イギリスの自動車メーカーはかつてほど多くはありませんが、ロールス・ロイスを筆頭にジャガーやアストン・マーティンそしてベントレーなど、いずれも存在感あふれるブランドが名を連ねています。
ランドローバーもそのひとつ。悪路を突き進むオフローダーの分野で一目置かれているブランドです。
その設立は1978年。一見、短期間でSUVの第一人者の地位へと上り詰めたと思えるかもしれませんが、その原点は1947年にウェールズの砂浜で描いたスケッチだと言われています。
スケッチで描かれた「タフで勇敢、どんな地形でも乗り越え、世界中の人々の心を捉えながら、歴史を変え続ける車」。それが実際にカタチとなったのは、第二次世界大戦が終わった1948年。大戦中にアメリカのジープにならってローバー車が制作した四輪駆動車「ランドローバー・シリーズ1」です。
特殊空挺部隊のSASが砂漠に溶け込めるように全身をピンクで塗装したという話は同車の評判を高めたエピソードの一つですが、1955年に6人の大学生が成し遂げた大遠征もランドローバーの悪路走破性を世に知らしめる逸話として重要な一つです。
ある日の夜、ケンブリッジ大学に通うエイドリアンはコーヒーを片手に友人に「シンガポールまでドライブ遠征してみないか?」と提案したと言います。世界地図を広げて、バーミンガムからシンガポールまで地球半周にも及ぶ道のりについて、夜中まで延々と話す……。
普通ならある程度盛り上がったところで金銭的な問題などを理由に諦めてしまいますが、カメラマンやユニバーシティ・モーター・クラブの事務員、ナビゲーターのほか、オックスフォード大学からも有志が集い、2台の「ランドローバー・シリーズ1」による遠征はいよいよ現実的に。
するとメディアも注目し、スポンサーも集まり、ローバー社自身もシンガポールへの陸路走破は良い宣伝に繋がると判断。ちなみに、ドキュメンタリーとしてBBCで放送され、インドから当時のビルマをつないでいたレド公路が封鎖されて分断してしまう前に自動車で通行した最後の記録を打ち立てるなど歴史的にも大きな意味を持っています。
(今 総一郎)
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Source: clicccar.comクリッカー