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意のままに操る楽しさを追求したニスモコンプリートの原点
400という数字にこめられた想い
ニスモ400Rが発売されたのは1996年。BCNR33型GT-Rの発売が1995年からなので、発売から約1年後に登場したコンプリートカーだ。
当時のBCNR33チューニング事情を思い起こすと、BNR33チューニングと同じ手法でRB26DETTエンジンはハイパワー化ができ、ボディやサスペンションもほぼ同じ手法でチューニングが可能であった。この400Rが登場した当時、チューニングシーンにおいては600psを超えるようなGT-Rもそれほど珍しい存在ではなかった。
では、なぜそんな時代にニスモがあえて400psのコンプリートカーを出したのか? その答えは400Rの開発コンセプトでもある“意のままに操る楽しさ”を追求し、それの実現に排気量アップが必要であったからに他ならない。
回転数を高めるのでなく、低回転域からのトルクを増やすことで、街乗りでも標準車とは別格に乗りやすく、さらにワインディングやサーキットに行けばちょっと手を入れた程度のBCNR33では、比較にならないほどのパフォーマンスを発揮する。
そこに耐久性という尺度を加えると、ちょうどいいところが400ps、47.8kgmという400Rのパワーとトルクにたどり着くというわけだ。その際に選ばれた動力性能のアップ方法が機関系にかかる負担の少ない、排気量アップやN1タービンの選択ということだったのだ。
ただし、この内容は当時のチューニング事情からすると異例とも言えるメニューでもあった。というのも当時、RB26DETTの排気量アップと言えば、回転数も高め600ps~800psオーバーといったハイパワーを狙うクルマに対して行うメニューとして定着していたから。
当時、ブーストアップ仕様でも実現できる400psという出力のために排気量アップを行うという概念はなく、意外性をもってユーザーに受け入れられた。
しかし「ブーストアップによって絞り出す400ps」と「排気量の拡大によって余裕を持って生み出される400ps」は大きく異なる。
ニスモが目指した「低回転トルクの向上による街乗りやワインディングでの扱いやすさ」によって「意のままに操る楽しさ」が達成されたと解釈すると非常に判りやすいだろう。
またコンプリートカーとしてエンジンだけでなく、サスペンションやボディまわりにも手が入っている。ショックアブソーバーはビルシュタイン製に変わり、スプリングはフロント7kg/mm、リヤ8kg/mmと少しハード目のレート。街乗りとワインディングを両立するギリギリのところを攻めた感じだ。
ボディに至っては全幅が50mm広くなるオーバーフェンダーを装着しており、エアロパーツも派手さは控えながらもノーマルとはデザインを一新。その他にも鍛造3ピースアルミホイールやチタンタワーバー、強化ブッシュ、メーターパネル、シート、マット、キーなど、ここには書き切れないほどの400R専用パーツが取り付けられ、その部分ではニスモファンの心をくすぐる1台に仕上がっていたと言えるだろう。
PHOTO:Nobutoshi Kaneko
スペック
■エンジン:RB26DETT改2771cc仕様(400ps/47.8kgm) ボアアップ対応強化シリンダーブロック、燃焼室形状最適化シリンダーヘッド、87φメタルヘッドガスケット、鍛造クーリングチャンネル仕様ピストン、専用鍛造コンロッド、専用鍛造クランクシャフト、N1仕様メタルタービン+強化アクチュエーター、ハイフローエアクリーナー、ステンレスフロントチューブ、低抵抗スポーツ触媒、N1ラジエター、空冷式オイルクーラー、スポーツインタークーラー、専用ECCSユニット、チタンデュアルエキゾーストマフラー、強化エンジンマウント、チタンタワーバー
■ドライブトレイン:ツインプレートクラッチ、カーボンプロペラシャフト
■フットワーク:ビルシュタインショックアブソーバー(ENP製)固定式、スプリング(F7kg/mm R8kg/mm)、強化ブッシュ
■ホイール:鍛造3ピースアルミホイール ニスモLM-GT1(10J×18)
■タイヤ:ブリヂストンPOTENZA RE710Kai(275/35R18)
■エクステリア:フードトップモール&専用エンブレム、バンパーエアインテーク、空冷式オイルクーラー用エアダクト、インタークーラーエアガイド、フロントバンパー、オーバーフェンダー、サイドステップ、リヤバンパー&専用エンブレム、可変式カーボン製ダブルウイングタイプリヤスポイラー&専用オーナメント、LMボンネット
■インテリア:400R専用コンビネーションメーター、3連サブメーター、チタンシフトノブ、400R専用ホーンボタン付きステアリング、タイプRリクライニングバケットシート、リヤシート、専用内張
※仕様は販売当時のもの
400R専用に開発されたコンプリートエンジン「RB-X GT2」。オリジナルは日産工機(REINIK)製のロングストローク鍛造クランクシャフトや鍛造クーリングチャンネル仕様ピストン、鍛造コンロッドを使い、ボア87φ×77.7mmのストロークによって2771ccの排気量になっている。この個体は一度エンジンブローさせてしまったため、現在はマインズで組み直した2.8L仕様になっている。
400RオリジナルのターボはN1仕様のメタルタービン+強化アクチュエーター。こちらもエンジンブローを機にHKSのボールベアリングタービンへと交換され、現代版のリフレッシュを受けている。
大容量インタークーラーや空冷式のオイルクーラーも400Rならではのクーリング装備。バンパーはもちろん、グリルのセンターにあるエンブレムも400R専用品だ。
マフラーは排気効率を最大限まで高めつつ、最低地上高を確保するためにデュアルタイプの構造。チタン製でテールエンドには400Rのロゴも入れられた専用品。
メーターパネル、ステアリング、チタンシフトノブ、キー、3連メーター、リクライニングバケットシートフロアマットなど、室内のいたるところに専用パーツが用意され400RやNISMOのロゴが入れられる。
フル鍛造3ピース構造のアルミホイールLM-GT1。サイズは10J×18で、グループAやル・マンでの実績を持つ高強度な素材と形状、ブレーキ冷却性能を兼ね備えた高性能ホイールだ。
カーボン製のボンネットやダブルウイング、オーバーフェンダー、前後バンパーなどエクテリアは、当時のGT500マシンを彷彿とさせる400R専用品でかためられる。
(web option編集部)
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Source: clicccar.comクリッカー