テイスティなデザインと最新性能を融合させたネオクラシックが、2018年はますます隆盛を誇りそうな予感。そこで今回はエンジン気筒数の異なる、4気筒=Z900RS、3気筒=XSR900、2気筒=XSR700による「432対決」を実施。読者のツボにハマリそうなのは、このうちのどれだ? ※ヤングマシン2018年2月号(2017年12月24日発売)より
【高速】Zは安定感の高さでクルージングが実に快適
ネイキッドなので防風性はさておき、どれも高速道路は移動中も楽しめ、基本的には合格点。そのなかで優劣を付けるとするなら最も得意としているのはZだ。何より、どっしりとしており安定感が高い。流して楽しい4000~7000rpmくらいにエンジン特性も合わせてあるから、別にトバさずとも楽しいし、とにかく疲れない。大柄なハンドルでドカっと座り、エンジンの存在感を楽しみながらクルージングする、そんな走りが気持ちいい。
XSR700も走りに合う回転域はZと同じ。こちらもトバさずダラダラッと移動していくのにポジションも含めて向いている。ただ、想定速度域が他の2台に比べて20㎞/hくらいは下にある感じで、同じペースで走ろうとすると、楽しい領域からズレてきてしまうので注意が必要だ。
XSR900はというと、面白い領域が他より1000rpmは高く設定されている印象。5000~8000rpmといったあたりか。「移動を楽しむ」というより、ここでも「スロットルを開けてスポーツを楽しもう」というメッセージが伝わってくる。あまり楽しんでいるとスピードが出すぎちゃっているので注意が必要だけどね。やっぱりサスは、硬いから道路継ぎ目でのショックなど乗り心地的には快適とは言えない。でも、カフェレーサーには、あえてそういう乗りにくさも楽しむ要素もあるから、割り切れればこれはこれでありだ。
そうして見ると、Zは乗り心地の面でもよく考えられている。倒立フォークなど見た目オーバークオリティにも思えるゴツい装備を持っているが、これが実に優しく調教されており、ショックの吸収性では一番。これには最新の車体構成の中にあって昔風な肉厚シートの良さも貢献している。タンデムツーリング用のマシンとして見た場合にもリードしているのはZだ。リヤシートも幅が広く肉厚十分で、座り心地はまるで座布団。疲れにくさはもちろん、高い位置にないので後ろに乗る人もサクっと跨りやすいのがいい。唯一、XSRと同じくグラブレールがないが、それこそZ1やZ2に付いていたようなものが純正オプションで用意されているので、それを使うといいだろう。 ※テスター:丸山浩
【峠】走りをどこに求めるか、それぞれに楽しさがある
ワインディングでの絶対性能では、XSR900、Z、700の順。XSR900は、いかにもこのステージにフォーカスを当てたといわんばかりで、何といってもコーナーを抜けた立ち上がりでエンジンをブン回してあげる、その爽快感が素晴らしい。高回転域で見せる3気筒のパンチ力をうまく楽しませてくれる。旋回力も相当に高いし、これまで困るくらい硬すぎた足まわりもすべてはハードな走りに対応するため。楽しんでいるとスピードが出すぎて困ってしまうくらいだ。XSR700は高速コーナーでこそサスが音を上げてバタバタしだすが、それでもコンパクトな車体から見せるのはヤマハらしい旋回力。排気量的に他の2台よりちょっとパワーで不利だが、パルスの効いた低中トルクでタイトコーナーを駆け抜けるのはすこぶる得意だ。
一方、Zは旋回力自体はそう高いものではない。サーキットレベルだと比較的早い段階でステップも擦ってしまう。しかし、それでつまらないかというと話はまったく別だ。乗り比べるとZが求めているのは「速く走ろう」という方向性ではなく、どんな走行ラインでも自在に楽しめるという「幅の広さ」だと気付いてもらえると思う。つまり、どんなところでもどんな走り方でも楽しさがそこにあるわけで、これは3台の中で一番だ。それを生み出しているのは驚くほどの安定感。先のステップが擦っている状態でも、しっかり安定していて怖さは少ない。エントリーからベテランまで多くのライダーに向けたハンドリングと言え、その点、ミスるとコーナリングで曲がりすぎてしまうくらい旋回力が高いXSR900は、走りに長けたベテラン向けという感じが強い。絶対的な速さは出ていないのだがZはエンジンだって気持ちいい。最新の水冷ユニットはレスポンスもよくビュンビュン反応するし、それでいて低中速に振ったおかげで、重いクランクが回っているほどよい直4テイストも楽しめる。これがパワーを求めて高回転化していくと、ほんとにそれだけの味気ないエンジンになってしまうところを、うまくまとめたという印象だ。それにZはサウンドも迫力があって、走っている雰囲気を楽しませてくれるね。
なお、タイヤサイズについては3台とも標準的なフロント120/70ZR17、リヤ180/55ZR17の組み合わせ。ベターっと寝て、それが延々と続いていく昔ながらのハンドリングが出せる18インチをZには求めていた人もいるかもしれないが、17インチでも頑張ってその傾向を出そうとはしていた。ここは17インチにして正解だ。何より17インチだとタイヤ銘柄の選択幅が違う。どうしても18インチが欲しい人は、東京モーターショーでも展示されていたようにカスタムしてしまえばいいのだ。 ※テスター:丸山浩
ニュース提供:ヤングマシン2018年2月号(2017年12月24日発売)
テスター:丸山浩
まとめ:宮田健一
撮影:真弓悟史
「【街乗り】Z900RS vs XSR900 vs XSR700公道比較インプレ」記事はこちらへ
Source: WEBヤングマシン