トヨタ自動車の2018年3月期決算は、純利益が2兆4939億円で、過去最高を更新。10年のリコール問題や東日本大震災などの苦境を乗り越え、V字回復基調にあるように思える。だが、豊田章男社長は決算発表にて、今後についての厳しい見通しを繰り返し強調した。
私も見通しは決して明るくないと考える。今回の数字達成は、円安の追い風も非常に大きかったからだ。
トヨタの自動車販売台数はここ3~4年ほぼ横ばいで伸びていない。最も力を入れてきた米国では過去最高に近い台数を売り上げたが、米国金利が上がった影響で円安ドル高になり今後は販売台数が減る可能性が高い。新興国では苦戦が続いており、米国での減少分を他の市場で補うのは容易ではない。
「自動運転技術が遅れている」は的外れな指摘
近年トヨタは「もっといいクルマづくり」をスローガンに掲げてきた。これは販売台数を追い求めるより、多少値段が高くても品質の良いものをつくろう、という方針だった。だが今後の米国市場の落ち込みをカバーしながら、新車開発や自動運転、電気自動車などの研究開発費用を捻出するには、改めて販売台数に意識を向ける必要があると感じている。
具体的には製造原価の低減に注力し、これまでよりも低価格で販売しても利益が出る体制をつくる必要がある。インドやタイなど、トヨタ車の品質と市場のニーズのズレが特に大きかった地域ついては、子会社のダイハツや、業務提携したスズキとのパートナーシップが重要になる。
なお、自動運転技術についてトヨタは遅れていると指摘する声をよく聞くが、それは的外れだ。自動運転には様々な形式があるが、法規制が決まっていない現状では、1つの技術に絞って注力することはリスクが大きい。どれがスタンダードになった場合でも対応できるよう全方位で投資をするトヨタの姿勢は、トップランナーとして間違っていない。
http://president.jp/articles/-/25403
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Source: 新型車情報局