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【週刊クルマのミライ】自動車マニアがドイツ車を誉めるのは「ドイツ基準」で判断しているから?

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自動車を評価するときにベンチマーク(比較のための指標)とされるのはドイツ車であることが多いと感じることはないでしょうか。

とくにフォルクスワーゲン・ゴルフやメルセデス・ベンツSクラスといったモデルは、それぞれのカテゴリー(セグメント)において絶対的なベンチマークとして、インプレッションの基準となっているといえるほどです。また、最近ではフォルクスワーゲンの新型ポロについて「Bセグメントのベンチマーク」といった表現を使うケースを見かけることも少なくありません。

たしかに、グローバルに見ればベンチマークなのかもしれません。ですが、グローバル基準が日本のマーケット特性に合致しているかといえば、そうとは限りません。たとえば、フォルクスワーゲンが広く展開しているトランスミッション「DSG」は、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)として時間をかけて進化させてきたものですが、それでも発進時のギクシャク感や低速走行でのマナーには難があると指摘されることもあります。

それでも「DCTは理想のトランスミッションだ」と言われてきたのは、それがCセグメントのベンチマークと言われるフォルクスワーゲン・ゴルフが採用している機構だという面も無視できないと思いませんか? たしかに流れのいい郊外路や高速巡行においてはDCTの欠点はほぼ見当たらないかもしれません。逆に、渋滞や坂道発進に見舞われる日本の都心部ではグローバルなベンチマークがマッチしているとは言えないかもしれないのです。

また、トランスミッションでいえば変速比幅の広さについてもグローバル基準というのは難しいものがあります。一例として、輸入車が採用している9速ATの中には、その設定速度が異なるため日本では9速まで入らない(制限速度の範囲では8速まででカバーしてしまう)というケースも見られます。もちろん、一部の高速道路で制限速度が上がっていますので将来的には有効になるのかもしれませんが、現状では宝の持ち腐れという印象です。

高速性能というのは、その地域によってニーズも変わってきます。250km/hまでカバーする性能が優れていることは否定しないまでも、それによって100km/hで乗り心地に硬さを感じるようでは本末転倒でしょう。そもそも、速度無制限の高速道路が存在するのは、世界でもごく一部(ほぼドイツのみ)であって、それこそかの国におけるガラパゴス化の一例かもしれません。

そうしたネガを「オーバークオリティは素晴らしいことなので、仕方がない(受け入れるべき)」というのは、ベンチマークとは言えないと思いませんか? 極論すると「サーキットで速いクルマなのだから市街地での扱いづらさは我慢すべし」といった言い方にも見えてきます。結局、ベンチマークと言われているドイツ車が目指している領域での評価を基準として評価していると感じるのです。

自動車には様々なニーズがあります。限られたサイズでの多人数乗車を最優先に求めるユーザーもいれば、乗員は多少我慢してでもハンドリングなどのスポーティさを優先するユーザーもいるわけです。その中で、ベンチマークと言われるクルマはポジショニングマップにおいて基準といえる性能であるのが本来の意味ですが、それがグローバル市場を前提としている限り、それぞれの市場においてはど真ん中の王道とはいえないケースも出てきます。

さきほど『サーキットで速いクルマ』という表現を使いましたが、同じモータースポーツで使われるマシンにしてもサーキット向けのレーシングカーとダートも走るラリーカーでは仕上げも速さのポイントも異なります。それによって、どちらのマシンが速いかを比べるのはナンセンスでしょう。話のネタとして、それらをサーキットで比較するのはおもしろいですが。

つまり、ターゲットとするステージによって仕上がりが変わってくるのは当たり前の話です。まして市場が異なれば、最適解が異なってくるのも当然です。一般路での乗り心地についても、舗装路のコンディションや、そもそも舗装路の普及の度合いによって、求められる性能は変わってくるわけです。耐久性への影響も無視できません。また、燃費性能や環境性能へのプライオリティが高いエリアというのもあります。走りが気持ちよければいいという価値観は絶対ではないのです。

いくら環境に良くてもドライバーがストレスを感じるようなクルマはノーサンキューという見方もあれば、人間が我慢してでも環境性能を高めるべき、という議論もありますが、そこに結論は出ません。あくまでも価値観の違いです。

なにかベンチマークを設定するのはわかりやすくなりますが、ベンチマークとしたモデルが目指している価値観が絶対と捉えてしまう必要はありません。指標であることが重要なのではなく、どれだけ自分の用途に対してアジャストできているか、ニーズを満たしているかを吟味すること、それが愛車選びでは欠かせない視点といえるのではないでしょうか。

(山本晋也)









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Source: clicccar.comクリッカー

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