目次
ターボパワー炸裂! パワー系チューニングの台頭
SKYLINE RS TURBO【DR30】 × SOARER【MZ20】
70年代はL型エンジンを始めとして同じくの日産のA型、トヨタの18R-Gや2TG型など、NAメカチューン全盛期の時代だった。
メカチューンはレスポンスこそ鋭かったが、パワー的にはNAということもあって、トップチューナーが丹精込めてチューニングをしても小排気量車ならば150ps前後、L型の3.1L仕様でも300psに達するかどうか。つまりはリッターあたり100ps付近がチューニングにおけるハイエンドパワーであった。
そして80年代に入ると、ターボエンジンを搭載したクルマが続々と発売されることとなる。2LターボのFJ20を積むDR30スカイライン、後期型となる“鉄仮面”はノーマルで205ps。3Lターボの7Mを搭載するMZ20ソアラでは240psと、軒並み200psオーバーとなるベースマシンの登場だ。
NAエンジンとは比較にならないほど容易に、そして大幅なパワーアップできるということで、チューニング業界にも“ターボチューン旋風”が巻き起こる。
メカチューンでは当時「1psパワーアップするのに1万円」と例えられていた指標も、ターボエンジンとなると「1ps5000円」や「1ps3000円」などといったイメージで、パワーアップに対しての費用対効果もすこぶる高かった。当然パーツメーカーやショップだけでなく、ユーザーまでもがその魅力に引き込まれていった。
ターボチューン黎明期には様々なスクラップ&ビルドが繰り返され、その信頼性を徐々に高めていくこととなる。そうして得た300~500psという途方もないエンジンパワーは、ユーザーカーであっても最高速280km/hオーバー、ゼロヨン11秒台などといった、一世代前のレーシングカーを凌駕するほどのポテンシャルを身に付けた。
当時の血気盛んな若者は、愛車をこぞってチューニングし、街に繰り出せばシグナルグランプリ。高速に行けば超高速バトルといったシチュエーションで毎週のように大パワーに酔いしれた。
現在と比べれば、当時のターボチューンは可変バルタイもなく、高性能な電子デバイスが少なかったことや、点火系&エンジン制御系も万全ではなかったことから、ハイパワー化を目指すと「ドッカンターボ」となってしまう傾向にあったが、当時はそれで楽しかった。
あれから30年。現代の技術&パーツを盛り込んだ80’sマシン2台の勇姿をとくとご覧いただきたい。
チューニング時代を築いた名車たち -1980年代-
MODEL YEAR 1981〜1990
SKYLINE RS TURBO【DR30】
Tuned by エスコート
最新モノのパーツを使いこなして上質な走りを手に入れる
当時からゼロヨンや最高速仕様のベース車として人気があったDR30スカイライン、通称“鉄仮面”。そんな素材をエスコートは「乗りやすくて速い」というマシンコンセプトでチューニング。
まず点火系だが、ダイレクトイグニッション化することで、ギクシャクしてしまうA/Fが落ち着き、4速や5速で街中をゆっくり走っていてもスムーズな挙動になるという。あわせてF-CON Vプロ制御や550ccの12ホールメインインジェクターなどをチョイスすることで、全域でのレスポンスアップだけでなくアイドリング時の不安定さも解消した。
ミッションには1、2速がダブルコーンシンクロとなるR32用を流用し、街乗りでのイージーさも向上。心臓部のFJ20エンジンはGT-SSタービンを使った350ps仕様だが、ピークパワーは狙わずあえてノーマルカムで回すことで、全域トルクフルに仕上げたという大人の仕様に仕上がっている。
搭載エンジンが4気筒ということでGT-Rという称号は与えられなかったがDR30だが、レースシーンではグループ5で大活躍。西部警察、大門軍団のエースカーに採用されたこともあって、その人気は国民的なものだった。
