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日本勢、トヨタとSUBARUの戦いはどうだったか?【ニュルブルクリンク24h】

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目次

■2018年のニュルはどうだった?

46回目となる2018年のニュルブルクリンク24時間耐久レース。今年も北コース周辺にテントややぐらなど独自の観戦ポイントを作成し観戦する数多くのファンの姿が。今年は若干人が少なめに感じられたが、主催者からの発表は21万人と昨年とほぼ変わらず。

彼らは決勝が行われる13-14日の1週間前から集まりはじめ、ニュルで生活を行なう。コースサイドで熱心にレースの行く末を見守る人がいる一方で、コースが全く見えないキャップサイドで昼夜問わず「飲み食い」に専念し、「レースの状況、解っています?」と言うような人も大勢いる。恐らく、彼らはレースと言う場を借りた“お祭り感覚で集まっているのだろう。実は筆者も現地で知り合ったドイツ人に招待を受けたことがあるが、ビールとBBQのおもてなしと、いつまでも尽きないクルマ談義に、「このまま居たいな!!」と思いつつも、取材で来ているため泣く泣くプレスセンターに戻った記憶がある。

その一方、グランプリコースのストレート脇に立つドリントホテルのバルコニーでワイン片手に優雅に観戦する人やパドック裏でチームの動向に聞き耳を立てて観戦する人など、など、観戦のスタイルも多種多様。ちなみに今年からパドックに移動式の巨大観覧車も設置され、同業者の何人かが乗ったそうだが、筆者はタイミングが悪く乗れず(泣)。

■ニュルの強豪、欧州勢は相変わらず強かった

肝心なレースはどうだったのか? 深夜2時ごろから降り始めた雨や霧の影響もあり、クラッシュやコースアウト、接触も多かった。夜明けと共に雨は小康状態となったものの、振ったり止んだりの連続に加えて、深い霧の影響でレースは12時前に赤旗中断。

2時間後の14時にレースは再開されたが、実はこの時トップ(メルセデスAMGチームブラックファルコン:メルセデスAMG GT3)と2位(No.912 マンタイレーシング:ポルシェ911GT3 R)は同一周回。ここからスプリントレースのような攻防となり、No.912が逆転。そのままトップを守り総合優勝を果たした。マンタイレーシングにとっては6回目のニュル24時間総合優勝で最多記録を更新。

一般的には耐久レースはゴールするためには「マージンを残して」、「無理をしない」、「序盤で何かあっても逆転のチャンスがある」と言われることが多いが、現在の耐久レースはスタートからゴールまで全開でミスなく走らなければ勝てない。最近のル・マン24時間もそうだが、この流れはツーリングカーがベースとなるニュル24時間にも来ている。もはや、耐久レースではなく24時間のスプリントレースと言ってもいいのかも!?

ニュル24時間はマシンの性能に合わせて細かいクラス分けが行なわれているが、総合優勝を争うのはFIA GT3マシンで争われる「SP9」だ。GT3マシンはレーシングカーだが自動車メーカーが開発を担当しており、基本的には誰でも購入できる「量産車」である。つまり完成度や品質は市販車と同レベルであり、「誰でも、どこも、いつでも」連続して安定して速く走ることができるクルマ作りが行なわれていることを意味する。そう、TOYOTA GAZOO RacingやSTIがニュル24時間を通じて熱心に行なう取り組みを、彼らは遥か昔から実践しているのだ。

■TOYOTA GAZOO RACING、12回のチャレンジは「道」と戦う

では、日本勢の戦いはどうだったのか? 今年で12回目の挑戦となるTOYOTA GAZOO Racingは2015年から3年に渡り参戦してきたレクサスRCでの参戦に区切りをつけレクサスLCでの挑戦だ。彼らの挑戦は、ニュル24時間と言う極限状態の実戦テストを通じて、「人を鍛える」と同時に「クルマを鍛える」ことである。つまり、ライバルと戦うだけでなく 「道」自身と戦っているわけだ。

このLC、将来の市販車への採用を目指す先行開発技術が多数盛り込まれている。V8-5.0Lエンジンは内部にTNGAの要素技術、サスペンションも形式こそ同じだが実車を見てみるとアームやジオメトリーは異なる。更に車両重量は2トン近い量産車に対して1380kgまで軽量化。これはレースに不必要な部品の取り外しや材料置換だけでなく構造的な工夫もあるのだろう。更に安全運転支援のトライも行なわれており、電子ルームミラーやAピラー周りの死界をなくすためのアイデアなども盛り込まれている。先行開発は量産開発と比べるとリアルワールドでの実証がしにくいが、実戦投入することで開発スピードも上がる効果もあるそうだ。

