コンビニ業界のみならず小売業大手でもあるセブン-イレブンと自動車業界の巨人トヨタ自動車が、CO2の大幅削減を目指してタッグを組んだのは2017年8月。そして生まれたのが、燃料電池(FC)を動力源とする冷蔵・冷凍トラックです。
コンビニエンスストアは24時間フレッシュな商品を並べるべく、一日に何度も商品が配送されています。とくに冷蔵・冷凍トラックは、クルマを動かすだけでなく、商品を冷やすためにもエネルギーを使うため、多くのCO2を排出してしまう傾向にあります。そこで、トヨタと共同で生み出したのが、このFCを使う冷蔵・冷凍トラックなのです。
すでにセブン-イレブンでは電気自動車のトラック(三菱ふそう製)を採用するなど配送車両の電動化比率を高めているということですが、その未来を切り開く新たな一手となる可能性を大いに秘めている一台です。
燃料電池は水しか排出しないゼロエミッションでありながら、トラックの走行と冷蔵・冷凍機能を動かすのに十分なエネルギーを生み出せるのがメリット。もちろん、水素充填は、電気を充電するのに比べて短時間で済みますから、運用面でのメリットもあるわけです。
まずは、ほぼ手作りといえるFCトラック2台を用いてプロジェクトをスタート。ゆくゆくは店舗にも据え置き型の燃料電池を置くことで、水素を無駄なく利用してCO2排出量を削減しようという計画になっています。
なお、今回制作されたFCトラックの燃料電池や水素タンクといったパーツは、トヨタの量産FCVである「MIRAI」から流用しています。それでも十分に荷物を積んだ状態でのトラックを動かすだけのパフォーマンスを実現できるというのは電気モーターの特性ゆえでしょう。
また、配送を前提としているため最高速度は80km/h程度、航続可能距離は約200kmとなっています。水素貯蔵量は約7kg、MIRAIが積んでいる2本のタンクのうち大きい方を3本流用しています。ちなみにMIRAIの水素貯蔵量は約4.6kgです。
もっと最高速を上げたり、航続可能距離を伸ばしたりすることもできるでしょうが、今回のスペックは配送業務に最適化したものとなっています。そして、この共同プロジェクトによりFCをビジネスカーとして使ったときの課題を抽出することも期待されています。
さらに、配送業務にFCトラックが普及することで毎日多くの水素を使うことも予想されます。そうした消費が、水素インフラを整備する際の採算性を上げ、水素社会の実現を後押しする要素があることも見逃せません。
(山本晋也)
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Source: clicccar.comクリッカー