HKSのGT-SSタービンを使い、ブースト圧1.2キロ時に350psを発生するFJ20エンジン。80年代当時にはTO4Eタービンを使った400ps仕様というクルマも多く見たが、このクルマはパワーではなく、乗りやすさを重視した大人の仕様として製作されている。
このエンジンのポイントとも言える点火系の強化。ダイレクトイグニッション化することで、点火時のスパークを強力なものにしている。混合気へ確実な火炎核を提供することで、失火によるギクシャク感を完全に排除。スムーズな走りへとグレードアップさせている。コイルをマウントするのはエスコートオリジナルの「ダイレクトコイルプレート」だ。
無論、30年前の電子制御とは比べ物にならないほどのスペックとなったコンピューター。HKSのF-CON Vプロ制御によって、きめ細やかなセッティングが取られる。パワー&レスポンスはもちろん、シームレスでシルキーな加速感を得られるようになった。
当時の雰囲気を偲ばせるスクエアデザインのインパネ周り。追加メーターやEVCもシンプルに装着。これらアイテムをゴチャゴチャさせないで綺麗にレイアウトするのが、現在のインテリアの主流となっている。
乗車定員の快適性を保持しつつ、ボディ剛性を高める補強バーを装着。パワーアップだけでなく、剛性や制動系の強化なども含めた、トータルバランスを高めることで現行車と比べても遜色のない使い勝手となる。
MODEL YEAR 1986〜1991
SOARER【MZ20】
Tuned by マテリアルオートファクトリー
チューン次第で300km/h超えも可能な高級グランドツーリング!
ソアラと言えば、当時は国産高級スポーツカーの代名詞で、洗練されたボディデザインとラグジュアリーなインテリアで誰もが憧れたクルマだ。
この取材車両は当時にタイムスリップしたかのようなコンディションで、内装のバックスキンなども完璧な状態で維持されていた。
綺麗なだけではなく、フルチューンの7Mエンジンが搭載されているのもトピック。以前はT78タービンを使い700psもの大パワーを出せる仕様だったが、7Mエンジンを長く使っていくことを考えると600ps超えではエンジン本体へのリスクが大きい。
そこでタービンをTD05ツインに変更し、ピークパワーを600psに設定。ふだんはブースト圧1.3キロで500psまで抑えて使うことによって、エンジンへの負担を低減している。それでもピークパワーを落とした分は、しっかりとレスポンス側に振ることで、加速バトルでは不足の無い戦闘力を確保している。
ドアやフェンダーなどの建付けを見ても、チリひとつ狂っていないシャンとした出で立ちが美しいミントコンディションのMZ20ソアラ。見た目には低く構えた車高とBBS LMの19インチホイール、メイン100φのオリジナルマフラーに変更されている程度だが、中身はモンスターだ。
ツインターボから押し込まれる圧縮空気は、ワンオフのサージタンクを介して6連スロットルへと導かれる。各種パイピング類も強固にフィッティングされ、常用500psでもトラブルフリーの使い勝手を実現している。
以前はT78のシングルターボで仕様あったが、600~700psまで及ぶ出力は7Mエンジンにとってリスクの高まる領域。そこでTD05ツインに変更し、500~600psというパワーレンジにリメイクした。パワーと引き換えに得られた鋭いレスポンスがあるためストレスは感じられない。
バー式タコメーターとデジタルスピードメーターが当時のトヨタ車の象徴。バックスキンで覆われたインパネ周りや毛足の長いカーペット類による吸音もあって、走行中の室内音も静寂なものだ。
足元を飾るゴールドのBBS LMはF8J-19、R9J-19。いつでも全開で走れるようにタイヤは前後ネオバ(F225/30-19、R255/30-19)をチョイス。
MZ20ソアラをよく知っている人でも、ジックリ見ないとわからない5mmだけ叩き出したフェンダー。なぜ5mmかと言うと、純正のフェンダーモール装着へのこだわりを貫くため。このような細かな積み重ねが、目利きの走り屋をも唸らせるオーラとなるのだ。
関連記事
あわせて読みたい
Source: clicccar.comクリッカー