新モデルでの挑戦のため車両開発/製作は早めにスタートされ、テストは国内/ニュルを含めて8000kmを行なったと言う。

予選トラブルフリーでGT3マシンに迫る速さを発揮、2014年のレクサスLFA以来となるトップ30予選獲得も期待されたが、惜しくも32位。しかし、決勝は一転してトラブルが多発。序盤のブレーキトラブルからミッショントラブル、そしてエンジントラブルでコースストップと、ニュルは新参者に数多くの試練を与えた。誰もが「テストで何も起きないのに、なぜニュルで?」と感じたそうだが、これが現実である。実はレース前に関谷チーフメカニックから「不安なのがウエット、国内でもニュルでもほとんどテストできていない」と聞いていたが、実は今回のエンジントラブルは雨が原因であった。気になる部分はニュルでは明らかになってしまうのである。

97LAP走って総合97位、結果だけみると惨敗である。しかし、彼らはここがゴールではなくここでの経験が、もっといいクルマにするためのノウハウやヒントになる。そう考えると、ここ数年のニュル24時間の挑戦はスムーズなレースマネージメント&好成績だったが、2018年は改めてニュルの厳しさを学べた年になったと言えるだろう。

■11回目の挑戦、SUBARU STI NBRチャレンジはトラブルが頻発

一方、今年で11回目の挑戦となるSTI NBRチャレンジ。過去に2011/2012年、2015/2016年に2度のSP3Tクラス2連覇を達成しているが、昨年は熱問題によるトラブルや他車とのクラッシュ、そして最後は炎上でリタイヤしているが、今年は王座奪還がミッションとなっている。マシンは2014年からVAB型WRX STIで戦っているが、2018年モデルは、昨年課題となった熱対策や空力改善を中心にアップデート。エンジンは熟成のEJ20ターボに更なる改良が施され、シャシーやサスペンションなど見えない部分には、「次世代SGP」の要素技術も盛り込まれている。

そんな万全の態勢で挑んだニュル24時間だが、夜間に行なわれる予選1回目に9分7秒581を記録しダントツでクラストップを記録しているが、9分切りを目指して開発されたマシンであることを考えると……。

昼間に行なわれる2回目の予選に賭けたが、パワステのオイル漏れが発生し、タイムを出せないまま終了となった。

決勝では予選で起きたパワステトラブルの再発、決勝時もコース各所で計測されている音量規制対策による緊急ピットインなど、細かいトラブルが襲い、順位を大きく下げる。それ以降は順調で深夜から雨が降り始めるが、参戦車両唯一のAWDのメリットを活かしGT3を上回るタイムを記録しながらの走行でクラストップに戻った。

赤旗中断時からレースが再開、残り1時間を切った所でエンジントラブルが原因でストップ。ストップした場所がグランプリコースカット入口だったことが幸いし、オフィシャルによってピットロードまで運ばれた。懸命のトラブルシューティングにより、チェッカー20分前にコース復帰。トラブルまでに2位以下を大きく引き離していたため、順位に変動はなく、クラストップのままゴール。

いくつものトラブルを克服し、目標だったSP3T王座奪還を成し遂げたことでチームもファンも喜びひとしおだと思うが、これまでSTI NBRチャレンジのずっと見てきた筆者は「これでいいのか?」と思う部分があるのも事実である。ちなみに最後に起きたエンジントラブルの原因は、赤旗中断時に雨が電気系統に侵入したことが原因のようだが、量産車はそんなトラブルは起きない。STIが量産車での挑戦にこだわるのは「量産技術の証明」だが、今回は何かが足りなかった。

総合順位は62位、実はこの順位は2016年のリタイヤを除くと、2008年の初参戦以来最も下位だ。筆者は24時間トラブルフリーで完全勝利、総合順位もGT3の間に割って入った18位だった2015年を知っている。それを考えると、STIには「勝ち方」にもこだわってほしいと思っている。

辰己英治監督はレース後、筆者に「トラブルが起きた時は、『まさか?』と思いましたが、よくよく考えていれば防げたこともあった……と反省ばかりです。致命的な機能の故障ではないですが、どんな小さな問題でもニュルでは大問題になってしまう。今回はそこがシッカリとできていなかったと言う反省点が残りました」と言うコメントを残している。

また今回、SUBARUからエンジン/シャシーのエンジニア2名も訪れており、極限の開発現場の重要性を感じたようだ。

結果だけ見ると明暗を分けた二つのチームジャパンだが、どちらもエンジニアリングの部分ではニュルに負けた……。どちらも納得できるレースではなかったはずなので、来年はもっと強くなって戻ってきてほしい。

(山本シンヤ)

Source: clicccar.comクリッカー

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