(1500kg)とはいえ、まだテスト段階だったのも関わらず、筑波サーキットでは1分切り(59秒914)を達成し、富士スピードウェイでも1分47秒という素晴らしいタイムを記録しているのだ。
「思いつきからはじまったプロジェクトだけど、本当に大変だった。なんだかんだ5000万円くらいかかったかも。なんどもくじけそうになったよ。でも、完成してこれだけ多くの人が喜んでくれたから満足!」。そう満面の笑みを浮かべて語る永田さんの顔は、どこか達成感に満ち溢れていた。
そして理解した。採算度外視でこれだけの超大作を作り上げるに至った原動力、それはひとえに「ファンの笑顔を大切にしつづけたい」という“スモーキー永田”の想いにあるのかもしれない。
スペック
エンジン:VR38DETT(730ps/100kgm)ProcessRコンピュータMY17仕様、R800plus試作タービン、JUN製I断面コンロッド、80φインダクションキット、1000ccインジェクター、ワンオフ可変エキゾーストシステム(チタン90Φ)+BNR32サイレンサー、TRUST スポーツキャタライザー
ドライブトレイン:R35トランスアクスル、GR6ミッション(アッパープログラム)、ファイナルサポート、カンサイサービスLSD
フットワーク:TOP SECRETスペシャルダンパー(Swiftスプリング)、R35純正ブレーキ
ホイール:OZレーシング Challenge HLT(F10.5J R11J)
タイヤ:ポテンザRE71R(FR275/35-18)
エクステリア:TOP SECRET G-FORCEフロントリップスポイラー、フロントディフューザー、リヤディフューザーPRO、フェンダーワイド加工
インテリア:R35純正インパネ、メーター、オーディオ、GReddy siriusメーター、カーボンステアリング、スイッチパネルLED打替え
まるで純正のような収まりをみせるVR38DETTユニット。試作のR800Plusタービンを装着した700ps仕様で、制御はMY17ベースのオリジナルECUセッティング。フロントメンバーとサスペンション、ステアリング機構などはR32用だ。エンジン換装の苦労話はつきないが、ボンネットの高さに納めることもそのひとつ。エンジン高対策として、ボンネットにはR35のバルジが自然な形で移植されている。ダクト周辺の盛り上がりがそれだ。
大人が乗れるスーパーチューンドとして、排気音を抑えつつ排気効率を高めることもポイントとなった。その解決策として選ばれたのはなんと、BNR32の純正マフラー!? 実はエキゾーストにはバルブによる切り替え経路があり、必要に応じてサイドのバイパス経路から排気を逃がすことが可能。まさに目からウロコ、逆転の発想。
BNR32のスタイルを損ねないためバンパーはあえて純正品を使うが、新作としてリップスポイラーもラインアップ。さらに、フロントセクションをフラット化するアンダーディフューザーを装備する。さり気ない機能パーツとして注目の逸品だ。どちらも機能を感じさせるカーボンの目がアクセントとしても効いている。
言われなければ気付かないほど違和感なくR35GT-Rのコクピットまわりが移植されたインテリア。室内の各部はアルカンターラで張り替えられ、高い質感を作り上げている。リヤシートはキャンセルされ、運転席後方にはクリーンウインドウを配置、トランスアクスルをディスプレイする空間として仕上げられる。もちろん、ステアリングもR35GT-R、パドルシフトの2ペダル操作だ。
トランスアクスル方式のR35パワートレインをリヤメンバーごと移植。トランスミッションの逃げを作るために、後席のフロアをカット。ホイールベースを合わせるために、プロペラシャフトをワンオフで製作した。
ホイール&タイヤは、OZのチャレンジHLTにポテンザRE-71Rの組みあわせ。R32用マルチリンクにR35用ブレーキシステムを組み合わせのため、(F10.5J R11J)に275/35-18のサイズ選択となっている。
取材協力:トップシークレット
(web option編集部)
あわせて読みたい
Source: clicccar.comクリッカー