最近の安全装備は、衝突被害軽減ブレーキに代表される予防安全(アクティブセーフティ)に注目が集まっています。事故を未然に防いだり、被害を軽減したりする予防安全性能の重要性は言うまでもありませんが、すべての事故を予防する万全な装備ではありません。
万一の事故(衝突)時に乗員はもちろん、場合によっては歩行者の被害も軽減するパッシブセーフティ(衝突安全)も非常に重要。乗員の生死や怪我の程度を左右する領域といえます。予防と衝突安全の両輪を進化させていくことで、クルマの安全性が高まるといえるでしょう。
2018年1月中旬、マツダの衝突性能開発について取材する機会がありましたので、ご報告したいと思います。
デミオなどの小さなクルマでもCX-8のような大きなモデルでも安全性能に差をつけないのがマツダ流。そのうち、衝突性能開発の現場とはどんな組織なのでしょうか。
マツダの車両開発本部の1部門である衝突性能開発部は、「部付(実験設備)」、「衝突性能先行技術開発グループ(先行技術開発、CAE解析)」、「前面衝突安全開発グループ」、「側面・後面衝突安全開発グループ」、「ユニット安全開発グループ(むち打ち、歩行者保護、車体強度など)」に分かれています。さらに、子会社のマツダE&Tにも車両開発本部と衝突性能開発部があり、衝突実験の実施に加えて、一部の開発を委託しているそうです。
取材陣が訪れたのは三次自動車試験場にある衝突実験棟で、1号棟、2号棟があり、2018年春の竣工予定である新衝突実験3号棟も外観は仕上がっているようでした。3号棟は屋内型の「車対車」の衝突試験設備になります。
マツダの衝突安全性能の開発は、先行開発(一括企画)、個別車種開発に大別されています。
一括企画とは、同社独自のモノ作り活動。従来は車種ごとに開発され、開発と生産の現場がすり合わせしていたものを、開発や生産や購買だけでなく、サプライヤーも一体となって将来を見通した商品、技術について議論を重ねることで、5~10年単位で将来を予測し、全車種について一括で企画するというもの。
余談ですが、一括企画で「ありたい姿」を見据えることで多くの利点があるものの、万一、最終的な段階で問題が出てくると後戻りできない(しにくい)そう。
衝突性能開発では、目標設定として各国や各地域のN-CAPなどを踏まえた目標設定やマツダ独自の目標が掲げられ、「シナリオ構築」と呼ぶ段階で、エネルギー吸収(EA)の配分決定、ボディ構造のロードパス構造の決定、骨格部材の決定などがされます。その後「個別車種開発」で、「構造化(形状、接合、材料の観点から構造を決定)」、「検証(ユニットや実車)」と進んでいきます。
次回は、同社の衝突性能開発の具体的なプロセスについてご紹介します。
(文/塚田勝弘 写真・図/マツダ)
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Source: clicccar.comクリッカー